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軍事はもう凍結。ハンターネタで構想を交えるかも知れないけど。今は拷問作品を作ってる。 ロシア人、ウクライナ人への偏見有り。殆どが虐殺。ドスは漢字を使える設定、でもバカ。 ウクライナ人のモチーフはSTALKERというゲームから。 ブロロロロロロ…キキィ…! 「ここまでだったな!じゃあな旅人よ!」 「助かった。礼を言うよ。」 ブロロロロロロ… 背中にはドラグノフ、方にはAK-74を引っさげ、俺はヒッチハイクをして村までやってきた。 俺は旅をしている。目的は特にない。あるとすればゆっくりを狩ることぐらいだ。 ゆっくりというのは得てして愚かである。越冬の為の食料を食い漁り、越冬に失敗し死ぬか共食いを始める。 人間をゆっくりしていないという訳の分からない理由で見下し、甘味を要求する。 馬鹿揃いのゆっくりでも、ドスまりさという巨体のゆっくりがいる。 このゆっくりは大抵は長年の経験を生きて、死線を越えてきたであろうゆっくりだ。 ドススパークと言われる光線を放ち、その光線は木造家屋を灰にするほどの火力である。 だが、ドススパークは十秒前後のチャージ時間を必要とし、真っ直ぐにしか飛ばないという残念な点がある。 それだけならまだしも、ドス自身の口の大きさによって口径は左右され、更にはドススパーク発射に必要なキノコを噛み砕くことが必要なのだ。 まったく使えない武器であるが、ゆっくり達にとっては脅威となり大きさも相まって安心材料となる。 また、ゆっくりオーラという相手をゆっくりさせるというオーラも使える。 これによってゆっくり達からはゆっくりできると、殆どの場合群れの長として君臨する。 しかし、馬鹿なゆっくりの状態でドスになるゆっくりも多々いる。条約を結べと迫り、結ばなければ村や町を襲うと脅迫するのだ。 その協定の中身は甘味や食料をよこせ。ゆっくりを殺すな。野菜を独り占めするな。というか野菜は全部ゆっくり達の物だ。 という訳の分からない内容を人間達に突き付けてくる。 俺はこういったゆっくりを狩り、困っている人間から金を幾らか貰うという事で旅の資金等を調達している。 金を貰ったら、またどこかへ旅を続ける。俺はそんな生活をずっとおくっている。 ヒッチハイクでボロっちいトラックに乗せて貰った。ドライバーは人の良い運転手で、俺が降りるまでずっと喋りっぱなしだった。 俺は思いを馳せながら、村へと続く道を歩いた。 『湯栗村へようこそ!』 錆びだらけの看板に哀愁を覚えつつ、俺は村へと足を踏み入れる。 そこは木造家屋が建ち並ぶ住宅街だった。俺は通りすがった若い女性…お姉さんに声を掛ける。 「あの、すいません。」 「はい?あれ?あのぉ…ここの人じゃないですよね?どこから来たんですか?」 「ウクライナです。プリピャチの辺り。」 「へぇ~、そんなとこから来たんですか!…っとすいません、何か用があって声を掛けたんですよね。」 「はい、バーか飲み屋を探しています。」 「あ、でしたら向かいのあそこにバーがありますよ。」 「ありがとうございます。」 「あ、あの…ここへは何か用があって来たんですか?」 「用…いえ、特に用事は無いです。用事ができることはあるかもしれませんが。」 「?」 「何か頼まれごとをするかも知れないということです。」 俺は肩に下がったAK-74をお姉さんに見せると、お姉さんには銃は見えてなかったのだろうか…とても驚いた顔をされた。 「え!?あ、あのそれって…用事って…えええ!?」 「これは人に使いません。猪とかゆっくりとかに使うんです。」 「あ、ああ!な、なんだそうだったんですか!失礼しました!」 「いえ、ではここら辺で失礼させて頂きます。」 「あ、あの…」 俺は何かを問おうとするお姉さんに背中を向けて、バーへと歩いて行った。 カランコロン 木製の扉を開くと上部の鈴が音を立てた。店内を見回すと客はそれなりにいた。訳ありげな女性達、眉間に皺を寄せた男性達。 いずれも皆沈んだ面持ちで酒やつまみを煽っていた。俺が店に入ってきて、銃に視線を向けると目をギョッとさせて皆固まった。 この店のマスターがカウンター越しから、偉く縮こまった声を出した。 「いらっしゃい…ませ…」 「ウォッカが欲しい。」 「あ…かしこまりました…」 グラスにウォッカを注がれると俺は一気に飲み干した。 「…!」 やはり、いつ飲んでもこれはきつい。頭が痺れ、体がポカポカと温まってきた。 「…お客さん見ない顔ですね。」 「ええ、ウクライナから来ました。」 「ウクライナか…そんなとこから何でまた?」 「理由は特にありません。」 「そんな物騒な物を抱えて?」 「この銃は猪とゆっくりぐらいにしか使いません。人間には使ったりしませんよ。」 「ゆっくり…お客さんゆっくりを狩るのかい?」 「ええ、饅頭の恐喝から人間を守って、その人間からお金を頂く…そんなことをしています。」 他の客達が一斉にどよめいた。声が止むと一斉に視線がこちらへと集まる。なんとも飲みにくい席となった。 そんなことなど露知らずといった風にマスターが俺に声を掛ける。 「そりゃあよかった!俺達の村は農村でもあって、それで生計をやりくりしてるんだ。」 「…それで?」 「ちょっと前からゆっくり達が山からポツポツと降りてきて、俺達の野菜を食い荒らすんだ!そんなもんは当然出荷できないから金にならない…。」 「続けてください。」 「それだけならまだしも、この山にはドスがいたんだ。そのドスが一匹この前村に降りてきて協定を結べと言ってきたんだ…結ばないならこの村を襲うって。」 「食料を提供しろ。ゆっくりを殺すな。破った場合はゆっくり側が制裁する…そんな感じですか?」 「そうだ!あいつら調子に乗りやがって、かといって大群で来られちゃこの村もおしまいよ!仕方なく協定を結んだわけさ!」 「駆除しようとは考えませんでしたか?」 「そりゃあ考えたけどな、あのドスまりさとかいうデブにのし掛かられて一人骨折しちまったんだよ。しかも群れは大群でなぁ。」 「協定を破ったわけですが、どうなったんですか?」 「より多くの食料提供をしろと迫られたさ。当然断れる筈もなく…。」 「なるほど…それで私に協力して欲しいと?」 「そうそう!兄さんに協力して欲しいんだよ!もちろん金は出すからさ!」 「分かりました。協力しましょう。」 「そうこなくっちゃ!」 俺はゆっくりの駆除を行うことを約束した。ウォッカをもう一杯飲み終えて、会計を済ませようとするとマスターが奢ると言って聞かないのでその通りにさせて貰った。 ついでにマスターから宿の場所を聞き出すと、どこかへと電話を掛けた後に場所を教えて貰った。教えて貰った場所に行くとそこは民宿だった。 「ようこそいらっしゃいませ!ああ、お客様がそうなのですね。ささ、上がってくださいませ!」 この女将、やたらハイテンションだ。 「あの、元気がいいですけど何かあったんですか?」 「あら!ゆっくりを駆除してくれるんでしょ!そりゃ嬉しくなりますよ!お代は結構ですから、ゆっくりしていってくださいね!」 俺は部屋に押し込まれた。畳の部屋でバスルーム、TVに冷蔵庫もあった。それとなくTVを点けるとニュース番組を放映していた。 『またしても、ドスも混じったゆっくり達が人間に餌を要求するという事件が相次いでます。』 どこもかしこも同じ状況らしい。俺はTVを消して冷蔵庫にあったコーラを飲んで寝た。 朝を迎えた。さて、行こう…仕事だ。民宿を出ると軽トラックが俺を待ち構えていた。 「あんた、山に行くんだろ?ゆっくりを駆除してくれるんだって?連れてってやるよ!」 「ああ、ありがとう。」 ブロロロロロロ… 山へと続く道を軽トラックが走る。最中、目の前に複数の赤ゆっくりが転がってきた。 「ゆ~んとっちぇもゆっくちできりゅよ~」 「きょーりょきょーりょ!」 「ゆっくち~♪きょーろきょ~ろ♪」 「ゆゆーん!れいむのおちびちゃんたちとってもゆっくりしてるよ!」 「まりさたちのあかちゃんかわいいね!ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」」」 「うっせー馬鹿野郎!ミンチになって死にやがれ!あほんだら!」 ブウウウウウウウウウ 「ゆぴゅぅ!」 「ゆっ!」 「みゃっ!」 ビチャビチャビチャ おっさんの軽トラが赤ゆ達を轢いて潰した。 「「お、おちびちゃん!?」」 ピーピーピーグチョグチョグチョ 既に死んだ赤ゆっくりをバックで再度轢いて行くおっさん。そして軽トラを止めて親ゆっくり達に顔を向けた。 「れいぶのおぢびじゃんがどぼぢでえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」 「ゆああああああああああああああああああああああああああ!!まりさのおちびちゃんがあああああああああああああああ!!!」 「てめぇらの赤ゆっくりは皆殺しにしてやったよ!ゆっくりしすぎなんだよ!ケッ!」 「どぼぢでごんなごどずるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「ばりざのおぢびぢゃんがえぜえええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」 おっさんが軽トラから降りて、まりさを蹴り始めた。 ボスッ 「ゆぼっ!?」 「ば、ばりざああああああああああああああああああああああ!?」 ボスッ 「ゆぼっ!」 「やべでえええええええええええええええええええええええええええ!!!」 ボスッ!! 「ゆぐぅっ!!」 「やめでよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 「誰がやめるかよ糞袋が。」 「ゆごっ!ゆぐっ!…ぐっ!…ぎょ、ぎょうていざんをわずれだの…ぼっ!…ゆっぐじぜいざいざれるんだよ…ぶべっ!」 「ばりざあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 「協定?協定なんざとっくに無効なんだよアホが。あんな一方的な協定なんか通じるわけねーだろアホ、バカ。」 「ど、どぼぢでゆげぼっ!!ば、ばりざのおべべがああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 「どぼぢでごんなひどいごどずるぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 「死ね!死ね!死ねやカス!」 「ゆぼっ!ゆぐべっ!ゆぎびゃっ!ば、ばりざがずじゃない…べびゃ!…ば、ばりひゃのはしゃんぎゃあ…もっひょゆっぐひひははっは…」 「何がゆひはっはだよ。死ねやオラァァァァァァ!!!」 「ぼべええええええええええええええええええええええええええええ!!!」 「ばりざあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 俺は軽トラの中から、蹴られて片目が潰れて破けた皮から餡子が飛び散りボロボロになるまりさをじっと見ていたが、番のれいむは叫ぶだけで体当たりも何もしてなかった。愚かだ。 「次はてめぇだ糞れいむ。」 「ゆんやあああああああああああああああああああああああああああ!!!やめてえええええええええええええええええええええええええええええ!!!」 おっさんはれいむを掴み上げて軽トラの荷台の側面に何度も叩きつけた。 バンッ! 「ゆぼおっ!!いだいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!やべでえええええええええええええええええええええええ!!!」 ボンッ!! 「ゆばっ!!!!でいむがわるがっだでずぅ!!だがらやべでええええええええええええええ!!!」 「今更遅いんだよ!トリャッ!」 「ぶべっ!ぶえっ!ゆぐべっ!やべぶぼっ!ゆっゆっゆっゆっ…もっどゆっぐ…」 「ふん!死ぬの早すぎじゃボケ!」 餡子を口から吐き出しながら、平べったい顔になったれいむを道の傍らに投げ捨てるとおっさんは軽トラに戻って運転を再開した。 ブロロロロロロ 「いや、すまんな。積年の恨みが云々って奴だ。」 「分かります。」 途中、おっさんはジグザグに車を走らせて道でゆっくりしているゆっくり達を意図的に轢き殺していった。 ブウウウウウウウウウウウン 「ゆゆーん!まりさとってもゆっくびぎぇぇ!!」 「れいぶううううううううううううううううううううううう!?」 「ゆ゙っ…ゆ゙っ…ゆ゙っ…ゆ゙っ…ゆ゙っ…ゆ゙っ…ゆ゙っ…」 「じんぢゃだめええええええええええええええええええええええええええ!!!」 「わかるよー とってもゆっくりできブウウウウウウンビチャ わぎゃああああああああああああああ!!!!ぢぇんのじっぼがあああああああああああ!!!わがらないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「ゆわーい!ちょっちぇもゆっくちできりゅよ!」 「おひしゃましゃんでぽ~きゃぽ~きゃできりゅよ~!」 「おちびちゃんゆっくりしていってね!」 「「ゆっきゅりしちぇブウウウウウウウウウぶぴゃあっ!!!」 「…ゆ?どうしてれいむのおかおさんにあまあまさんがかかってるの?ゆ?…ゆわああああああああああああああああああああああ!!!れいぶのおぢびぢゃんがあああああああああああああああああああ!!!!」 「ゆふぅ…たべすぎちゃったわ!とかいはなありすはだいえっとよ!ブオオオオオオオオオン バンッ! ゆべっ!! ブウウウウウウン… ゆっ…ゆっ…ゆっ…ありずぼっど…」 「ひゃはははははは!楽しいぞ!三郎人生48年目!久々に楽しいぞい!」 「あの、轢いてばっかりいないでまじめに運転してくれませんか。」 「あ、はい。すんません…。」 ブロロロロロロ… ようやく麓まで辿り着いて、おっさんと別れた。俺が降りてくるまで待ってくれるそうだ。 「ゆ!じじいはこんなとこでなにしてんだぜ!ここはまりさたちのゆっくりぷれいすなんだぜ!」 「ハーッ…あ?何か言ったか?」 「ここはまりさたちのゆっくりぷ ジュッ ゆぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!」 「ああ、めんごめんご!まりさちゃんの顔がブサイクすぎて灰皿と間違えちゃったよ!」 「いだいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!じじいはゆっぐりじないでじぶべりょばあっ!!!!!!」 「まったしてもめんごめんごぉ!今度はサッカーボールと間違えちゃったよ。それもこれもまりさちゃんがブサイクなせいだね。」 「ばりざぶじゃいくじゃなびいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!ゆびろおおおおおおおお!!!」 「ジュビロ?」 後ろから悲鳴やら何やら聞こえてきたが、無視して山へと進む。木々が生い茂り視界も足下もかなり悪い。 ある程度進んだところで、ゆっくりの家族が何やら騒いでいた。 「ゆゆー!おちびちゃんあんまりとおくへいっちゃだめだよ!」 「「「ゆっくちりかいちちゃよ!!」」」 「まりさはおひるねしてていいよ!おちびちゃんはれいむがみてあげるよ!」 「ゆゆ!れいむありがとう!」 「おとうしゃんねちゃうにょ?」 「おちょうしゃんちょあちょびちゃかっちゃ…」 「ちょうちょしゃんまっちぇ~!」 「ゆっくりしていってね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 「「「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!!」」」 「ゆ!?にんげんさん!?」 「にんげんさんがなんでここにいるの?」 「ゆゆ!にんげんしゃんいちゅみょおいちいごはんしゃんありがちょう!」 「ちょっちぇもおいちかっちゃよ!」 「しあわしぇー!できちゃよ!とっちぇもゆっくちできちゃよ!にんげんしゃんありがちょうにぇ!」 「いえいえ、どういたしまして。所で協定が無効になって君たちは今すぐ死ぬことになってるんだけど知ってた?」 「「ゆ゙っ!?」」 「「「ゆぅ~?」」」 「君たち今まで野菜を食べてこなかったかい?」 「ゆ?おやさいさんいっぱいたべてきたよ?」 「むーしゃむーしゃできるかられいむたちはおちびちゃんをつくったんだよ?」 「ああ、その野菜は人間が暮らしていく為に作ってきたんだけど、ドスが脅してきたから仕方なく渡すことになったんだよ。それが協定なんだけどね。」 「ゆ?それがどうしたの?」 「れいむさっぱりわからないよ…」 「「「ゆわーい!ゆわーい!きょーりょきょーりょ♪」」」 「それでね、君たちが余りにも多くの野菜を奪い取るものだから人間達は凄く怒ってるんだ。それで君達もドスも皆殺しにしてしまうことになったんだよ。」 「な、なにいってるの!?きょうていさんにいはんしてるでしょ!!」 「そうだよ!れいむたちはゆっくりしたいだけなんだよ!それにどすをたおすことはにんげんさんにもできないよ!」 「「「なんぢぇおきゃあしゃんたちおきょっちぇるにょ?」」」 「なんでもないよ!おちびちゃんはゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!!」」」 「人間達が君達のせいでゆっくりできないとは考えなかったのか?」 「「ゆ?」」 「何で人間から野菜を貰おうと考えたんだ?」 「ゆ~?ふしぎなにんげんさんだね!」 「まりさたちのむれはごはんさんがとれなくなったからにんげんさんにしょくりょうをもらうことになったんだよ。」 「それは、君達が後先考えず沢山の餌を狩ったせいで無くなったんだよね?すっきりし過ぎて赤子が沢山増えたのも原因だよね?悪いとは思わないの?」 「ゆっくりするためなんだからぜんぜんわるくないよ!」 「君達のせいで人間達がゆっくりできなくなっても?」 「ゆ…それは…」 俺は頃合いと見て、赤まりさを足で潰した。 「ぴぎっ!!」 「「きょーりょきょー…ゆ?」」 「ゆ、ゆわあああああああああああああああああああああ!!!おちびちゃんがああああああああああああああああああああ!!!!」 「で、でいむのおちびぢゃんがどぼぢでええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」 「ゆわああああああああああああああああああああああ!!!おにぇえしゃんへんじちちぇえええええええええええええええええええええええ!!」 「おにぇえしゃん?おにぇえしゃん?おにぇえしゃああああああああああああああああああああああああああゆぎゅっ!!!!」 小さな餡子の染みと、土で黒く汚れた皮がペラリと地面に張り付いていた。親子は長女の赤まりさに向けて絶叫していた。 絶叫する最中、俺はもう一匹の赤まりさの背中を踏み潰した。ちょうど体が半分になるぐらいに。 「ゆっ…ゆっ…ゆっ…」 「れいみゅのいもうちょぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 「ゆわあああああああああああああああああああああああああああ!!!ばでぃざにぞっぐじのおぢびぢゃんがあああああああああああああああああ!!!」 「れいぶの…!れいぶのおぢび…!おぢびぢゃんがあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 「黙れ。」 「「「ゆ゙っ!!」」」 「いいか、赤子は死んだ。俺が殺したからな。」 「どぼぢで「黙れ」ゆっ…」 「いいか、お前らにチャンスを与える。お前らがドス達の居場所を教えてくれるなら最後の赤子を、この赤れいむを殺したりはしない。勿論お前達もだ。」 「ゆぐっ…どぼぢで…」 「ゆわあああああああああああああああああああああん!!!れいみゅちゅびゅしゃれちゃくにゃいよおおおおおおおおおおおおおおおお!!もっちょゆっくちしちゃいよおおおおおおおおおおお!!」 「おぢびぢゃんだいじょうぶだよ!おがあぢゃんがゆっぐじばもっであげるがらね…」 「ここからが重要な話しだ。居場所を言わなかったり、嘘を教えたりしてもお前らを殺す。」 「ゆっぐじ…ゆっぐじいうよ…」 「ば、ばりざぁ…」 「おちょうしゃんたしゅけちぇえええええええええええええええええええええええええええええええ!!」 「おい、あんまりうるさくすると関係なく殺すぞ。」 「ゆぎぃ!?ゆっぐぢりがいしぢゃよ…」 「さあ、言うんだ。」 「ど、どずは…どずはあっぢのどうぐづにずんでるよ…ほんどうだよ…だがらばりざだぢをゆっぐじざぜでね…」 「あっちって、こっちの方向か?」 「ぞうだよ…ぞっぢだよ…ぞっぢにずずむどおひざまがぼがぼがのゆっぐじぶれいずがあるよ゙…ぞごにどずはいる゙よ…」 「そうか、分かった。でも嘘だと困るからな、お前らは事が済むまで家の中に閉じ込めておく…家はここか?」 俺は腐った木の根もとに開いた洞のような穴蔵に指を指した。 「ぞ、ぞうだよ…ごごがばりざだぢのおう゛ぢざんだよ…おぢびぢゃんだぢどゆっぐじずるおう゛ぢ…ゆぐっ…」 「ば、ばりざぁ…ゆっぐじ…ゆっぐじじでね…まだでいむににだおぢびぢゃんがいるよ…」 「おちょうしゃん…おきゃあしゃん…ゆっくちゆっくち…」 「茶番なんぞせずに、さっさと家に入れ。入らんなら殺すぞ。」 「ゆっぐぢりがいじだよ…」 「ずーりずーり…」 「じゅーり…じゅーり…ゆぐっ…」 穴蔵に親子が死んだ子供の飾りを口に咥えて入っていったところで、俺は手で土を掻き集めゆっくりには動かすことが出来ないように木の枝を何本か地面に固定して牢屋のようにした。 「ゆっぐじでられなぐなっだよ…」 「ばりざ…だいじょうぶだよ…でいむだぢうぞづいでないがらごろざれないよ…ぎっどだじでぐれるよ…」 「ゆぐっ…ゆぐっ…ゆえええええええええええええええええええええええええええええん!」 「おぢびぢゃんゆっぐぢおぢづいでね…」 茶番を見届けて俺はドスまりさ達がいるであろう、方角に向かって歩みを進めた。 「お日様がポカポカのゆっくりプレイス…洞窟にドスまりさ達が住んでいる…開けた場所ってことだろうか?狙撃にはもってこいだな。」 それにしても先程のゆっくり一家は非常にゆっくりしていたし、礼儀もなっていた。そういうゆっくりの子供を殺すのは少しばかりの良心が咎める。あいつらは帰り際にちゃんと解放してやるか。 少し進んで開けた場所が目の前に出てきた。 「ゆ~?にんげんさんここでなにやぶぎゃぁっ!ゆっゆっ…もっとゆっく…」 間抜け面のちぇんが足下で声を掛けてきたので、問答無用で潰した。俺は開けた場所からある程度下がって、ドラグノフのスコープで周囲を確認した。 ゆっくりは…いない。先程の親子の情報は嘘だったのか?俺がそう思ってると洞窟から図体のでかいまりさが、ドスまりさが出てきた。 「ゆゆーん!今日はとっても気持ちいいよ!みんなゆっくりしていってね!」 「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」」」」」」 ドスの影に隠れるように、後ろからゾロゾロと大量のゆっくりが出てきた。なるほど、洞窟に皆が集まってただけで情報は正しかったわけか。 しかし、この群れのゆっくりは数も多いが種類も割と豊富だな…群れになると必然的にそうなるのだろうか? れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、みょん、ちぇん…流石にめーりんはいないらしい。 俺は伏せの姿勢になり、ドラグノフを構えて照準をドスまりさの左目に向けた。風もなく、それほど遠いわけでもない距離。動きも鈍いゆっくりだ。当てるのは造作もないことだ。 俺はトリガーを引いた。 バンッ! ベシャ 「ゆがああああああああああああああああああああああ!!どずのおべべがあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 「どずううううううううううううううううううう!?どうじだのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「やべでええええええええええええええええええええええええ!!あばれないでどずうううううううううううううううううううう!!」 「いやああああああああああああああああああああああ!!ごっぢごないでえええええええええええええぶびゅおおおおおおおおおお!!!」 「ゆんやああああああああああああああああああああああああああああ!!どぼぢでごんなごどずるびょぼぉっ!!」 「「こっちこないでえええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」」 「わがらないよ゙ー!!わ、わぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 「助けでえええええええええええええええ!!どずのおべべをなおじでえええええええええええええええええ!!」 「むぎょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!ぱちゅのせなかふまないでええええええええええええ!!!えれえれえれ…」 片目を負傷しただけで、阿鼻叫喚の事態となりパニックに陥ったドスがバンバン跳ね回り周囲のゆっくりをベシャベシャと潰して回ってる。 …俺は本当に必要だったのか?そんな風に思ってると、ゆっくりみょんがドスに向けて顔を真っ赤にして怒っていた。 「どうしてこんなことするんだみょん!おまえなんかもうどすじゃないみょん!」 「どぼぢでぞんなごどいうのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「うるさいみょん!さっきからはねまわってみんなをころしてるくせにどすなんかなのるんじゃないみょん!」 「ゆ゙っ!?ゆ、ゆわああああああああああああああああああああああああああ!!!どぼぢでみんな潰れてるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」 「おまえがやったんじゃないかみょん!!」 「うるざいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!どずに逆らうゲスは死゙ねえええええええええええええええええええええええええ!!!!」 グシャ「みょびゅっ!!!」 「ゆっふん!いい気味だよ!ドスはみんなのドスで、みんなをゆっくりさせる為に頑張ってるんだよ!…ゆ?…ど、どぼぢで左が見えないのおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」 抗議していたみょんを潰したこのドスまりさ、アホの極みだ。俺はアホに残された右目に向けて照準を向ける。 「わかるよー!あっちににんげんがいるんだよ!」 「「「「「「「「「「「ゆ!?」」」」」」」」」」」 「この糞人間!ドスの左目を潰したのはお前かああああああああああああああああああああ!!!」 「おばえのぜいでびんなじんだんだああああああああああああああああああ!!ぐぞじじいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 見つかってしまったので、俺はドラグノフを構えるのを止めると今度はAK-74をコッキングレバーを引いて構えた。カチャッ 小気味の良い音がした。 「ゆっぐりじないで殺せええええええええええええええええええええええええええ!!!」 「「「「「「「「「「「「「「「「「「ゆおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」」」」」」」」」 ババババババババババババババババババババババ!!!! 「ゆぎょっ!」 「ゆびゃっ!」 「ゆべええええええええ!!」 「ゆんやああああああああ!!!!」 「ゆぎゃびっ…ばりざのあんよがあああああああああああ!!!」 「いやああああああああああ!!れいむおうちにかえどぅぐっ!!?」「ゆっゆっゆっ…」「まっぐらだよおおおおおおおおお!!みんなどごなのおおおおおおおお!?」 「わがががががががが…もっど…わがらながっだ…」「ぢぇええええええええええええええええん!!」「えれえれえれ…」「あでぃずのべにべにがえじでえええええええええええ!!」 「ゆんやああああああああああああああああ!!ばりざじにだぐないいいいいいいいいいいいい!!!」「ばりざどごいぐのおおおおおおおおおおおゆびょおおお!!!」 「ゆぎゃああああああああああああ!!おいでがないでえええええええええええ!!」「どぼぢでびんなにげるのおおおおおおおおおおおお!!!」 「ばでぃざがわるいでじょおおおおおおおおおおおおおお!!」「にんげんざんはよわ゙いんじゃながっだのがどずうううううううううううううううう!!!」 「んほおおおおおおおおおおおおおお!!!どぼでべにべにがらあでぃずのながみがででぐるのおおおおおおおおおおお!?」 「ゆわあああああああああああああ!!れいぶにんじんじじゃっだああああああああああ!!なんでえええええええええええええええええ!!!?」 「れいばーはじねええええええええええええええ!!」「ゆぼっ!!がっでにでてぐるんだがらじがだないでじょおおおおおおおおお!?」「ゆぎゃああああああああああ!!」 「ゆわあああああああああああ!!やべでええええええええええええええ!!」「ばんばんさんゆっぐじでぎないいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 「ゆぎゃあああああああああああああああ!!」「えれえれえれ」「ぢんぼおおおおおおおおおおおおお!!」「もっどゆっぐ…」「じんじゃだめえええええええええ!!!」 グシャッ!ビショッ!バババ!と銃声とゆっくり達が弾の回転運動によって弾ける音がする…もちろん悲鳴も。 カチカチカチ…弾が切れたようだ。俺はマガジンを引き抜いて交換しコッキングレバーを引く。 「どすううううううう!!いまだよおおおおおおおおお!!どすすぱーくだよおおおおおおおおおおおおお!!」 「ゆ!分かったよ!むーしゃむーしゃむーしゃむーしゃ…」 「ゆっぐりじずぎでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 「はやぐうでばがああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 「仕方ないでしょおおおおおおおおおおおおお!!むーしゃむーしゃ…ドススパーク!」 ドススパークが放たれ、眩い閃光が辺りを包み辺りを燃やし尽くした。 俺の隣の被弾ゆっくり達がいる方向に向かって。 「「「「「「「「「「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」 「ゆげえええええええええええええええ!!!」「どぼぢでごっぢにうづのばがあああああああああああああああああああああああ!!」「ゆぐり…」 「あづいいいいいいいいいいいいい!!だれがだずげでええええええええええええええ!!」「ごっぢごないでええええええええええ…ゆやああああああああああああああああああ!!!」 「どぼぢでばりざのおぼうじがぼえでるぼおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」「あづいいいいいいいいいいい!!あんよざんうごいでええええええええええええええ!!」 「ぼ、ぼっどゆっぐ…じだが…」「ゆんやあああああああああああああああああああ!!!」「わがらばびいいいいいいいいいいいいいいいい!!!ぢぇんのおぼうじのひさんをけじでええええええええええええ!!」 「どぼぢでごんなごどずるのおおおおおおおおおおおおおお!?」「もっどおちびちゃんゆっくじ…」「でいぶううううううううう!!じなないでえええええええええええ!!!」 「あぢゅい!あぢゅいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」「ばりずのべにべにがなんでもえでるのおおおおおおおおおおおおおおお!?」 「ゆふふ…ゆふふ…」「ゆんやああああああああああああ!!!まりざがごばれぢゃっだああああああああああ!!」「みょおおおおおおおおおおおおおおおん!!!」 「らんしゃまたしゅけてえええええええええええええええええええええええ!!!」「らんなんかいないでじょおおおおおおおおおおおおおお!!げんじつみてよおおおおおおおおおお!!!」 弾丸のみならず、ドススパークまでも被弾したゆっくりの大半は焦げたパンのように、黒炭となって死に絶えた。 残ったゆっくりも火が付いて暴れ回り、他のゆっくりに延焼させて大パニック。悲鳴と怒号が飛び交い大パニックは超パニックとなった。 俺がドススパークを受けなかったのは、単純に避けようとゆっくりと横に移動しただけだ。何も特別なことはしていない。冒頭で言ったとおりドススパークは欠陥兵器なのだ。 「どうぢでにんげんにむげでうだないのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」 「うらぎりぼのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「やぐだだずううううううううううううううううううううううううううううううううう!」 「ドススパークはこういうものなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!わがままいわないでえええええええええええええええ!!!」 ドスと取り巻きが揉め始めたようだ。こっちのことなど眼中にないらしい。チャンス到来と思い俺は手榴弾のピンを引き抜いて握りしめたままドスに向かって叫んだ。 「おーい!役立たずのドス紛いの糞デブまりさぁ~!」 「どずはデブじゃないいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 叫んでるドスの口に向かって手榴弾を投擲(とうてき)した。 「ゆぐっ…ごくん……ゆわあああああああああああ!!なにこれえええええええええ!!?ゆばびょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「ど、どずううううううううううううううううううううううううううううううううううう!? 「どずがばぐはづじじゃっだあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 「みょーん!なんでだみょおおおおおおおおおおおおおおおおん!?」 「わがらないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!どずのあんござんゆっぐじぢぇんのがおからどいてね!…どいてっていってるのにいいいいいいいいいい!!!」 「ちんぽぉ…あさだち…なういむすこ…ちゃーはん…」 「どぼぢでどずがぐちゃぐちゃになっでるのおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「どがいはなどずがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 手榴弾がドスの口から体内に入り込み、爆発した。ドスの体から一瞬、閃光が垣間見えたと思うと中身の生臭い餡子と共に爆散した。 餡子が周囲のゆっくりに降りかかり再びパニックに陥る。他のゆっくりは殆ど死に、生きていてもあと一時間とない命の者ばかり。俺を邪魔するゆっくりはいなかった。 ババババババババババババ!!!! 「ゆび!」「ゆばびょっ!」「びょぉん!?」「わががばびゅっ!」「ぢーんぼっ!!!?」「ゆびびゃっ!!!」「どどどどどどがいはぁっ!!」 取り巻きを撃ち殺して、洞窟の中へと足を踏み入れていった…。 中はそれなりに広いようで、手前に二つ、奥に二つ、更に奥に一つの穴が開いていた。恐らく部屋として割り振ってるのだろう。俺は手前の左側の穴へと入っていった。 「おちびちゃんしーっだよ…!」 「「「ゆぐっゆぐっ…きょわいよー…」 「こわいのはわかるよ…でもしずかにしてなくちゃいけないよ…!ゆっくりりかいしてね…!」 「「「ゆっくちりかいしちゃよ…」」」 「「「「「しょろーり…しょろーり…」」」」」 「れいみゅまぢゃしにちゃくにゃいよ…」 「だいじょうぶだっていってるでしょ…!れいむおばさんがいるからだいじょうぶだよ!」 「ゆっくち…おばしゃんありがちょう…」 「ゆぐっゆぐぅ…」 「まりしゃ!ないちゃらめぢゃよ!ゆっくちがみゃんしようにぇ!」 「れいみゅおにぇえしゃんありがちょう…」 「おちびちゃんたちとってもとかいはね…そのちょうしでしずかにしてましょうね…」 「わかるよー…おちついたらちぇんがいっぱいあそんであげるからしずかにねー…」 ここは育児部屋とでも言うのだろうか、子守と思われる数匹のゆっくりと大量の赤ゆがひしめいていた。 「あのー、声を潜めてるつもりなの?バレバレなんだけど…」 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ゆ゙っ!!!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」 「ど、どぼぢでにんげんざんがごごにいるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」 「どずは!?どずがやっづげでぐれる゙んじゃないのおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 「「「ゆんやあああああああああああああああ!!きょわいよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」 「おちびちゃん!れいむおばさんのくちにかくれてね!」 「「「「きょわいよー!きょわいよー!れいみゅおばしゃんまもっちぇえええええええええ!!!」」」」 「ゆぐ…ゆぐ…こ、これでおちびちゃんはあんしんだよ!」 「どぼちちぇありしゅをいれちぇくれにゃいにょおおおおおおおおおおお!!?」 「れ、れいぶおばざんのぐぢのながはいっぱいいっぱいなんだよ…ゆっぐりりがいじでね…」 「やぢゃああああああああああああああああ!!ありしゅしにちゃくにゃいよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 「ゆ!だ、だいじょうぶだよ!ちぇんがまもってあげるからね!だいじょうぶだよ!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちできりゅきゃばきゃやりょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!ゆんやあああああああああああああああああああ!!!」 「お、おちびちゃん…」 「あのさ、口に入れようが入れまいがお前らまとめて死ぬよ。」 「ど、どぼぢで!?」 「なんじぇええええええええええええええええええ!?」 「お前らが余りにも野菜を取りすぎて人間達が困ってるの。んで、反省の色が無いから人間達は怒ってお前らを皆殺しにすることにしたの。協定も無効になったよ。」 「なんでぞうなるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」 「れいみゅたちはゆっくちしちゃかっちゃだけにゃにょにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 「「「ゆんやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」 「おやさいさんはかってにはえてくるものでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 「わかるよー!にんげんさんがかってにひとりじめしてたのがわるいんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「じゃあ今現在、お前らが独り占めしてる結果になってるんだけどどういうこと?」 「「ゆ゙っ!?そ、それは…」」 「言わなくていいよ。じゃあ永遠にゆっくりしていってね…。」 「「やべ、やべでええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」」 手榴弾を二つ、ピンを引き抜いて奴等に向かって投げた。俺はそそくさと穴蔵から退避。 ドゴオオオオオオオオオオ ユギャァ オオオオオオオオオオオオオオオオオ ユ オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!! 吹っ飛ばされる際の悲鳴を聞いたかも知れないが、爆音に揉み消されて聞こえなくなった。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 育児部屋は爆発によって崩壊し、入ることも出ることも出来なくなった。この洞窟自体はまだ大丈夫なようだが…。俺は手前右の穴蔵にズカズカと入っていった。 「「「「「「「「「「「ゆ゙ーっ!!ゆ゙ぅー!!!」」」」」」」」」」」 「れいむもうちょっとだよ!がんばってね!」 「ひっひっゆー!ひっひっゆー!」 「ゆ!あかちゃんもうすぐうまれるよ!」 「ゆ、ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」 「かわいいありすのおちびちゃんよおおおお!!」 「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」 「うばれどぅううううううううううううううううううう!!!」 「ゆっ!まりさがうけとめゆぼべっ!」「ゆべっ!」 「ゆ…ゆっくちしちぇいっちぇにぇ…い、いちゃいよお…」 「お、おちびちゃんゆっぐりうばれでぎだね…ゆっぐじじでいっでね…いだいぃ…」 「ゆっくち!ゆっくち!」 さっきの部屋が育児室ならこっちは出産室といったところか。大量の妊娠したゆっくりと番や助産師と思われるゆっくりが居た。 「ゆ!?な、なんでにんげんさんがここにいるの!?ど、どすは!?」 「ゆぐぐぐぐ…ばりざぁ…でいぶのあがぢゃんがうばれるがらうげどめで…」 ポンッ バババ 「ゆぴゃぴぃ!!!」 れいむのまむまむから赤れいむが飛び出たところを俺のAK-74で撃墜してやった。ビシャビシャと飛び散った餡子がれいむとまりさの顔に降りかかる。 「…ゆわああああああああああああああああああああ!!!れいむのおちびぢゃんがああああああああああああああああああああああ!!!」 「ど、どぼぢゆぎぎぎ…だ、だめだよあがぢゃん…いばうばれだら…」 ポンッ 「ゆっきゅりしちぇバババゆぴゃぴぎょぉ!!」 ビチャビチャ 「ゆ、ゆわあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 「ゆんやああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 「「「「「「ゆ゙っ!?どぼぢでにんげんざんがいるのおおおおおおおおおおおおおおお!?なんでおちびちゃんがしんでるのおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!?」 ババババババババババババ!!!! 「ゆぴゃぴぃ!」「ゆびぼべっ!」「ゆげろびゃっ!」「わぎゃがっ!!」「だめええええええええ!!うばれないでえええびびゅ!!」 「わがらないよおおおおおおおおおおお!!うばれぢゃいげあぎゃぎいいいい!!!」「ぼっどあがぢゃんうびだがっだ…」「ゆぎゃあああああああ!!」 「おきゃあしゃんちにゃにゃいぢぇびぇりょぉ!!!」「むぎょびゃっ!」「ばぢゅでぃじなないでええええええみぎゃっ!!!」 「ごんなのどがいはじゃなびいいいいいいいいいいい!!!」「うべりゃああ!!」「あああああああ!!ばでぃざのあがぢゃんがどぼぢでえええええええ!みぎゃ!!」 「あでぃずのおぢびぢゃんへんじじでええええええええええええええ!!!」「…もっちょちゅっきり…」「いやああああああああああああああ!!びりゃっ!!」 「ゆびょおおおおおおおおおおおおおおお!!!いだいよおおおおおおおおおおおおお!!!」「どぼぢででいぶのばむばむざんがらおちびぢゃんじゃなくであんござんがででぐるのおお!!?」 「ゆんやあああああああああ!!まりちゃにげりゅうううううゆぴゅしっ!!!」「いやああああああああああああああああ!!!れいむのあかちゃんがあああああああああああああ!!!」 「やべでえええええええええええええええ!!ぐぎざんうだだいでええええええええええ!!!」「「「「…ゅ…」」」」「しんじゃだめええええええええええええええええええ!!!ぼべっ!」 「ゆぎゃあああああああああああああああああ!!!」「おぢびぢゃんはちぇんのおぐじにがぐれでね…!」「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!!」」「ゆんやああああああああああああ!!」 「わぎゃぎゃ!!!…わぎゃああああああああああああああ!!おぢびぢゃんがぢぇんのおぐぢでじんでるうううううううううう!!なんでええええええええええええええええ!!あびょぉ!!」 「みょみょびゃ!!!」「むぎょおおおおおおおおおお!!!ばぢゅでぃのがじごいあがぢゃんがあああああああああああ!!!」「「「もっちょむっきゅぴゃりょぴぇっ!!!!!」」」 「「「「「「「「「「「「「「「もっど…ゆっぐ…」」」」」」」」」」」」」」」」 30発でここまで殺せるものなのか。ゆっくりというものは非常に脆く無意味だ。 痙攣しているゆっくりと中身をぶちまけ鉛玉がめり込んだ皮を後に次の部屋を探索する。 奥の二部屋を捜索したが、藁やら草やらが敷き詰められているだけで何もなかった。 だが、何か怪しい雰囲気を感じたので二部屋の藁にライターで火を点けた。ゴウゴウと火の手は大きくなっていく。 「…あぢゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!えれえれえれ…」 「むぎょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」 「「もっど…」」 火達磨になったぱちゅりーが二匹出てきただけで、後は特に何もなかった。 一番奥の部屋は食料庫で、つまみ食いをするクズゆっくりがいたのか殆どが囓られてダメになってる。食料庫も爆破した。 俺は洞窟を後にして山を下りるべく、歩みを進めた。途中、最初に出会った親子を閉じ込めた場所に寄る。 「だじでええええええええええええええええ!」 「ゆっぐじざぜでええええええええええええええええええええええ!!!」 「ゆっくち…ゆっくち…れいみゅゆっくちちたい…」 「おう、お前ら元気にしてたか?」 「「おぞいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!なにやっでだのおおおおおおおおおおおおおお!!!」」 「なにって…ドスまりさ達を皆殺しにしてたけど…。」 「「ゆ゙っ!?ど、どすがしんじゃったの…?」 「ああ、俺が殺した。」 「「ぞ、ぞんなああああああああああああああああああああ!!これがらどうじでいげばいいのおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」 「知らんな。まあ頑張れ。」 俺は木の枝を外してやり、そそくさと下山した。 「どごいぐのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「ここにはごはんさんないんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!まっでえええええええええええええええええええ!!!」 「ゆわーい!ゆわーい!おしょちょきもちいいいいいいいい!!!」 「うるざいだまれえええええええええええええええええええええええええええええ!!」 「ゆんやあああああああああああ!!おきゃあしゃんきょわいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 … 山を下りて、少し歩くとゆっくりをボコボコにしてる軽トラのおっさんがいた。 「死ね!死ね!苦しんで死ね!」 「ゆご!ゆぐっ!ゆがべろっ!!」 「歯ぁ引っこ抜いてやらぁ!」 「やべ…やべでぇ…ゆぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!!」 「あの、終わりましたけど。」 「あ゙?…ああ、終わったのかい。そりゃ助かった!ささ、村へ戻ろう!」 「お願いします。」 「ちょっと待ってくれ。こいつを…こうして…できあがりだ!」 「ぐるじい…ばりざに…ひどいごどじないで…ばりざあやばるがら…」 おっさんが軽トラの荷台からロープを取り出して、ボコボコの歯抜けまりさと軽トラに括り付けた。 「よっしゃ!それじゃあ出発するか!」 「はい、お願いします。」 ブロロロロロロ… ズザザアアアアアア 「いじゃいいいいいいいいいいいいい!!!やべでええええええええええええ!!ばりざをげずらないでええええええええええええええええええ!!! ゆわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!あんござんもれないでええええええええええええええええええええええええええええ!!! もっどゆっぐりじだがっだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 「ところでよ、お前さんジッパー開いてるけどそれってウクライナのスタイルなのかい?」 「えっ」 「えっ」 ズボンを見ると社会の窓が開いていた。…最初にあったお姉さんが背中に声を掛けたのもこれが理由だろう。 俺はガックリと項垂れつつ村に戻り報酬を受け取り、更には酒と風呂を世話して貰った。 村人一同が俺に向けて礼を言った。ここからは再びヒッチハイクの旅だ。 「「「ありよし~!まてよ~!これもってけよ~!!!」」」 村のガキ達が俺に何か箱を手渡してくれた。中身を見ると苦痛に歪む赤ゆっくりだった。 「これは?っていうかありよしってなに?」 「「「ゆっくりの酒蒸しでさぁ~、ありよしってのは地獄を見た人なんだ~…へへっ!!」」」 よく分からないがタレントらしい。ヒッチハイクと引っかけているようだが俺には分からなかった。 俺は今度こそ別れを告げると饅頭を一囓りし社会の窓が開いてないことを確認してから、車道の脇で親指をグッと立てて乗っけてくれる車を待った。 「やめちぇぇ…れいみゅたべにゃいぢぇぇ…」 俺はいつからこうなってしまったのだろうか、ゆっくりを狩ることで放浪生活を続ける。いずれ体にガタがきて、それもままならなくなるだろう。 だが、それまではゆっくりを狩ることにしよう。理由は…ゆっくりを狩り続ける事に理由なんぞいるだろうか? 考えていると車が目の前に止まった。 「どこまで?」 「どこまでも。」 「いいぜ、乗りな!」 洒落っ気のある老人が乗る車に乗り込んで、次の場所へと向かった。それがどこかは俺にも分からない。 … 「ゆんやあああああああああああああああああああああ!!どぼぢでごはんさんないのおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」 「きょうていさんがむこうになったからっていってるでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「おにゃかへっちゃよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「「うるさいよ!!!!」」 「ゆぴぃ!きょわいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 「ゆ!そうだ!どすたちがいたところにしょくりょうさんがあるはずだよ!」 「ゆゆ!?そうだね!ちょぞうこがあるもんね!ゆっくりいそいでいくよ!」 「ゆぅ?ぎょはんしゃんたべれりゅ…」 … 「「どぼぢでごはんざんがないのおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」」 「もっちょゆっくちしちゃかっちゃ…」 「「ゆんやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」
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今日は待ちに待った縁日の日だ。 いい大人が何を…と言われそうだが、縁日には私が毎年楽しみにしている『ある屋台』がある。 この縁日はかなり大規模な祭であり、毎年、数百の屋台が開かれ、数十万人の来場者が来るそうだ。 その中でも私の目的の屋台は、境内の端という人通りが悪い場所に開かれている。 端に開かれてるのには理由がある。この屋台は騒音がうるさいのだ。 そう、その屋台には『ゆっくり釣り』と書かれたのぼりがかかっていた。 ―――――――――― 金魚すくい、亀釣り、ひよこ釣り、etc... 古くから縁日で的屋が出す代表的な屋台のひとつである。 金魚や亀といった、小型の生き物を釣り上げる単純なゲームだ。 生き物を景品に使うとは何事だ!と思われる方もいるが、私は釣り堀の屋台版のようなものだと思ってる。 しかも、この屋台で使われるのは、あの『ゆっくり』だ。 生物学上では生き物と認められてないだけに、縁日の景品としては最適だろう。 私はこの手の遊びには熱くなってしまうタイプで、つい何度もチャレンジしてしまう。 もっとも、熱くなるのは釣ってる間だけで、家に帰ると途端に覚めてしまうのだが。 おかげでお持ち帰りした金魚も亀も長生きした試しがない。 実際、大抵の人は『釣り上げる』というゲーム性を楽しんでいるだけで、釣ったあとのことなど考えていないものだ。 金魚を釣ったはいいが飼えないので、公園の池に捨てられたり、良くても学校などの施設に寄贈されるのが多いと聞く。 私もゆっくりを飼う環境は無いので、いつもお隣のゆっくり好きの鬼意山に差し上げている。 毎年かなりの数を釣って押し付けているが、嫌な顔ひとつせず貰ってくれるので助かっている。 ただ、鬼意山がゆっくりを散歩に連れている姿を見たことがないのが気になるが。 屋台を見ると、すでに数名の子どもたちが、ゆっくり釣り中だ。 あと屋台の端に大人が1人…あれ?あれはお隣の鬼意山だ。 あれだけあげてるのに釣りに来るなんて、よほどゆっくりのことが好きなんだろう。 「よう! 兄ちゃん! 今年も来たな!」 もはや顔馴染みとなった、屋台のおじさんが声をかけてくる。 「お久しぶりです。 今年も来てしまいました。」 「ハハハ! あんたも好きだなあ! まあゆっくり釣ってきな!」 おじさんの豪快な挨拶を受けながら、私は屋台のゆっくりの様子を見た。 金魚すくいの屋台と同じような、底が浅く面積が広い水槽が、屋台の前面一杯に置かれていた。 そしてその水槽には、大量の赤まりさと赤れいむが放されていた。 「ゆっくちしちぇいっちぇね!」 「れいみゅ、おなきゃすいちゃー!」 「まりちゃはうんうんするよ! ちゅっきりー!」 ものすごい数の赤ゆっくりたちが、所狭しと鳴いている。 これが騒音の原因であり、この屋台が境内の端に開かれてる理由のひとつだ。 『喋る饅頭』と言われるゆっくりが、赤ゆっくりとはいえ、これだけ集まれば騒音にもなる。 「くっそー! また失敗した! おじちゃんもう一回!」 「ハハハ! 坊主! 冷静にやらなきゃゆっくりは釣れないぞ!」 屋台のおじさんは、子どもたちに餌の付いた『コヨリ』を渡した。 水ヨーヨー釣りに使われる、針付きのコヨリの使いまわしなのだろう。 違うのは、針が付いていなく、餌として『チョコ柿ピー』が付いている点である。 この餌付きコヨリで、ゆっくりを釣り上げるのだ。 「よーし、このまりさにしよう!」 そう言って、水槽の端にいた赤まりさの前に餌を下げる。 「ゆゆっ! まりちゃのあまあま! ゆっくちたべられちぇねぇ!」 赤ゆっくりは噛む力が足りないので、硬いチョコ柿ピーを噛み砕くことはない。 本来は親ゆっくりに、むーしゃむーしゃ、ぺっ!をして貰わなければ食べられないのだ。 それでも、燃費が悪く、すぐにお腹が空く赤ゆっくりたちは、必死に食べようと努力をする。 赤ゆっくりは消化を助けるために唾液が多めに出るが、その唾液をさらに振りまきながら食らいついた。 「むーちゃむーちゃ、ししししあわちぇー!」 赤まりさは、チョコ柿ピーを口の中に含んで唾液で溶かそうとしてるのだ。 硬いチョコ柿ピーを赤ゆっくりが食べるには、この方法しかないだろう。 赤まりさが口を動かすたびに、チョコが溶けてしあわせーな顔をしている。 コヨリを持つ子どもは、それを見てほんの少しだけ引っ張る。 すると、幸せの絶頂だった赤まりさの口から、引っ張られた餌がこぼれ落ちる。 「ゆゆっ! あまあまにげにゃないでにぇ!」 慌てた赤まりさは、チョコ柿ピーに力いっぱい食いつく。 「いまだ!」 赤まりさが食いついたタイミングで、かけ声とともに引き上げる。 力いっぱい食いついた赤まりさは餌ごと釣り上げられた。 このまま赤まりさを、手に持ったお碗に移せれば釣り上げ成功だ。 しかし、釣り上げる速度が早すぎる。このままだと…。 「おちょらをとんでるみちゃい!」 ヒュ~ドシャ! 「ゆべっ!」 「ああっ!」 空中に釣り上げられた赤まりさは、反射的に鳴き声を発してしまい、餌を離して落ちてしまった。 持ち上げられたゆっくりが、反射的にしゃべる言葉『おそらをとんでるみたい!』 これがあるのでゆっくりを釣り上げるのが難しいのだ。 「くそ~早かったかなあ? これぐらいゆっくりなら落ちないかな…」 「ゆゆっ! にがしゃないよ! むーちゃむーちゃ!」 先ほどの失敗を生かし、今度はゆっくりと釣り上げようとする。 しかし今度はゆっくりすぎる。しかもその餌は一度溶かされてる餌だ。このままだと…。 「むーちゃむーちゃ…ゆっ?! ゆべえぇぇぇぇ?!?!」 「あー!?」 突然、赤まりさは悲鳴を上げて吐餡しだした。 餌であるチョコ柿ピーを溶かしすぎたのだ。表面はチョコだが中身は柿の種。 チョコを溶かしきれば、ゆっくりの毒になる辛味が出現する。 唾液の多い赤ゆっくり相手に、あまりにもゆっくり釣るとこうなるのである。 「きょれ、どくはいっちぇる…がくっ」 「あー…また失敗しちゃった」 命である中身を吐きすぎて赤まりさは死んでしまった。 ちなみにこの悲鳴が、屋台が境内の端に開かれてるもうひとつの理由だ。 楽しい縁日で、饅頭とはいえ何度も悲鳴など聞きたくないということだ。 「ど、どぼじで、まりちゃがちんでりゅのおぉぉぉぉ?!」 「ゆんやあぁぁぁぁ!! きょわいよおぉぉぉぉ!!」 「ゆっくちできないぃぃぃぃ!!!」 それ見たほかの赤ゆっくりたちが逃げ出した。 これだけ怯えてしまっては、続けて釣り上げることが難しくなる。 と、初めてゆっくり釣りを見るお客はそう思うだろう。 「ハハハ! またやっちまったな坊主! ちょっと待っててくれよ!」 屋台のおじさんが笑顔で子どもに声をかけると、水槽の方に向き直った。 「ゆっくりしていってね!!!」 「「「「「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!!」」」」」×たくさん おじさんの声に反応して、逃げ惑っていた赤ゆっくりたちも振り返って挨拶を返していた。 その隙に素早く、死んだ赤まりさの帽子と、吐き出した柿の種を回収する。 「おまえたち! おいしいあまあまが落ちてるぞ!」 「ゆゆー! これはれいみゅのだよ!」 「まりちゃにも ちょうらいにぇ!」 「ゆっくちできりゅよおぉぉぉぉ!!」 なんと、挨拶ひとつで少し前の嫌なことを忘れてしまうのだ。 飾りを撤去したとはいえ、共食いにも気づかずおいしそうに食べる赤ゆっくりたち。 縁日の間、彼らが食べれるのは釣りそこなった赤ゆっくりの中身のみである。 ゆっくりの知能は、その中身の種類と質と量で変化すると言われている。 まりさ種とれいむ種は基本種の中でも頭はよくないほうだ、しかも赤ゆっくりとなれば中身も少ない。 さらに景品用に大量繁殖させているので、当然餡子の質もよくない。 種類・質・量ともに最低の部類に属するこの赤ゆっくりたちは、ありえないぐらい頭が弱くて楽観的だった。 しかし、景品で使うにはこれぐらい馬鹿なほうが都合が良いのだ。 ちなみに同じ基本種の赤ぱちゅりーがいないのは、質の悪いぱちゅりー種は貰いゲロで衰弱死してしまうから。 赤ありすがいないは、質の悪いありす種は赤ゆっくりでもれいぱー化しやすく、数が減ってしまうので使えないそうだ。 と、顔なじみになった屋台のおじさんに教えてもらった。 ほかにも、加工所で商品にならない弾かれたゆっくりを格安で買い取って母体に使っているとか、 1匹の成体ゆっくりから一度に100匹の赤ゆっくりを作る方法や、 強力な成長促進剤を使っているので副作用で寿命が短い等、色々と裏話を聞いたが、 事実を知ると遊んでる子どもたちが確実に泣くのでここでは割愛しよう。 「ほ~らほ~ら、あまあまだよ~ 美味しいよ~ フヒッ!」 ふと見ると、屋台の端で鬼意山もゆっくり釣り中だ。 鬼意山はコヨリを手に取ると、赤ゆっくりが集中しているポイントに餌を下げる。 集中してるだけに、入れ食い確実で一見よさそうな釣り方だが、実は一番よくない釣り方だ。 「ゆゆ! あまあまみちゅけたよ!」 「まりちゃに よこちゅんだじぇ!!」 「れいみゅの ちょらないでにぇ!!」 餌に気づいた赤ゆっくりたちが群がりはじめた。 もみ合い、押し合い、ぶつかり合って大混乱だ。 「むーちゃむーちゃ、ちあわ…」ドガッ!「ぶぎぇ!!」 「ちょれは、まりちゃのあま…」ブチッ!「げへぇ!!」 「きょれは、れいみゅのあま…」グシャ!「ぐべぇ!!」 赤ゆっくりたちが互いを蹴落としながら交互に食いついたため、コヨリが唾液でドロドロだ。 集まった赤ゆっくりたちで小山のようになったころ、濡れたコヨリが負荷に耐え切れずに餌ごと千切れた。 ブチィ!ドサドサドサ! 「「「「「ゆぎゃああああぁぁぁぁ!! ちゅ、ちゅぶれりゅうぅぅぅぅ!!」」」」」 「あ~、また失敗したよ! フヒッ! フヒヒッ!」 このように、意地汚い赤ゆっくりたちの前に置くと、コヨリの耐久度が持たないのだ。 子どもたちのように、端などにいる1匹を狙うのが正しい釣り方だ。 しかし、鬼意山はゆっくり釣りがあまりうまくないようだ。 ゆっくりを可愛がる人が、ゆっくりを釣り上げるのは難しいのかもしれない。 挨拶しようとおもったが、集中してるのを邪魔しても悪いのでそっとしておこう。 「おじちゃんこれ難しいよー! 本当に釣れるのー?!」 「ハハハ! 坊主には難しいか! どれ、兄ちゃん! 手本を見せてあげな!」 「は?! …はい、いいですよ」 急に話を振られて面食らったが、見てるばかりのも悪いと思い、子どもたちに手本を見せてあげることにした。 「いいかい? まず、キミがやったように、1匹だけの赤ゆっくりを見つけるんだ」 「でも、こいつらチョロチョロしてるから、1匹だけなんてなかなかいないよー?」 「そういう時はこうするんだ」 私はコヨリに付いた餌を、赤ゆっくりたちがギリギリ届かない位置で前後に揺らした。 「よーしおまえら、あまあまだぞ」 「ゆー! あまあまちょうらいにぇ!!」 「そりぇはれいみゅのだよ! はやくちょうらい!」 「ちがうのぜ! まりちゃのにきまっちぇるのぜ!」 「ほーら取ってこい!」 ブンッ!と、揺らした反動をつけて餌を遠くに放り投げた。…フリをした。 「「「「「ゆゆー?! まっちぇね! あまあましゃん!!」」」」」 あっさりとフェイントに引っかかった赤ゆっくりたちは、一斉に奥へ跳ねだした。 しかし、見た目が同じ赤ゆっくりとはいえ、個体差というものが必ず存在する。 反応が良い赤ゆっくりは先に跳ねていくが、反応が鈍い赤ゆっくりは行動が遅いぶん手前に残る。 その中でも一番遅れていて、一番手前に残っていた、赤れいむの前に餌を下げる。 「ゆ? あまあまがあるよ! むーちゃむーちゃ!」 鈍そうな赤れいむが餌に食いついた。 「そして食いついたら、腕全体を使って真上に引き上げる」 ヒュン! 「……おちょらをとんでるみちゃい!」 空中に釣り上げられた赤れいむは、反射的に鳴き声を発してしまい、餌を離して落ちる。 しかし、腕全体でしなるように釣り上げたので、餌を離すころにはかなりの高さに達していた。 落ちてくる赤れいむを、やさしく受け止めるようにお碗を差し出す。 ポスッ 「ゆべっ! …ゆゆ? おにいしゃん、ゆっくちしちぇいっちぇね?」 「ほら、簡単だろ?」 「うおー!? あんちゃんスゲー!!」 「ハハハ! どうだい、ちゃんと釣れるだろう?」 この手法だと鈍い赤ゆっくりを選べるので、餌を離すのが遅く、初心者でも釣りやすいのだ。 そして釣り上げるコツは手首だけで釣らないこと。腕全体で釣ることだ。 「お、おじちゃんもう一回! もう一回やるよ!」 「ハハハ! 毎度!」 どうやら、子どもたちのやる気に繋がったようだ。 商売上手なおじさんの思惑通りな気がするが、面目躍如といったところだろう。 「ほ~ら釣れた~ フヒッ!」 ふと見ると、鬼意山も赤ゆっくりを釣り上げていた。 どうやったのか、鬼意山は立ち上がっていて、とても高い位置に釣り上げている。 「お~っと! 手が滑った~!」 ゆっくりとした動作でお碗に移そうとして、コヨリから手を離してしまった。 「おちょらをとんでるみちゃい! …ほんちょにとんでるぅうぅぅぅぅ!?」 グシャアァァ!! 「「「「「ゆぎゃああああぁぁぁぁ!!!」」」」」 運の悪いことに、赤ゆっくりが集まっている場所に落下してしまい、まとめて潰れたようだ。 「ゆっくりした結果がこれだよ! フヒッ! フヘヘッ!」 どうやら鬼意山は意外におっちょこちょいのようだ。 あと挨拶がてらに、ゆっくり釣りのコツを教えてあげようと思う。 「やったー! 釣れた! あんちゃん見て見て!!!」 「お、がんばったな」 先ほどの子どもたちが赤まりさを釣り上げていた。 「こいつ、うちで飼ってやるんだ!」 「そうか、なら私の釣ったゆっくりもあげよう。 つがいで飼ったほうが、ゆっくりも寂しくないからね」 「ハハハ! そりゃ違いねえな! 一緒に飼ってやんな!」 屋台のおじさんは、赤まりさと赤れいむを受け取ると、ラムネの欠片を食べさせた。 「「むーしゃむーしゃ、しあわ…ぐーぐー」」 これで赤ゆっくりたちは、数時間ぐっすりと眠ったままだ。 他の屋台を見るのに、赤ゆっくりを持ち歩いてもうるさくないようにとの配慮だ。 金魚釣り用のお持ち帰り袋を取り出すと、赤ゆっくり二匹を入れて子どもに渡した。 「あんちゃんありがとう! 大事に育てるよ!」 「ああ、がんばれよ」 そういって子どもたちは走り去った。 ああは言ったが、縁日の赤ゆっくりは長生きできないことを、私はおじさんから聞いている。 劣悪な環境で大量繁殖させた弊害で、大事に育てても一年も持たずに寿命がきてしまうそうだ。 おじさん曰く、屋台側としてはそのほうが都合が良いらしい。 一度飼えば飼育道具だけが残るので、来年の縁日でまた釣ってくれる可能性が高くなるからだ。 「じゃあ、私も本格的に遊ばせて貰いますね」 「ハハハ! 兄ちゃんさっきはありがとうな!」 「いえいえ、あれぐらいのことでしたら」 「実はな、兄ちゃんのためにこんなのを用意したんだ」 そういって、おじさんは新たな赤ゆっくりを水槽に追加した。 「「「「「わきゃるよー!!!」」」」」 「おお?! 赤ちぇんじゃないですか!!」 「ハハハ! そうなんだ! やっと繁殖に成功してね! でもこいつらは動きが機敏だから、初心者には釣れそうにないんだよ」 水槽に放された途端に縦横無尽に飛び跳ねる赤ちぇんたち。 赤れいむや赤まりさを数段上回る軽快なスピードだ。 ゆっくり釣りは、動きが鈍い固体ほど釣りやすい。逆に言えば速い固体ほど釣りづらい。 パッと見ただけでも、赤ちぇんを釣り上げるのは難易度が高いのがわかる。 しかし、私は難しいほど燃える性分なのだ。今日は万札を使ってでも釣り上げる覚悟をした。 「でも兄さんなら、きっと釣れるんじゃないかい?」 それを見透かしたように、おじさんはニヤリと笑った。 本当にこの人は商売が上手いなと、心の中でつぶやいた。 作:248あき 過去作 ・ふたば系ゆっくりいじめ 821 路地裏(後) ・ふたば系ゆっくりいじめ 808 路地裏(前) ・ふたば系ゆっくりいじめ 765 かまくら ・ふたば系ゆっくりいじめ 633 バス停
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『シャボン玉とゆん生』 14KB いじめ 不運 自業自得 日常模様 番い 野良ゆ 赤ゆ 現代 久々な感じです、どうぞ 『シャボン玉とゆん生』 よく晴れた日の公園。 そこにはたくさんの子供たちがいた。 子供たちが走り、遊ぶ場所には一面手入れが行きとどいた芝生で、子供たちが転んでも怪我はほとんどないだろう。 周りの木陰にはベンチが幾つもあり、何人かの大人がそこに座って子供たちを眺めていた。 そして一人、ベンチに座る男が一人いた。 やはりその男も公園で遊ぶたくさんの子供たちの中に、自身の子供がいるのだろう子供たちを見る目はとても優しい。 その男の手にはコップがある。 しかし飲むわけではない。 コップには水が入っていた。 しかし、ただの水ではない、若干白く濁っている。 そのコップにはストローがさしてあった。 男は、コップにさしてあるストローをおもむろにコップから抜き、それを口に銜え優しく、息を吹いた。 ストローの先から現れたのは幾つもの虹色の玉。 ユラユラ風に揺られ、フワフワ空を漂う、儚く、美しい、シャボン玉。 幾つものシャボン玉の虹彩が空を彩り、すぐに消えて行った。 そう、男が持つコップの中には石鹸水が入っている。 無論、用途はシャボン玉を作るためだ。 男は、子供に作ってとせがまれ作ったのはいいが。 公園に着き子供に渡したがしばらくすると、友達に遊び誘われ今はもう目の前で友達と元気よく遊んでいる。 まあ、こんなことも悪くないと、もう一度シャボン玉を膨らませた。 優しく、優しく。 少しずつ大きくなったそれは、やがて空に飛び、しばらく浮いていると、また儚く消えた。 男は昔を思い出す。 自分も昔、シャボン玉でよく遊んだものだと。 そう、こうやって遊んでいると。 「ゆゆ! ふわふわしゃんはゆっきゅりできりゅよ! ゆっきゅりしていっちぇね!」 こうやって、やってくるのだ。 ゆっくりが。 茂みから現れたのは赤ゆっくりのれいむだ。 「ゆゆ~ん、おちびちゃんまってね!」 その親なのだろう、れいむが赤れいむを追うように出てきた。 男は気にせず、シャボン玉を新たに作る。 今度は強めに息を吐くことによって、小さいながらもたくさんのシャボン玉が宙を彩る。 「ゆわ~い! ふわふわしゃんがいっぴゃいだよ! ゆっくちゆっくち!」 新たに増えたたくさんのシャボン玉に目を奪われる赤れいむ。 地面に近づいたシャボン玉に飛び付き、幾つも消しては、また別のシャボン玉へ飛び付く。 「ゆゆ! にんげんさんだよ!」 そこでようやく、親のれいむが男に気付く。 ゆっくりにとって、人間は不倶戴天の敵だ。 しかしシャボン玉を作っている姿を認め、その姿がゆっくりできていたのだろう。 「ゆゆ~ん、ゆっくりしてるにんげんさんだよ、ゆっくりしていってね!」 そう、男に言った。 この程度で警戒を解く辺り、やはりゆっくりはゆっくりとしか言いようがなかった。 男はただ曖昧にほほ笑み、シャボン玉もう一度作った。 シャボン玉を作ってゆっくりさせてくれるのだから、少しの無礼も許そうと、れいむは返事をしない男に怒りはしなかった。 その後も、シャボン玉は幾つも幾つもストローの先から飛び出てきた。 そして、その後もゾロゾロとゆっくり達が現れる。 おそらく、その赤れいむと親のれいむの家族だ。 「ゆっへん、かぞくさーびすができるまりさでごめんね! きょうもおちびたちはゆっくりできるんだぜ!」 親のれいむの番、赤れいむの親のまりさだろう。 何にアピールをしているのか、自分はすごいでしょ、褒めても良いよ、といった風だ。 もちろん、男は無視してシャボン玉を作り続ける。 「ゆゆ~ん、おちびちゃんたちはとってもゆっくりしてるよ~」 シャボン玉を見てゆっくりしている我が子達をみて、れいむはゆっくりする。 「ゆっきゅりまっちぇね! ふわふわしゃん、ゆっくちゆっくち!」 「まりちゃしゃまが、ふわふわしゃんをつきゃまえりゅんだじぇ! ゆっくちー!」 「ゆー! まりしゃもぎゃんびゃるよ!」 そういって赤まりさの一匹がシャボン玉に突撃する。 「ゆー!」 しかし、シャボン玉は赤まりさが掴まえる寸前に弾けてしまった。 その後もどれだけ頑張っても、そのシャボン玉を捕まえることができない。 「ゆっくちつかみゃるんだじぇ!」 「まりしゃにもつきゃまってね!」 それでも赤まりさは、掴めると信じて、シャボン玉に向かって飛び続ける。 きっとこの、綺麗なシャボン玉を自分のおつむを覆う、帽子に入れさえすれば、一生の宝物にできるのだと。 「ゆっくち!、ゆっくち!」 「ゆー! ゆー!」 ちょっとやそっとでは、この赤まりさのゆっくりへの情熱は冷めることはない。 「……ゆっくち、ゆっくち……」 「ゆー、ゆー」 跳んで跳んで跳んで。 「ゆひぃ……、ゆひぃ……」 「ゆう、ゆう」 疲れて、止まって。 「……どびょじで、ふわふわじゃんまりぢゃにづがまっでぐれないんだじぇぇぇぇぇぇ!!!」 「まりちゃぁぁぁにゃきゃにゃいでぇぇぇぇ!! もっちょまりしゃもぎゃんびゃるきゃらぁぁぁぁぁ!!!」 情熱でシャボン玉は掴めるものではなく。 根性の欠片もないゆっくりである、赤まりさは捕まえられない現実は、シャボン玉のせいとした。 何時までも冷めない情熱は、ただの我がままになり、姉妹の赤まりさも泣かせてしまった。 ピイピイと泣き喚く、赤まりさ達である。 そんな馬鹿が馬鹿らしい行動をしている頃。 れいむの傍の赤れいむは、実にゆっくりしていた。 先ほどまでは赤まりさ同様に、シャボン玉を追っていた赤れいむだが、疲れたのかシャボン玉が浮かんでいるのを静かに見ている。 「ゆーん、ゆゆ~ん、れいみゅゆっきゅりしてりゅよ~」 「ゆ~ん、ほんとうだね、れいむもとってもゆっくりしてるよ!」 赤れいむもれいむ種なのだから、れいむ似なのだろう、その馬鹿面までもが縮小されたかのようにそっくりだった。 「そうだね、おちびちゃん、れいむおもわずうたっちゃうよ、ゆっくりのひ~、まったりのひ~」 「ゆゆ、れいみゅもおうたしゃんうたうよ! ゆっきゅりのひ~、まっちゃりのひ~」 ノイズにも劣る雑音が垂れ流すが、同種間ではこれは歌の様だ。 顔を緩ませて、その音に聞き入るれいむ。 「ゆっ! れいむはれいむににて、おうたがとってもおじょうずだね! れいむとってもゆっくりできるよ~」 「ゆゆ! ほんちょ! じゃあれいみゅ、うたひめしゃんになりゅよ!」 「きっとなれるよ! だってれいむのおちびちゃんなんだからね!」 そのなれなかった証明がそこに存在しているというのに、この親子は自身達の未来に酔う。 ただ、ゆっくりしていると信じて。 その光景を見て、まりさは実にゆっくりする。 「ゆゆ~ん、やっぱりまりさのかぞくのみんなはとってもゆっくりしてるんだぜ!」 まりさが守っている光景。 まりさが望んでいる光景。 まりさの思い描いていた光景。 その光景は流石に小さい頃夢見てきたモノとはとても違くなってしまったが、今のこれがまりさの生きてきた証明。 今まで生きてきて、ゆっくりできないこともあった、ゆっくりできたこともった。 しかし、それでも今、目の前の自分の番が、自分の子供が、そして、自分自身がとてもゆっくりしている。 これがいまのまりさの全て、ゆん生の集大成ともいえる光景だった。 そんなこんなであっという間に男の周りのベンチにはゆっくりで一杯になってしまった。 男は気にせず、シャボン玉を作り続ける。 どうせそのうち、飽きてどっか行くだろうと思いると。 「にんげんしゃん、れいみゅにもふわふわしゃんだしゃしぇてにぇ!」 と一匹の赤れいむが男がシャボン玉を作っていることに気付いたのだろう、男に言ってきた。 男はやれやれと言った笑みを浮かべながら、赤れいむを持ち上げる。 「おしょらとんでりゅみたい!」 そうご機嫌にいう赤れいむ。 親のれいむもまりさも、男がゆっくりさせてくれると思っているのだろう、その顔は緩んでいた。 「ゆゆ~ん、れいみゅゆっくちしてりゅよぉ~、ゆゆ~」 ご機嫌に鼻歌まで歌い始める。 ポンと男の手のひらの乗せられ赤れいむの前に突きだされた一本のストロー。 赤れいむは躊躇なくそれを銜える。 男を真似てだろう。 だがこの先は見ているだけでは分かりにくい。 しかし、ゆっくりらしい計画性も想像性も何もなく、赤れいむは気にせず、躊躇もせず思い切りやった。 さて、ここで少し考えてみよう。 小さい子供がストローの刺さったジュースのコップにすることはなんだろうか。 答えはただ一つしかない。 吸う、だ。 ジュルル! と勢いよく、コップの中の石鹸水が吸われる。 ストローに少しだけ影を作り、流動性のあるそれは重力に反して動く。 ストローの先から入り、蛇腹部分を通る。 あっという間に石鹸水はストローを通り切り、赤れいむの口の中に入っていった。 そして、それをは赤れいむの舌に辿りつき、その舌を味覚を刺激させた。 一瞬の間。 赤れいむは顔を真っ青にする。 その顔は今までかつてない以上にゆっくりしていない。 「!!!!!!ぶっ゛」 口に銜えたストローと口に入った石鹸水を勢いよく吐き出す。 ついでと言わんばかりに、餡子も飛び出してくる。 しかし、それでも赤れいむの顔色は元に戻らない。 「!!!! ゆ゛ぎぃ゛」 不細工な顔を顰め、更にその顔を醜くゆがめても、それでもなお顔色は悪いままだ。 とにかく、何かを叫びたかった。 この辛い思いを、何かにぶつける為に。 視界が歪むほどのこの感覚を。 舌の機能が利かなくなるほどのこの苦しみを。 赤れいむの餡子脳の中でこの辛さを伝える言葉を持っていなかった。 だから、ただ、餡子脳の本能として刻まれた、幾つもある末期の言葉の一つを吐きだす。 「!!! ゆ゛げぇ゛!! ごれ゛どぎゅ゛ばい゛っでり゛ゅ゛!!!!!」 そう叫び、今度は口から餡子を多量に放出させた。 なんてことはない赤れいむの舌には今は石鹸の味、台所用中性洗剤の味、つまり苦味が支配していた。 あのなんとも言えない、口に残る苦味。 どれだけ水に流そうと、残るその味。 たかが赤ゆっくり程度の吐く餡子で流しきれるモノではない。 「ゆ゛げぇ゛! ゆ゛げぇ゛!! ゆ゛げぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 それを証拠に、赤れいむは目を血走らせ、自身の限界を挑むように餡子を吐き続ける。 ゆっくりの一家は、いきなりの赤れいむの吐餡行動に呆然としている。 まるで自分の中の悪魔でも吐き出すかのような行為。 石鹸と汚物は相容れぬものなのだろうか、少しでも浄化しようとする作用があるかのように、赤れいむの吐餡は止まらない。 すでに左右の目は何も映し出さないように濁りきり、何処を向いてるかもわからない。 ただひたすら、赤れいむの家族に赤れいむはゆっくりできない声を響かせる。 そして家族はその音源を注視してる。 「ゆ゛ぎっ」 赤れいむは、今まで吐餡をし続けた口をいきなり閉じた。 「ゆ゛ぶっ」 それでも、吐餡行為は止まりそうにない、歯茎をむき出しに歯を食いしばる。 「ゆ゛がっ」 だが足りない、食いしばった歯の隙間から餡子が出口を見つけ出しニュルニュルと顔をのぞかせる。 「ゆ゛びっ」 ボロボロと今まで以上に涙がこぼれる、それでも餡子の流出は止まらない。 歯を食いしばるのも辛くなり、徐々に口がすぼまっていく。 「ゆ゛べっ」 赤れいむは最後の抵抗に限界まで口をすぼめる。 体が震わせ、体は跳ねさせ、体をくねらせ。 全身を使い、短いゆん生の中で飛びぬけるほど、力を込める。 しかし、それでも、足らない。 赤れいむの体が強く跳ねる。 「ゆ゛っ゛!!!」 一瞬、赤れいむの苦悶の表情が透明になる。 そして溜めが終わったように最後に強く響いた。 「ゆ゛げぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 今まででもっとも汚い音をたてながら赤れいむは口が裂けろと言わんばかりに口を開く。 「え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 少しずつ出来てきたのは丸く、他の餡よりも艶のある餡子、中枢餡。 それが徐々に赤れいむの口からひり出されていく。 「ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!」 徐々に、徐々に、出てきた中枢餡はその全容を見せた。 それがなければ生きていけない、ゆっくりの中枢餡である。 赤れいむは今まで、必死に動いていたのが嘘のようにピクリとも動かなくなる。 男の手の中の赤れいむは餡子を少しも残さず、自身の餡子を吐きだし尽くしピラピラの皮となっていた。 それでもなお、その顔はまだ苦痛にゆがんだままだった。 死んだ。 ゆっくりが呆然とする中。 一つの元気な声が響く。 「あっ! ゆっくりがいる!!」 今まで公園の芝生で遊んでいた子供だ。 その声を聞きつけ、別の子供たちがホントだ―、と楽しそうな声を上げる。 「みんなー! 次はこれで遊ぼー!!」 一人の子供が言うと、みんなただ、わかったー! 騒いだ。 男の子の一人が、親のまりさを持ち上げる。 「おそらとんでるみたい! ……ゆっ? ゆっ? なんなんだぜ、なにするんだぜ!」 自分の子供がいきなり壮絶な死をした直後である。 ここは頭の回転の悪いゆっくり、死んだという事実を呑み込みきれない、いや死んだとわかっていない。 不安げに、ゆっ? ゆっ? と戸惑いながら、いきなり持ち上げられたまりさは、訳の分らぬままに男の子の手から逃れようと、体をよじる。 しかし、その程度では、子供の拘束すら解けない。 「ゆっくりおろすんだぜ! ゆっくりおろすんだぜ!」 まりさは自分の子供の安否も分からぬまま、連れて行かれる。 先ほどまで子供たちが遊んでいた、芝生だ。 「ゆっ! おちび、おちびは、いったいどうなんたんだぜ!」 いつもの傲慢さを出す暇もない。 ただ自分の希望であった、自分の子供が命である餡子を大量に吐いたのだ。 あの量では死んでいると、素人目でもわかる。 しかし、信じられない、信じられるわけがない。 ただ、生きていると信じて、まりさは底部に力を込め、一瞬でも早く自分の子供の元へ跳ねようとする。 「あ、コラ逃げるなっ!」 が、蹴りがまりさを襲う。 まりさはゆべっ! と潰れたような声を出しながら、芝生の上を転がる。 男の子がまりさを降ろしたのはまりさの命令に従ったわけではない。 蹴るボールは手に持っていたら蹴りにくいのだ。 ただ、それだけだ。 「おちびゅ!」 男の子達は、まりさを嬉々として蹴りつける。 しかしまりさは、逃げようと、自分の子供の元へ向かおうと、必死に動く。 「おびっ!」 それでも遅々として前に進まない。 「ゆ゛っ!」 蹴られ戻され、踏まれ止まり。 「ぼうやめでー! やめでぐづぁー!!!!」 一人の蹴りが、まりさの目に突き刺さる。 「ばりざのおめめがぁぁぁぁぁ!! ぜがいをみどおずばりざのおべべぇぇぇぇぇぇ!!!!」 ブジュリとまりさの目から音が鳴った。 涙とは違う液体がもはや目のない窪みから流れる。 「おべべぇぇぇぇぇ!! おべぇぇぇぇ!!!!」 泣き喚いていると、まりさに力強い一撃が加わる。 放物線を描き、遠く飛ばされ、連れていかれたところまで吹き飛ばされた。 「ゆべぇ!!」 痛みに呻きながらも、まりさは残った目を開いた。 ただ、一心にまりさの子供の安否の為、ただ信じたいため、この心に残った赤れいむが死んでしまったという、信じたくないことを払しょくするため。 ただ、それだけだったのに。 「ゆ゛っ……?」 そこには。 絶望があった。 まりさの想像を超える、絶望。 まりさの子供達が、希望が、ピクリとも動いていない。 顔に幾つもの穴が開いている、口から目から砂糖水の体液を垂れ流している。 その死にざまはまったくゆっくりしているモノではない。 「あ、あ、あああ」 震える声で、見たくないモノから目をそらす、その視線の先には、れいむがいた。 まりさの番のれいむだ。 だが、まりさの子供たち同様に、すでに死に絶えていた。 しかし、死に方は体に棒が突き刺さっているのだ。 幾つも穴が開いている。 中枢餡に刺さるまでにあけた穴だろう。 その顔は、最初に死んだ赤れいむ同様、壮絶なまでにゆっくりしていない表情だった。 「ば、ばりざの、ばりざの、ばりざの……」 その光景が目に焼きつく。 まりさが守れなかった光景が。 まりさが望んでいない光景が。 まりさの思い描いていない光景が。 まりさのゆん生の全てが、終わっていた。 「ゅっ、ゆっ、ゆっ、ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛」 まりさは痙攣し始める。 口から泡がボコボコと吐きだされ、残った片方の目も白目をむく。 「ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛、ゅ゛っ゛、ゅ゛っ゛……、ゅ゛……っ」 全てを失ったまりさは、ただ、ゆっくりできなくなって死んだ。 まりさが動かなくなると、子供達は別の遊具に行ってしまった。 男はやれやれと思いながら、ゆっくりの死体を持ち上げる。 ここの公園はよく整備されている。 なら、綺麗に使うのは道理だろう。 餡子が飛び散らないように、棒で突き刺して殺したのだ掃除は楽だ。 ただ、最初に死んだ赤れいむの餡子はしょうがないだろう、自然に任せるか、管理者にどうにかしてもうことにする。 ゴミはゴミ箱へ。 ゆっくり専用と書かれた、ゴミ箱には今日もたくさんのゆっくりが詰め込まれていた。 ただ、そのゆっくり達のゆん生はシャボン玉より淡く、儚く、そして比べるまでもなく汚らしいゆん生だろう。 anko1083 サンプル anko1097 暗く湿った穴の中 anko1308 すろーりぃな作戦 anko1394 投げた! anko1425 声 anko1477 さよなら生物 anko1503 山彦恋慕 anko1632 親の脛かじり anko1739 楽しい朝餉 anko1823 梅雨が来て、人が来て anko1879 飼い(仮)ゆっくり 子れいむ anko1890 一緒に遊ぼう anko2053 ゆっくり地獄鍋 anko2216 真夏のオアシス anko2291 一番ゆっくりしてるのは anko2313 エチケット糞袋 anko2471 甘い言葉 anko2574 戦い方を教えてみたり 19作目です。 では、最後まで見ていただけたら幸いです。 大きく振りかぶったあき
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『教育番組とゆっくり』 6KB 小ネタ 失礼します。 anko2611 ゲスゆっくり奮闘記1 anko2622 ゲスゆっくり奮闘記2 anko3414 ゲスゆっくり奮闘記3 anko3417 ゲスゆっくり奮闘記4 anko3456 れいむのゆん生 anko3458 まけいぬとゆっくり anko3461 ゆっくりに生まれて anko3484 ゆっくりブリーダー anko3489 休日とゆっくり anko3652 ドスについて anko3715 ゆっくりに餌を anko3729 はじめてのぎゃくたい anko3730 はじめてのしいく anko3741 ゆっくりショップのバイト anko3794 まりさとの勝負 anko3843 野球部のゆっくり anko3855 ゆっくりと会話してみた anko3932 ゆっくり観察日記 anko3933 ゆっくりと子供 anko3953 しんぐるまざーの朝は早い anko4016 虐められるためのゆっくり anko4094 普通の人とゆっくり anko4153 愛された果てに anko4170 むっきゅーさん anko4290 肉体的暴力とゆっくり 「」ゆっくりの台詞 『』人間の台詞でお願いします 『良い子の皆ー! 虐虐さんのゆっくり工作、はーじまーるよ!!』 「「「「「ゅ、ゆわぁぁあああ!?! やめてねぇぇえええ!!!」」」」」 明るいお兄さんの声で始まったのは人気(極々一部の更に一部で)番組の〔つくってぎゃくぎゃく〕だ。 眼鏡のお兄さんは、工作机を挟んで目の前に置かれた5m四方はありそうな囲いの中で逃げ惑うゆっくりたちを優しい眼差しで眺めながらカメラに笑顔を見せた。 『はい、今日も皆で楽しくぎゃくぎゃくしていきましょうね!』 「「「「「しなくていいよぉおおおおおおお!!」」」」」 お兄さんの声に一々しっかり反応してくれるゆっくりたちは、この番組に欠かせないアシスタント兼材料。 『えー、今日はね、うん、お兄さん一人だけど、頑張って色々やっていこうと思います♪』 そう意気込むお兄さん、普段なら優しい彼の隣には獣をモチーフにしたらしい可愛いマスコットキャラ兼問題提示役の〔ころりくん〕がいるのだけれど……。 『ころりくんは今日、糖尿病の定期健診でお休みでーす! みんなもゆっくりばかり食べてると、ころりくんみたいになっちゃうぞー』 と、小粋なジョークも飛ばしつつ番組は進行していく。 前述の通り今日はマスコットがいないので、問題提示もされないのでお兄さんのペースで進んでいく。 『今日は獣がいないからお兄さん張り切っちゃうぞー♪ 実はお兄さん動物苦手なんだ』 ちなみに獣と書いてお兄さんは〔ケダモノ〕と呼んでいる。 それはさておき、お兄さんは『まずは』と言って柵の中から小さな子れいむを取り出した。 「ゆっぴぃいい!?! はなしちぇねええぇぇえええ!!」「お、おちびちゃあぁぁあああああん!!」 ゆっくりのテンプレ行動を無視して彼はカメラにぐっと子れいむを近づけた。 番組の盛り上げ方を熟知した自然かつ見事な動き。 『はい、今日はまずはこの子れいむちゃん♪ 不細工な顔が可愛いですねー』 「れいむぶさいくじゃないよ!! しつれいなこといわないでね!! ぷくーだよ! ぷくー!」 『その頬を膨らませる仕草も不細工で気持ち悪いですねー、さしずめブサキモゴミカス可愛いってところですね♪』 「ゴミさんとカスさんはどっからきたのぉおおおぉお!?!」 『えー、それはまた今度で……まずはこのれいむちゃんを使ってオシャレなオブジェを作りましょう!』 れいむの叫びの疑問を一瞬でさておいたお兄さんは、いつのまにか片手に良く切れそうなナイフを持っていた。 『まずは、れいむちゃんのしーしーの穴を切り取りたいと思います♪』 「ゆ? にゃ、な、なにいってるのぉおおおおぉおお!!」 勿論叫びは無視、この番組ではゆっくりの声は100%BGM扱いなので。 『時間もないですし、ちゃっちゃか行きましょうか、えい、やっと!』 軽い声と共に熟練の手つきで、れいむの小さなしーしーの穴を周囲ごと取り除いた。 「ゅ、ゅゅわ 『はい、続いて目と目の間も~~はい♪ 取れました!』 ゆ?」 切り取られた痛みにれいむが叫ぶより早く、お兄さんは切り取ったしーしーの穴と同じ大きさの円をれいむの額に開けた。 痛みの連続というか、何をされているか理解できずにフリーズしてるれいむに気にせず番組は進む。 『そして、この切り取ったしーしーの穴に水溶き小麦粉に、少しハチミツを加えたものを塗ってから~、額の穴に……はい♪ ジャストフィット!』 「ゆぴ?」 未だに追いつけていない本ゆんの知らぬところで、れいむの目と目の間にはしーしーの穴が移植されていた。 『最後に、目の方からとった皮で元しーしーがあった場所を塞ぐと、はい完成!』 お兄さんは目と目の間からちょろろっとしーしー漏らすれいむを持ち上げてカメラに見せた。 『見てて下さいね~、このれいむちゃんをこうギュッとすると』 「ゆぶっ!? やべでね! ぐるじいよ!!」 手の中で潰されたれいむは、目と目の間から勢い良くしーしーを噴出した。 「な、なんなのこれぇぇえええ!?! ゆべっ! やべて! しーしーさん! れいむのおくちにはいらないでね!」 口の真上から噴出したしーしーは、垂れて子れいむのお口に流れ込んでいく。 れいむは、それをペッペッと吐き出しているけれど、そこに穴がある限りしーしーする度に口に入ってくるだろう。 まだお寝しーしーしそうなサイズの子れいむだけど、これのおかげで皆より早く卒業出来るかも知れない。 お兄さんにはそんな深い意図があったとかなかったとか。 『そして、こちらがですね、れいむちゃんよりもっともっと沢山しーしー穴を移植したまりさちゃんで~す♪』 「ころじで、まりさ、もういやだよ……ころしてね」 口に入ったしーしーに悶えてしーしー漏らして、また悶える馬鹿な行動を繰り返す子れいむを捨て置いてお兄さんは机の下から亜成体サイズのまりさを取り出した。 まりさには帽子がなく、全身の至るとこから汗みたいにしーしーを漏らしていた。 空ろな目で「ころして」と繰り返すまりさの舌にもしーしー穴は移植されていたりする。お兄さんの細かい拘りが見える工夫である。 『このまりさちゃんは凄いんですよ~、見ててください?』 「やべで、やべで! やべでねえぇぇええ!!」 お兄さんはまりさの頭に何やら薬品を注射して、それと一緒に点滴のようなものも差し込んだ。 そして、注射器の針を抜くとカメラに向かって笑顔を見せて。 『見ててください? 3、2、1、GO!!』 「ゅ、ゅぶ、ゅば、ゆぶぶぁぁぁああああ!!!!」 『きゃー♪ まりさちゃん格好良い!』 お兄さんのカウントダウンに合わせるように、ぷるぷる震えたまりさは、全身につけられたしーしー穴から握られてもいないのに一斉にしーしーを噴出した。 目を血走らせて、身体をぐねぐね、のーびのびさせる愛らしいダンス。 もちろん舌からもしーしーは噴出しているので、まりさは必死に舌を口の外に伸ばしていてかなり面白い状態だ。 ちなみに、お兄さんが最初に注射したのは強制的にしーしーさせる薬で、点滴のようなものは水だ。 これにより、まりさはお部屋を彩る噴水になれるのだ。 『まりさちゃんの身体は防水処理してますから、溶ける心配はないんです♪ いやーとっても可愛いですね~』 「ゆべべ!? おぼっ!? し、じなぜ、おべぇぇえ!!」 「な、なんなの、なんでまりさが、こんな、ゆ!? しーしーさんおくちにはいらないでぇぇええええ!!」 まりさの惨状にれいむはしーしーを漏らして再び悶えていた。 『れいむちゃんにまりさちゃん、二人ともとっても可愛くて可愛くて―――』 お兄さんは手が汚れるのも厭わずに、二匹の頭を撫でる様に手を伸ばして―――。 『まっ、それだけなんですけどね♪』 「「ゆべぶっっ?!?」」 ―――二匹のゆっくりをまとめて潰した。 まりさの死骸からが大量の水分と水っぽくなった餡子がとろとろ流れて机に広がっていった。 それを見てBGM担当のゆっくりたちは目に涙を浮かべて震えている。 『おっと! 楽しい時間は直ぐに過ぎてしまうね! 今日はここまで!』 お兄さんが人懐っこい笑顔を浮かべて両手を広げて見せる。 『それじゃあ、皆もお家で作ってみてね! じゃあ、また来週!』 「「「「「もうやべでねぇぇえぇえぇええええええ!!!」」」」」 再び機能したBGMたちの声で、楽しい楽しい人気番組は終了。 最後に〔みんなからのおたよりコーナー〕と言う、番組を見た人が自分も作ってみたという写真を送ってくれたものを流して、無事に今週の放送も終了した。 柵の中のゆっくりたちは来週がこないことを祈りながら、涙を流していた。
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『それはそれは残酷な話ですわ』 10KB いじめ 観察 日常模様 群れ 希少種 現代 ゆかりが出てきます そんなに昔々でもないつい最近、公園があった。 その公園にはゆっくりが住み着いており、ひとつの群れらしきものが出来ていた。 様々なゆっくりがいた。 れいむ、まりさ、ぱちゅりー……そして、ゆかりがいた。 もちろんその群れの長はゆかりである。 ゆっくりだけが通れる「スキマ」というわけのわからないものを操る、なぜかいつも綺麗な扇子を持っている、中身は納豆……。 さまざまな噂が飛び交っているが、今現在、ゆっくりのことを知り尽くしている人間は、ゆかりについてだけはわかっていることが少ない。 なんせ捕獲しようとしたらスキマを使われてわけのわからないままに逃げられるのだ。 とはいえさすがに人間が本気になれば捕獲できないことはないだろうから、あと数年もしたらゆかりについて色々わかってくるだろう。 逆に言えば、本気にならないと捕獲できないほどのゆっくりである。 そんなゆかりが長をつとめる群れである、その公園では今まで一度も人間に「一斉駆除」をされたことがなかった。 これは不思議な不思議な、公園の話。 2月に入り、ついこの前まで雪が降っていた街はだんだんと暖かくなっていた。 みな分厚いオーバーコートを脱ぎ、暖かい日は上着を持たずに外出する人もいた。 しかし、それは人間の話だ。 服や毛皮のような温度から身を守る手段を持たず、全身が素肌のようなゆっくりは未だに寒さに凍えていた。 「しゃぶいよおおおおおおお!!」 「お、おぢびぢゃん……ゆっぐりがばんじでね……」 「まりざ……ざっざどなにがあっだがいぼのもってぎでね……」 れいむ、まりさ、子れいむの三匹は震えながら歩いていた。 じっとしていないのには理由がある。 この一家は、捨てられたのだ。 元飼いゆっくりだったまりさは、「勝手にすっきりしてはいけない」という約束を破り、散歩中に飼い主の眼を盗んで野良のれいむとすっきりをした。 飼い主の所に戻って、始めて言った言葉が「おにいさん、これかられいむとおちびちゃんといっしょにくらそうね!」だったのだから呆れることこの上ない。 当たり前だがまりさは捨てられた。 一緒に産まれた2匹のおちびちゃんは、落ちていたスナック菓子を食べて餡子を吐いて死んだ。 ちなみに人間がそのお菓子を「カラムーチョ」と呼んでいることは、三匹には知る由もない。 「あ……れ、れいむ!あそこにこうえんさんがあるよ!あそこならいろんなゆっくりがいるから、むれにいれてもらえるかもしれないよ!」 「まりさ……これで、ゆっくりできるんだね……」 「おとーしゃん、しゅごーい!」 三匹は、公園を見つけた。 公園には必ずゆっくりがいるというわけでもないので、この三匹が間違いなく救われたというわけでもないのだが、幸か不幸かこの公園にはゆっくりがいた。 「ちょっと、そこのありす!このむれのおさはどこ!?」 まりさは公園に入り、草むらにいたありすに声をかけた。 ゆっくりがいたからといって群れがあるとは限らないのだが、元飼いゆっくりのまりさはそこまで考えていなかった。 うまいぐあいにまりさの思い通りに事が運んでいるが、本人はそれに気づくこともない。 これが最後の幸運だというのに。 「……おさは、あそこよ。あのおおきなきのしたでくらしてるわ」 「ありがとう、ありす!これからよろしくね!」 「……ええ、これから――よろしく」 ありすに挨拶を済ませたまりさたちは、何かを含んだありすの言葉を聞くや聞かずや木の下に向かった。 長がいると言われた木は近くで観ると余計に大きく、まりさの体の2倍ほどの直径があった。 「お、おさー!あの……ここのむれにいれてほしいんだけど」 「あらぁ、だいかんげいよ」 中から出てきた長は――ゆかりだった。 とてもゆっくりには似合わないはずの綺麗な扇子を手もないのに抱える様子は、野良ゆっくりという身分でありながらとても美しかった。 HENTAIお兄さんがこの場にいたなら確実に股間の白楼剣があすとろんしていただろう。 「このこうえんはすべてをうけいれるのよ。ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりしていってね!」」」 三匹は感激していた。 人間に見捨てられ、自然にも見捨てられ、全てに見捨てられた自分たちを受け入れてくれるこの群れに感動すら覚えていた。 かくして、三匹の野良生活が始まったのだった。 まりさ一家の野良生活、一日目の夜である。 「どおしてこれだけしかごはんさんないのおおおおお!?」 「ゆ……れいむ、まりさだってがんばったんだよ」 「おなきゃへっちゃよー!」 野良としてたくましく生きていく決心をしたまりさ一家は、嘆いていた。 季節は冬である。 もともと取れる餌は少なく、取ってきた餌はれいむは文句を言っているがついこの前まで飼いゆっくりだったまりさにしては多いほうだ。 周りのゆっくりたちに餌の取り方を教えてもらってはいたのだが、まりさは覚えが良い方ではなくあまり効果はなかった。 れいむも狩りに行けば餌は増えるだろうが、残念ながられいむは無能だった。 「しょうがないよ、ちょっとおとなりのぱちゅりーのいえにいって、ごはんさんをわけてもらってくるよ……」 「はやくしてね!」 「おなきゃすいちゃ……」 そうだ、今は一人じゃない。 周りにはたくさんのゆっくりがいて、助けあって生きて行けるのだ! まりさは希望に包まれながら、ぱちゅりーの家へと入った。 「ゆっくりしていってね、ぱちゅりー!」 「ごはんさんなら、あげられないわよ」 「まだなにもいってないでしょおおおお!?」 入った瞬間に断られた。 まりさの希望は陽炎でしかなく、ただの幻想だった。 結局まりさはぱちゅりーから何も貰えず、家に戻り、れいむに罵倒されて、家族ともども床に付いた。 そして、こんな生活が五日は続いた日だろうか。 よく晴れた昼下がり、子れいむは命の危機に瀕していた。 「お……おきゃーしゃん、おなきゃへっちゃ……」 「おちびちゃあああああん!」 「もっちょ……ゆっきゅり……したかっちゃ……」 「お……お……おちびちゃあああああん!!!!へんじしてえええええ!!」 燃費がアホみたいに悪い子ゆっくりである。たいして食えない日々が五日も続くとこうなるのは仕方ない。 れいむが狩りに行けばまた違ったかもしれないが、やっぱり、れいむは無能だった。 自分がサボっていたせいで自分の子が死んだことに気付こうともしない。 「ゆわあああああん!おちびちゃんが、おちびちゃんがあああああ!!」 「どぼじでえええええええええ!!!」 「お!へっへっへ、ゆっくりみっけー!」 「おそらをとんでるみたい!」 周り近所の迷惑になることも何も考えず、人間に見つかることも考えず、ただただ力まかせ喉まかせに叫んでいた結果がこれである。 世界で最も残酷な存在、小学生グループに、れいむは見つかった。 「よーし、ドラゴンクラーッシュ!」 「ゆびいいいいいい!!」 「熱血パーンチ!」 「いぢゃいいいいいいいい!!」 今しがた自分の子供を失ったれいむは、悲しむヒマもなく痛みを与えられる。 れいむはサッカーボールの代わりにされていた。 子供たちは思い思いににれいむを蹴ったり殴ったり。 アニメの必殺技を叫ぶ子供たちの無邪気な声とれいむの叫び声のミスマッチさが、見事なハーモニーを奏でていた。 「決めるぜ……ファイアトルネェェーード!」 「ゆびゃあああああああああああ!!」 れいむは悲鳴と共に砕け散った。 あたりに餡子が飛び散り、風にゆられていたブランコが黒く染まった。 公園にいるゆっくりたちは死臭を感じ取っているだろう。 しかし騒がない。 自分もああなってしまうから。 一方まりさはというと―― 「…………!」 あまりの惨劇に、気を失っていた。 「ふぅ、遊んだ遊んだー。じゃあ帰るか」 「そうだな、また明日なー!」 子供たちは餡子を吹いて気絶しているまりさの存在に気づかず、それぞれの家へと帰っていった。 「ゆ……あれ、まりさは……ねちゃってたの?」 まりさは日々の疲れもあり、深夜になってやっと眼を覚ました。 「れいむー?おちびちゃーん?どこー?」 あまりのショックで、昼間にあったことを忘れているらしい。 まわりに呼びかけるまりさ。 その声に答えたのは―― 「お前か、まりさ」 「ゆゆっ……にんげんさん、こんにちわ」 「よっせ……と」 「おそらをとんでるみたい!」 人間だった。 「ゆ?にんげんさん、まりさをどこにつれていくの?」 「とっても気持ちいいところだよ……ふふっ」 「で、でも……まりさにはれいむとおちびちゃんがいるんだよ」 「それなら安心するといい、そこに二人ともいるよ」 「じゃあいいよ!ゆっふ~、はやくあいたいよぉ~」 男は不敵な笑みを浮かべながら、まりさを自分の家に連れ帰った。 もちろんれいむも子れいむも、男の家にはいない。 ここで時間は、まりさが目を覚ます少し前に戻る。 「ようゆかり、いらないゆっくりはいるかい?」 「……おにいさん、そのいいかたはやめてっていったはずよ」 「おうおう、ごめんごめん」 男は長であるゆかりの所に来ていた。 『いらないゆっくり』と言ったその男は、近くに住んでいる――HENTAIお兄さんである。 昔のことだ。 1年ほど前、このHENTAIお兄さんがゆかりの群れにきて、ある一匹のまりさを犯していた。性的な意味で。 当時すでに長を務めていたゆかりは、その光景を見て言った。 『おにいさんのきんじょのひとに、おにいさんがHENTAIだってこといいふらすわよ!』 HENTAIお兄さんは言った。 『加工所に連絡して、一斉駆除してもらうぞ!』 それと一回やらせてください、と付け足して土下座したお兄さんとゆかりは朝になるまで交渉をした。 そして協定が成立した。 『この公園で暮らしていけなそうなゆっくりを差し出す代わりに、一斉駆除はしない』と、二人は約束した。 それから1年、その協定は今も続いている。 「悪かったよ、言い直す。で、無理そうな奴はいるかい?」 「……ここから4つめのきのしたに、もとかいゆっくりのまりさがすんでるわ」 「やっほい!やったね、やっぱまりさだよなー、締りが違うよ。ところで『やっぱまりさだよなー』と『おっぱまりさだよなー』って似てね?」 「いえ、ぜんぜん」 お兄さんはそう言い残し、スキップでまりさの家に向かった。 残されたゆかりは今日も考える。 理由があるとはいえ、仲間を売っている自分はゲスかもしれないと。 しかし仕方がない。 実際、稀少種であるゆかりの力を使えばまりさ一家を食わせていくことはできなくはないが、残念ながらそこまでする義理はさすがにない。 過去にそうした事例もあるが、増長してまったく狩りをしなくなったり、他のゆっくりから不満が出たり、問題が出ただけに終わった。 もっと言えば、スキマを使ってどこか別の場所に群れ全員で移動するという手段もあるのだが、それをすることはない。 ゆかりは、全てわかっている。 この世に、この数のゆっくりが幸せに生きられる場所など存在しないのだということを。 今はHENTAIお兄さんだけだが、もし近くに虐待鬼意山が引っ越してきたなら、交渉も抵抗も関係なく少なくともゆかり以外のゆっくりは全滅するということを。 そしてゆかり以外の群れのゆっくりたちも、皆わかっている。 だからまりさにあんなふうに接したのだ。 この公園に限らず、野良で生きていけるゆっくりなどほんの一握りだということを理解しながら生きている。 残酷な現実を、全てわかった上で、今日もゆかりは長を務める。 こんな深夜だというのに、また新しい仕事がやってきたようだ。 「あ、あのー……ゆかりがこのむれのおさなんだねー、わかるよー。ちぇんをむれにいれてほしいんだよー……」 「えぇ、だいかんげいよ」 このこうえんはすべてをうけいれるのよ それはそれはざんこくなはなしですわ―― 今まで書いたもの anko2337 ゆうゆう白書 anko2343 ゆうゆう白書 2 anko2351 ゆっくりの考え anko2437 不運なやつら anko2596 趣味は登山です anko2669 自分勝手 anko2852 人間がゆっくりになる話 1 anko2861 人間がゆっくりになる話 終正版
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このお話しは ふたば系ゆっくりいじめ 53 そんなに我侭いうなら自分で生きてね! ふたば系ゆっくりいじめ 90 私は鬼にはなりきれないのだ ふたば系ゆっくりいじめ 190 子まりさはゆっくりできない ふたば系ゆっくりいじめ 194 おいまりさ、涙の味はおいしいか? の4作品と繋がっています 父まりさは悩んでいた。 一家の大黒柱として、悩まない日は一日としてなかったが、今までは家族への愛情ゆえになんとか耐えてきた。 だが、今回ばかりは耐え難い悩みが父まりさを襲っていた。 父まりさを悩ませるものは一つや二つではない。 その一つは、家族の食糧問題だ。 父まりさがおうちを提供してもらって庭に住まわせてもらっている人間から配給されるご飯の量は、 家族が生きていくには足りなすぎる。 元々、父まりさと、母れいむと、今は居ない子まりさ、姉まりさのそれぞれの分しかご飯は貰えない取り決めだった。 だが、父まりさと母れいむはつい、すっきりー!して子供をさらに作ってしまい、新たに4匹の赤ゆっくりが追加された。 それに対する人間の食料配給は、増やしてはもらえなかった。 仕方なく、姉まりさと両親の配分からさらに少しずつを分けて、赤ゆっくり達に食べさせる事にしたが、やはり足りない。 母れいむは自分の餡子を吐いてそれを赤ゆっくりに与えるという献身までしてどうにか子らの命をつないで居たが、 そんなギリギリの生活がいつまでも続くはずもない。 ついにというべきか、姉まりさは自分の食べられるはずのご飯が妹たちに分け与えられるのと、 今まで愛情を独占できていた自分が、親が赤ゆっくりを優先しだした事による不満で騒動を起こし、妹の一匹を殺してしまった。 姉まりさは家を追放され、後に妹らを襲って両親に攻撃されて命を落とす。 だが問題は、それだけでは済まなかった。 姉まりさはしばらくの間、人間におうちを提供されてご飯も与えられ、庭の片隅で生活していたのだが 一家は子まりさが抜けた分、ご飯の配給量が少なくなってしまったのだ。 当然、3匹になったとはいえ赤ゆっくりへの配分は両親の分から分けなければならない。 そのためしばらくは困窮が続いた。 両親は時折庭の草花を食べて、不足分を補う事もあった。 だがそれは、庭の持ち主である人間には許可を得てない行為である。 見つかれば、咎められ制裁を受けるかもしれないと怯えながらの行動でもあった。 そのうち、赤ゆっくりたちは子ゆっくりに成長した。 そこでまた、事件が起こる。 3匹の子ゆっくりのうち1匹の子まりさ、妹まりさが人間に反抗的な行動をし、制裁されたのである。 幸い命までは取られずに住んだ。 が、結局その子もおうちから追放しなければならなかった。 今回はどちらかというと、人間に強要されて処分を下した感の方が強かった。 今、妹まりさは生前の姉まりさが住まわされていたおうちで単独生活を送っている。 接近禁止を言い渡された父まりさと母まりさは、遠くから妹まりさが毎日苦い草を食んで飢えを凌いでいる姿を見て涙を流している。 だが、助けるのも禁止されているし、何より家族には食料の余裕などもないため助けてあげる事は出来ない。 それに、子が一匹減ったという事で食料配分が少し楽になったというのも事実だった。 両親の分から子れいむ二匹への分を分けてやるのは、さほど難しい事ではない。 父まりさと母まりさがそれぞれ、ほんの少し我慢すればいいだけの話だ。 そして、子れいむ姉妹は大分聞き分けがよく、今までのまりさの子よりは我慢強い所もあった。 ここで、父まりさに冒頭の悩みが持ち上がる。 それは、人間に持ちかけられた取引が発端だった。 「むーしゃむーしゃ! しあわしぇー!」 「ちあわせ~♪」 「ゆうう、よかったよ! これでちびちゃんたちがおなか空かないですむね!」 「ゆう…そうだね…」 何時もより割合多めに配分された粒状のゆっくりフードのご飯を幸せそうに食べる子れいむたちを見て、 母れいむは何日かぶりに安堵の笑顔を浮かべた。 子供らが飢えずにすむのはとてもゆっくりできる事だ。 それは愛情深い母れいむには、なによりのゆっくりだった。 だが、父まりさは少々浮かない顔だった。 おうちの隅の方をチラチラと見て、気にしている。 その視線の先には、薄汚れたブサイクな子ゆっくり、キモまりさがいた。 キモまりさは、人間が養子として寄越した子ゆっくりであり、父まりさと母まりさの子ではない。 当初、父まりさはこの養子押し付けを相当に嫌がった。 誰が自分の子でもない子ゆっくりを育てたいものか。 親が居ないかわいそうな孤児だから面倒を見ろといってもお断りだろう。 特に、野良出身の父まりさと母れいむには、そんな慈善活動をするなんて発想はない。 だいたい、ただでさえ家族はご飯が足りないのだ。 余計な食い扶持を増やす余裕はないのである。 しかし、それに関しては父まりさは随分と下手に、そして婉曲かつ機嫌をうかがうような言い回しで人間に告げた。 元々、配給量は決まってるのに勝手に子供を増やして困窮しているのは父まりさと母れいむの自業自得だし、 住む所とご飯を貰っている立場では強く出られない。 元はといえば、人間の家に不法侵入しようとして制裁され、怪我を負って、お情けで庭に住まわせてもらっている家族なのである。 だが、人間は代わりにキモまりさの分のご飯を配給に加える事を条件に出した。 これには、父まりさも母まりさも飛びついた。 配給されるご飯が増えれば、多少なりとも困窮状態が幾分か楽になるからだ。 なあに、養子でしかも汚いキモまりさのご飯は取り上げて、それを自分らの子らに与えればいい。 両親ともそう考え、そして実際にそうした。 ご飯の量が増えて家族が幸せそうにゆっくりご飯を食べている間、キモまりさは俯いて床に涙をポロポロと零したのだった。 「ゆぅ… ごはん… ゆぅぅ…」 「よそのこにあげるごはんはないよ! れいむたちがごはんたべるのをそこでみててね!」 キモまりさは自分の分のはずのご飯を取り上げられ、どんなに泣いて訴えても養父母がご飯をくれないので 悲しくて一人孤独にすすり泣いていた。 元々孤児で、優しくしてくれる誰かも愛してくれる誰かもいない。 たった一人きり、公園で暮らしてきたのだ。 意地悪される事も一度や二度ではない。 毎日がゆっくりできない事の連続だった。 だが、こんな風に目の前で他の誰かが、家族とご飯があって、幸せにゆっくりできていて、自分はそうではないというのを 見せ付けられる心の痛みにはいつまで経ってもなれる事は出来ない。 どうして自分が不幸なのか、どうして自分だけが孤独なのか、そればかりを自問する。 そんなキモまりさを、父まりさは何故だかとてもゆっくりできない思いを抱きながら、時折視線を向けていた。 家族はゆっくり出来ている。 子れいむたちはご飯が食べられる。 何も心配する事はないのに、久しぶりにご飯がゆっくりできるのに、理由のわからないモヤモヤが父まりさを悩ませていた。 「おかあしゃん…さむいよ…さみしいよ……」 星達も凍えるような寒空の下、子まりさはゴミ捨て場にいた。 ゴミ捨て場には食べ物が、わずかだけれどもあった。 毎日汚いゴミの山の中に潜り、食べられるものを探して飢えを凌いだ。 だが、夜になれば凍て付く寒さが子まりさを刺した。 生まれたときから孤児だった子まりさは、もし居たらこんな時に暖めて守ってくれるだろう、母親の存在を求めて泣いた。 「おかーしゃん…みつけた…! ゆっくち! ゆっくち…! まりしゃだよ! いっしょにゆっくちしようにぇ! おかーしゃん!」 ゴミ捨て場に投げ捨てられた大きな黒いビニールのゴミ袋。 今時、透明でない中身の見えないゴミ袋で捨てる非常識な人間がいなかったら、子まりさはそれに出会わなかっただろう。 自分の黒いお帽子と同じ色をしていて、大きくて、まんまるで… 子まりさはそれを、自分の求めていた母親なのだと思った。 そしてゴミ袋に縋りついて、頬をすーりすーりと擦った。 「どおしちぇ…お返事してくれにゃいの…? おかーしゃん…? まりしゃだよ…? おかーしゃんのこどものまりしゃだよ…! おかーしゃ…」 大きなゴミ袋は何も応えなかった。 声を掛けてくれることもなかったし、ご飯を与えてくれる事もなかった。 ほお擦りしても、ガサガサという音を立てるだけだった。 ただ、そこに聳え立っていた。 それでも良かった。 大きなゴミ袋に寄り添っていれば、夜でも幾らかは寒さから庇ってくれた。 温もりを与えてくれるだけで、子まりさはほんの少しゆっくりできた。 「ゆぁぁぁぁぁん! おかーしゃん! おかーしゃん! おかーしゃんをつれてゆかにゃいでぇぇぇぇぇ! まりしゃのおかーしゃんにゃのぉぉぉぉ!」 ゴミ捨て場に回収車がやってきて、積まれたゴミ袋を投げ入れ始めた。 黒いゴミ袋は回収する事が出来ない決まりになっていたので、清掃員の人間は一旦持ち上げてしかめっ面をしたあと、また元の場所に投げ捨てた。 だがそんな事は知らない子まりさは母親が連れて行かれると思って泣き叫ぶ。 その声は、回収車のアイドリングの騒音に掻き消されて清掃員には聞こえなかった。 子まりさは、ゴミ袋の下に押しつぶされた。 「ゆっ… ゆっ… おきゃあしゃ… はっとして父まりさは目を覚ました。 側に寄り添っているのは母れいむで、間には子れいむたちが擦り寄ってゆぴーゆぴーと寝息を立てていた。 ここはおうちの中だった。 ゴミ捨て場ではない。 夢…か、と気付いて、今まで見ていたのが自分の子ゆっくり時代の記憶であると思い出した。 寒くはない。 ダンボールのおうちは冷え込む日でなければ最低限快適だし、はっぱのお布団も敷いてある。 隣にはいつも家族の誰かがいて、温もりを感じる。 寂しかった孤児時代とは違うのだ。 今の自分は、一人きりではない。 ほっとして一息つくと、視界の中にキモまりさが入った。 おうちの隅のほうに蹲って、寒そうに震えている。 寄り添う誰かもいないので、暖めてくれる事もない。 ふん、と鼻を鳴らして、父まりさはもう一度眠りに就こうとした。 「………」 「おかーしゃ… まりしゃだよ…」 呟きに目を開けると、声の元はキモまりさの寝言だった。 何の夢を見ながら眠っているのか知らないが、キモまりさの顔を伝う涙は、ゆっくりできる夢を見れているとは思えない。 父まりさは、先ほどの夢を思い出した。 孤児で、ずっと野良として生きてきた自分のゆん生も。 キモまりさも、孤児だ。 母親の温もりなんか、知らないに違いない。 ずっと一人で生きてきたんだろう。 おそらくこれからも。 毎日見つかるか見つからないかわからないご飯を探し、何日も飢えて過ごし、 そして夜に寒くて寂しくても暖めてくれる誰かも居ない。 父まりさもそうだった。 父まりさはそっと寝床を離れると、おうちの隅に這って行った。 眠っているキモまりさをそっと小突く。 「ゆぅ… ゆっ?」 「おいで…いっしょにねていいよ」 目を覚ましたキモまりさを自分らの寝床に招き、自分の隣に座らせる。 何を思ってそうしたのか、どうしてそんな事をしたのか、父まりさには理由がわからない。 だが、自分の左となりに我が子らと妻を、右となりにキモまりさを寄り添わせて眠るのは、何故だかとても暖かかった。 そして少しだけ、悩ませていたモヤモヤが晴れたような気がした。 翌朝、母れいむは父まりさの申し出に眼を丸くして驚いた。 その日も父まりさは人間に土下座して餌を与えられ、地面から拾い集めておうちの中へと持ち運んだ。 だがその配分を、キモまりさにも分け与えると言いはじめたのだ。 「まりさ! よそのこなんかにごはんあげたら、ちびちゃんたちのぶんがすくなくなるでしょお!? れいむはそんなことしたくないよ! はんたいだよ! せっかくちびちゃんたちがおなかすかなくなってゆっくりできるのに!」 「わかってるよ…ちびちゃんたちのごはんはへらすつもりはないよ! まりさのたべるぶんからさらに分けて、あのこにあげるんだよ! それならもんくないでしょ?」 「そんなことしたら、まりさのたべるごはんがもっとすくなくなっちゃうでしょおおおお!? ばがなの!? うえじにしたいの!? どおじでそんなごどするのおおおおお!?」 現在の家族のご飯の配分は、本来キモまりさへの分のご飯(子ゆ1匹分)を子れいむ2匹に等分した上で、 さらに父まりさと母れいむの分から子れいむに分けて、子ら2匹分の量を確保するという計算になっている。 だが、父まりさはその上で、キモまりさに自分の分を分けると言うのである。 そんな事をすれば、父まりさの食べる分はいよいよ少なくなる。 母れいむには理解しがたかった。 「まりさはもうきめたんだよ! あのこはこじで、おかーさんがいないんだよ! まりさもちいさいころは、おかーさんがいなかったよ! あのこがさびしくしてると、ゆっくりできないでいると、 まりさはそれをゆるすことができないんだ! あんこのおくがモヤモヤして、ゆっくりできないよ! だから、まりさはおちびちゃんたちだけじゃなくて、あのこもまりさのちびちゃんみたいにゆっくりさせてあげることにしたよ!!」 それは、同情だったのかもしれない。 孤児という同じ境遇が、共感を呼んだのかもしれない。 幼少時代の自分の不幸と孤独をキモまりさにかさね合わせて、キモまりさに優しくしてあげる事で 埋められなかった自分の幼少時代の欠損を、埋め合わせしようとしているのかもしれない。 何にせよ、野良のゆっくりには珍しい事だった。 赤の他人を気遣うなんて発想は、余程恵まれている環境に居るゆっくりでもなければ、滅多にない事なのだから。 結局、母れいむは折れた。 というより、説得しても無駄だと諦めたのだ。 父れいむの頑固な所はよく知っていたし、子供らへの配分は減らないのだ。 どうせ、自分の分が減ってお腹が空くのに耐えられなくなれば発言を翻してキモまりさの面倒を見ることを投げ出すだろう、とも思った。 数日がたった。 子れいむ姉妹のうち、姉れいむは不満だった。 耐水性ダンボールのおうちの中で姉妹と共に生まれ育ち、つい子の間まで両親どちらにも愛情を注がれていた。 母れいむは毎日素敵なおうたを歌ってくれたし、父まりさはお外に連れ出して帽子の上に乗せてお散歩してくれた。 姉れいむはどちらかと言えばお父さんっ子で、父まりさの方にくっ付いてよく遊んだ。 妹まりさと父まりさのお腹の上で地震ごっこをしてもらうのが特にお気に入りだった。 だが、最近になって父まりさは妹まりさを追い出し、家族に知らない他所の子まりさを入れた。 子まりさのためにわざわざご飯を用意し、子まりさを隣に座らせて眠り、子まりさに優しく頬すりをし、子まりさも一緒に遊びに連れ出した。 姉れいむのさらに下の、妹れいむはそんなに気にしてないようで、他所の子まりさとも仲良く打ち解けているようだが あの薄汚くてブサイクな子まりさを、姉れいむはなんとなく好きになれなかった。 なんだか、自分たち「父まりさと母れいむの子」だけで独占できていた両親の愛情を、他所の子に横取りされたような気分になったのだ。 父まりさがお帽子に自分たちと、他所の子を並べて乗せているのは嫌だった。 子まりさは下ろしてくれればいいのに、といつも思った。 お腹の上で地震ごっこを、子まりさも交えてやってくれるのは嫌だった。 だから、自分は頼んで別々にやってもらった。 草の上を這っているかたつむりを見つけて観察している時も、父・妹・他所の子の三匹の輪に入りたくなかった。 なので1匹でちょうちょさんを追いかけていた。 それがとても、つまらなく感じた。 なんだか説明の付かないモヤモヤが姉れいむを襲った。 そしてそんな時、妹まりさが居てくれれば、と思った。 あの汚い変な子じゃなくて、仲の良かった妹まりさがいてくれればいいのに。 妹まりさとは、近づかないように両親にも人間にも言い含められている。 近づいたら、お仕置きをされるのだ。 どうして妹まりさが家を追い出される事にならなきゃいけないのか、姉れいむは理解できなかった。 悪い事をしたからだ、と説明されたが、何が悪いことなのか姉れいむはよくわからなかった。 だから、時々家族の目を盗んで妹まりさに会いに行った。 手土産にこっそり食べずに隠していたご飯の何粒かを持って。 「まりさ! ゆっくりあそびにきたよ!」 「ゆっ!? れいむ、あいたかったよ! ゆっくりしていってね!」 「ゆぅ…うらやましいよ… まりさもおとーさんにあそんでもらいたいよ… おとーさんにあいたいよ…!」 姉れいむの話を聞いた妹まりさは心底寂しげな表情をした。 両親と引き離されてもう何日になるだろう。 近づいたら人間にゆっくりできなくさせられると脅されているので、家族の遊ぶ様子や、歌う様子を遠くから眺めるばかりだ。 家族に嫌われているわけではない、時々心配そうにこちらの様子を遠くから窺っている両親の姿を目にすることも、拍車をかけた。 自分の行動が招いた事とはいえ、逢いたいのに逢えない切なさは日ごとに妹まりさの身を切り刻み、ゆっくりできなくさせる。 おうちの中には自分で集めた小石や木の棒、大きな葉っぱ、何処からか飛んできた綿毛、姉れいむがお土産に持ってきた紙くず、 それに黒いお帽子といった宝物が並べられて、それなりに独身生活に適応しているようだったが、やはりまだ子ゆっくりの身では家族の愛に飢えている。 ひとり立ちするには早すぎるのだ。 それに、妹まりさも元々かなりのお父さんっ子である。 父親の愛情が他所の子に注がれていると聞かされて、張り裂ける思いがした。 「れいむも、まりさといっしょがいいよ… またいっしょにあそびたいよ!」 「ゆう…でも、まりさはもうにどと、あのおうちにはもどれないよ…にんげんさんがゆるしてくれないよ…」 それはかなわぬ夢である。 強くて恐ろしくて厳しい、庭の主である人間の決定には逆らえない。 妹まりさはつい先日、その怖さを自分でもって思い知っている。 そこで姉れいむは、無い餡子脳を絞って一計を案じた。 「ゆー… ゆっ! いいかんがえがあるよ! まりさと、あのよそのこをおとりかえずるんだよ!」 「ゆっ…? どうやって!?」 姉れいむはひーそひーそと耳打ちして妹まりさに自分の計画を伝えた。 それは一見、上手く行きそうな内容に思えた。 そして姉妹は顔を見合わせ、頷きあい、にっこり笑いあうとゆーっ!と体をちぢこませて「溜め」を作り 次の瞬間ばねのように弾んでその場で同時にジャンプして叫んだ。 「「ゆっくりしていってね!!」」 ゴチンゴチン! おうちの中で思いっきりジャンプした二匹は、仲良く天井に頭を打ち付けて、そのまま落ちてきて目を回したのだった。 「まりさ、いっしょにあそぼうよ!」 「ゆっ…?」 そう言って姉れいむがキモまりさを連れ出したのは次の日のことだ。 いつもどこか自分に対して余所余所しい姉れいむが自分に声を掛け、誘ってくれたのでキモまりさは嬉しく思った。 父まりさに、そして妹れいむには既に仲良くしてもらっている。 家族にだんだん受け入れられている気がする、とキモまりさは思った。 今までは孤児で、寂しく生きてきたけど、最初は少し意地悪もされたけど、こうして少しずつ打ち解けられていけば、 そのうち本当の家族に迎え入れてくれるかもしれない、と期待し始めていた。 父まりさの方を見ると、末のれいむと一緒にお昼寝をしていた。 キモまりさの分のご飯を分けるために最近は食事量が少なく、その上子供たちと一緒に遊んでいるために父まりさも疲労が溜まっている。 キモまりさも父まりさのそんな気遣いを感じ取っているので、お昼寝をさせてあげて、自分と姉れいむとで遊ぶ事にした。 「ゆっ、ゆっ! れーみゅ、どこまでいくの?」 「こっちだよ! こっちについてきてね!」 姉れいむはそうやってキモまりさを父まりさたちから遠くへ、庭の隅のほうへ、と招き寄せる。 キモまりさは疑いもせずに付いて行った。 ただ少し、姉れいむが跳ねるのが早いな、と思った。 気付けば、おうちから大分離れてしまっている。 庭の草も少々背の高い、子ゆっくりにとってはちょっとした茂みの様な場所に入っていた。 キモまりさは少し心配になり始め、前を行く姉れいむの後姿に呼びかける。 「ゆ…れーみゅ、あんまりとおくにいっちゃら、みんにゃしんぱいするよ?」 「だいじょうぶだよ! こっちには、れいむのおねーちゃんがいるからね!」 姉れいむがキモまりさの方を振りかえってニッコリわらった次の瞬間、茂みの中から黒い何かが飛び出して、キモまりさを突き飛ばした。 「おねーちゃ…? ゆーっ!?」 突き飛ばされ転がされたキモまりさは唐突な事に何が起こったのかわからず、目を回す。 気が付いて起き上がったときには、自分の頭の上に大事なお帽子がないことに気が付いた。 「ゆっ…まりしゃのおぼうち…! おぼうち…! ゆゆっ!?」 「やったねまりさ! うまくいったね!」 「ゆふん! これでまりさはまた、おとーさんのこだよ!」 お帽子を探して辺りを見回すキモまりさが目にしたのは、自分のお帽子を被っている見知らぬ子まりさと、 それを喜んでいる姉れいむの姿だった。 キモまりさは、自分のお帽子を奪われたのだ、姉れいむに騙されたのだ、という事を理解した。 「まりしゃのおぼうちぃぃぃぃ! かえしちぇよぉぉぉぉ! どおしちぇこんにゃことしゅるのぉぉぉぉ!?」 「ゆー! かえさないよ! このおぼうしで、まりさはおうちにもどるんだよ! そしたらまた、おとーさんとおかーさんとゆっくりできるよ!」 「おぼうしのない、しらないこはゆっくりできないね! ちかづかないでね! いーきみだよ! れいむたちのおとーさんをとろうとするからだよ! このどろぼーねこ!!」 泣きながら猛然と抗議し、跳ねて向かってゆくキモまりさだったが、二匹に阻まれて取り返すことは適わない。 逆に、体当たりを受けて転がされ、痛みと帽子を盗まれた悲しみに泣き喚くしかできなかった。 そんなキモまりさを、姉れいむと妹まりさはニヤニヤしながら眺める。 「ゆぇぇぇぇぇん! まりしゃのおぼうち…! おぼうち…!」 「…うるさいよ れいむ、こいつどうしようか? おぼうしとったら、ようずみでしょ?」 「ゆーん、うざいからだまらせることにするよ! ゆんっ!」 「ゆぴぃぃぃぃぃっ!?」 夕暮れ、父まりさと末れいむが目を覚ます頃、姉れいむとキモまりさに成りすました妹まりさはおうちまで戻ってきた。 二匹とも心なしか、弾んだ表情をしている。 歌まで歌って、上機嫌だった。 「ゆっゆっゆ~♪」 「ゆーっくりして~いってね~♪」 「ゆっ! おちびちゃんたち! どこいってたの!? もうすぐよるだからゆっくりおうちにかえろう…ね… ゆゆ…?」 こちらへ跳ねてくる二匹を見つけた父まりさは、まだウトウト目の末れいむをお帽子の上に乗せて声を掛けた。 が、言葉の語尾が疑問系に変わる。 そんな父まりさの様子を気に留めもせず、姉れいむは上機嫌で応えた。 キモまりさになりきっている妹まりさもにこやかに言葉を合わせる。 「ゆっ! まりさとゆっくりあそんでたよ! おとーさん、くらくなるまえにおうちにかえろうね!」 「ゆっ、たのしかったよ! はやくおかーさんのおうちにかえろうね!」 父まりさの片眉が釣りあがる。 何となく、目の前の二匹のちびちゃんだちに、違和感を感じたのだ。 それが何なのか、父まりさにはよく解らない。 だが、どうにもゆっくりできない気がする。 気になって、父まりさは二匹の子ゆっくりをまじまじと見つめた。 「ゆ…? おとーさん、どうしたの? れいむのかおになにか付いてる?」 冷や汗を流しながら、れいむは父の顔を見返す。 ゆっくりはお帽子やリボンで個体認識をしている。 それを取り替えれば、家族でも個体の見分けが付かなくなる。 れいむをまりさ、まりさをれいむと思う事だって簡単に起こる。 お帽子やリボンの無い子がいたら、もっと大変だ。 親子同士でさえ相手が誰なのか判らない上に、お飾りが無いのはゆっくりできないと言って、攻撃される。 でも大丈夫、妹まりさはちゃんとキモまりさから奪ったお帽子を付けている。 父まりさは妹まりさをキモまりさだと思うはずだ。 そうすれば、妹まりさはまた家族としておうちの中に入れてもらえる… が、しかし 「ゆ…? ゆゆ…? ゆゆゆっ!?」 父まりさの、子を思う愛情と絆は 「なんで…どおして… どういうごどなのお!?」 並大抵のものではなかったようだ。 「どおじでまりさのちびちゃんが、あのこのおぼうしかぶってるのおおおおおお!? というか、あのごはどごいっだのおおおおおお!?」 「ゆゆゆっ!? ま、まりさはまりさじゃないよ!! まりさだよ!!」 「そうだよ、おとーさん! まりさはまりさじゃないよ! おぼうしをおとりかえなんか、してないよ!?」 「うそつくなあああああ!! おとーさんは、じぶんのちびちゃんのみわけがつかないような、ふしあなさんじゃないよ! おぼうしがなかったり、とりかえっこしてても、ちゃんとじぶんのちびちゃんがだれなのかぐらいわかるよ!! みそこなわないでね!! ぷんぷん!!」 早くも擬装を見破られてしまった姉れいむと妹まりさは目をまん丸に見開いて驚愕し、うろたえた。 ゆっくりの中には、ごく近しい間柄ならば帽子が無かったり、交換しててもちゃんと個体認識ができる場合もある。 父まりさの場合、それに該当するようだった。 全く計算違いの事態に、姉れいむと妹まりさは計画が崩れ去ってしまい、右往左往する。 「ゆうううううう!? どうするの、どうしゅるのれいみゅううううう!! おとーしゃんにばれちゃったよおおおおお!!」 「わがんないよおおおおお!! どおじでおどーざんはまりさのごどわがるのおおおおお!?」 その時、外の騒ぎを聞きつけて母れいむもやって来た。 「ゆっゆっ! どうしたの、まりさ!? おちびちゃんたち!? ゆ……? ゆわあああああああ!? どおじでれいむのおちびちゃんが、まりさがここにいるのおおおお!? なんであのきたないこのおぼうじなんかかぶっでるのおおおおおおおお!? なんなのごれはああああ!!」 母れいむも、お帽子に関係なく子供の識別が出来るようだ。 姉れいむと妹まりさは口をあんぐり開けて硬直し、父まりさは憤慨し、母れいむは驚愕のあまりパニックを起こし始め、 末のれいむは父まりさのお帽子の上で「ゆ~ん、もうたべられにゃいよ」とまどろんでいる。 「…おい、何の騒ぎだ?」 後方頭上から掛けられた声に父まりさが振り返り、見上げると人間さんが腕組みをしてゆっくり一家を見下ろしていた。 「ゆぇぇぇぇぇん! こわかっちゃよぉぉぉぉぉ!!」 数分後、キモまりさは無事に閉じ込められていた妹まりさのおうちから救出され、すぐさま父まりさのお腹にポスンと飛び込んだ。 父まりさは、キモまりさにもう大丈夫だよ、と優しく声を掛ける。 「ゆっ! しょーだ、まりしゃのおぼうち! おぼうち…!」 「ほら、お前のお帽子だ」 一安心してお帽子の事を思い出したキモまりさの頭に、人間がそっとお帽子を載せてやる。 数時間ぶりに大事なお帽子と再会したキモまりさは「ゆぇぇぇぇん!」と歓喜の涙を流した。 一方、母れいむの足元で並んでうなだれているのは今回の事件の主犯である、姉れいむと妹まりさ。 特に妹まりさは以前自分が起こした騒動の経験から、今度はどんな制裁が来るのかで恐ろしいのか ガクガクと震え、しーしーを軽く漏らしている。 はあ、とため息一つついて、人間はゆっくりの家族を見回した。 「…さて、だいたいの経緯は把握したが。 おい、子まりさ」 「ひゃいいいいいいい! ごべんなじゃい! ごべんなじゃい! まりしゃがわりゅがったでずぅぅぅぅ!! ゆるじでぐだじゃいぃぃぃ!! もうでごぴんどちくちくはいやでずぅぅぅぅ!!」 「別に今回は俺に刃向かったわけじゃないから、俺からの罰は無いぞ。 だが、一つ聞きたい事がある。 おまえ、両親に逢いたかったからこんな事をしたんだよな? この孤児まりさのお帽子を奪って成りすませば、おうちに入れると。 まあ、親まりさがこいつを気に入って可愛がってたからな…」 「しょうでずぅぅぅ!!」 「でも、お前…お前の母親は、孤児まりさを嫌ってたのは考えたか? 父親には、孤児まりさと認識されて可愛がってもらえるかもしれないけど、 母親には、お前はお前として認識されなければ、冷たくされるだけだと思うぞ? そういう事は考えなかったか?」 人間にそう指摘され、妹まりさと姉れいむは揃ってポカンとしてあっけに取られた表情をする。 完全に、考えの埒外だったようだ。 はあ、と人間はまたため息を付く。 計画した姉れいむも、聞いた妹まりさも、成りすましで父まりさには受け入れてもらえても母れいむにはそうでない、 というぐらいの事さえ思考が及ばなかったようだが、所詮はゆっくりの餡子脳、それも子ゆっくりの知恵だ。 そんなものと言えばそんな物かもしれない。 「大体、家には入れるようになるかもしれないが、成りすましで入れたんじゃあくまでも、成りすましだ。 おまえ自身として家族に迎え入れられるわけじゃない。 そこの所を……まあ言っても理解できないか」 「おにーさん! でもれいむは、ちびちゃんたちのことを、ちゃんとわかるよ! おぼうしとりかえても、まちがえたりしないよ!!」 人間は母れいむの主張はとりあえず手で制して、言葉を続けた。 「ああ、だからこの計画は最初から成功するはずが無かったんだろうよ。 成功しても、それは幸せとはいえない。 むしろ失敗して正解だったかもな。 あと、孤児まりさを、お前のおうちに閉じ込めておいても、俺は俺で毎日餌をやりに来るんだからそっちでバレるだろう。 だからその選択も失敗だ。 結果的には、孤児まりさが殺されてなくて良かったと言えるが」 「ほんとだよ…そうなってたらゆっくりできなくなってたよ…!」 父まりさはそう言って、姉れいむと妹まりさをキッと睨みつける。 二匹とも、父親の視線と表情から逃れるようにして顔を背けた。 代わりに母れいむが心配そうな顔を人間に向ける。 れいむの懸念は一つだった。 こんな事をしでかした子ゆっくりたちへの処分である。 「それで、あの…おにーさん…ちびちゃんたちは…」 「言っただろ、今回俺は何もされて無い。 だからお前らが決める事だ。 まあ、今までどおりってわけにも行かないだろう。 親まりさは、俺との取引どおり孤児まりさを預かっただけだ。 そして子ゆっくりどもがやったのは、家庭内不和。 どうするかはお前らが話し合って決めろ。 でも、だいたいわかってるよな? どうするのか」 「「ゆう…!」」 父まりさと母れいむは、同時にがっくりと首(?)を下ろした。 結局の所、この家族は分裂してしまった。 姉れいむは例によっておうちを追放され、妹まりさと一緒に生活する事に決まった。 妹は家族と再び住みたがっていたし、姉も仲良しの妹と一緒に居られて幸せだろう。 もちろん、ご飯の配給は無いので自分らで雑草を集めて食べるしかない。 本当は、妹れいむは家族との接触禁止を破ったのでその処分を下さなくてはならないのだが、 人間はあえて目を瞑って忘れたふりをした。 母れいむは、子らが二匹も自分らから引き離されて苦しい単独生活をさせられなければならなくなった原因を 父まりさと、キモまりさに求めたために、夫婦仲がこじれてしまい、離婚という事になった。 今は、親権を主張して勝ち取った末の子れいむと一緒に、人間から別のおうちを与えられて庭の離れた所に棲んでいる。 父まりさとの接触禁止は特に無いが、自分から近づきたいとは思っていない。 ご飯の配給は自分のだけなので、子と分け合っているようだ。 なお、末の子れいむは父まりさとキモまりさの元にちょくちょく通っている。 それを母れいむはあまりいい顔をしていないようだが… 父まりさとキモまりさは、元のおうちのまま2匹で仲良くやっている。 当初、全く予想が付かなかった事だが、父まりさが自分の子でも無い孤児に対して母性を表すという意外な結果になった。 情にほだされたのか。 孤児同士気の通じる所があったのか。 あるいは、まったく利己的な感情で、親の愛を受けられなかった自分の代替としてキモまりさに愛情を注いでいるのか。 それはわからない。 ただ、ご飯の配給は父まりさとキモまりさの分で、足りないという事も無い。 一番恵まれている組み合わせだろう。 そして、キモまりさは最近、父まりさの事を「おかーしゃん」と呼び始めたようだ。 父まりさもまんざらでも無いようで、これからは母まりさとでも改称した方がいいだろうか? しかし、この関係がいつまでも続くという保障もまた、無い。 ゆっくりの幸せや家族愛なんて、容易に壊れてしまうものだから。 挿絵:M1
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『涙』 22KB 虐待 妊娠 番い 野良ゆ 赤ゆ 子ゆ 都会 「お前、泣いてたか?」 「せかいをくずしたいならないたしずくをいかせ」 ================================================================================ アスファルトに咲く花のように、まりさは強く生きていた。 ビニール袋を咥え、意気揚々と路地裏を跳ねるまりさ。 お帽子のなかにも収穫の残飯は入っており、非常に重たそうだ。 「ゆっせ!ゆっせ!」ぽいん!ぽいん! しかし、まりさはその重さを感じさせること無く、軽快に跳ねている。 そこかしこに散らばるガラス片を上手く避け、 おうちへと着々と近づいていった。 まりさは、かりのめいゆんなのだ。 いっぱいいっぱいむーしゃむーしゃできるのだ。 薄汚いゴミクズ塗れの、この世界でただひとり、 ゆっくりを手に入れられる、さいっこうのゆっくりなのだ。 幼い頃から都会の荒波にもまれていたまりさは、 埃塗れの路地裏で、確かに、誇りを持って生きていた。 「ゆっくりかえったのぜ!!!ただいまなのぜ!!!」 ダンボールにブルーシートをかけた、 野良ゆっくりの憧れのおうちの前で、まりさは高らかに きたくっ宣言をした。まりさの大声を聞き、 おうちの中から成体のれいむと子まりさが勢いよく飛び出してくる。 「まりさ!ゆっくりおかえりなさい!!!」 「おかえりなさいなのじぇ!!!」 まりさに負けない大きさの声で、お返事をするまりさの家族達。 皆、とても健康そうな饅頭皮の色をしていた。 野良ゆっくりの食糧は常に需要過多である。 この地域もその例外ではなかった。 生粋の野良、捨てゆっくり、自然から都会に憧れてきた愚かなゆっくりたち。 無尽蔵ともいえるほど、需要は増えるが、供給は一向に変わらない。 ゆっくりに生産性など無いのだから。 もちろん敵はゆっくりだけではない。 ホームレス、カラス、市のゆっくり駆除課。 様々な障害が、まりさには立ちふさがっていた。 しかし、彼女のお帽子は、パンパンに膨れ上がっている。 子まりさに飢えている様子は無い。 野良ゆっくりには珍しく健康そのものである。 「おとうしゃん、まりちゃすーりすーりしてほしいのじぇ!!!」 目を潤ませて、おしりをぷりんぷりんと振りながら、 子まりさはすーりすーりを催促する。 本ゆんはかわいらしさアピールのつもりらしいが、 これではムカデが這い回る姿のほうがよっぽと愛嬌がある。 しかし、 「ゆっゆーん!おちびちゃんとーーーってもかわいいよぉぉ!!!!」 ふくよかな成体のれいむは、くねくねとダンスをしている我が子を褒めちぎった。 「もちろんいいのぜ!!!すーり!すーり!」 頬と頬を、ゆっくりと擦り合わせる。 もちもちの饅頭皮が、むにゅんっ!むにゅんっ!と波打つ。 その心地よい感触に、子まりさは目を細め、大声で叫ぶ。 「しゅーり!!!しゅーり!!!しあわしぇーなのじぇ!!!」 白玉の眼をキラキラと輝かせ、 子まりさはまりさにすーりすーりをねだり続ける。 まりさは思う。 この子は野良ゆっくりとは思えないほどのかわいらしさであると。 まりさ自身、この子は将来飼いゆっくりになれると思っていた。 父と子のすきんしっぷっ!を慈しむように眺めているれいむ。 彼女もまたゆっくりとしていた。 ゆっくりした感情は、れいむの餡子を駆け巡る。巡り巡る。 行き着く先は、彼女の胎内。 餡子の中に眠る、まだ見ぬ、ゆっくりとしたおちびちゃん達に れいむはゆっくりを届ける。精一杯しあわせーっ!を伝える。 おちびちゃん達は特別なゆっくりなんだよ、 せかいがおちびちゃんを愛しているんだよ、 毎日がしあわせーっ!でいっぱいなんだよ。 そう、まりさ一家は永遠に幸せだ。 家族の皆は疑いなくそう思っている。 和気藹々としたすきんしっぷを見てほっこりとしていた れいむであったが、空腹を感じ始めた。体が栄養を欲していた。 「ゆふふ・・・。みんなゆっくりしてるよぉぉぉ。 まりさ!おちびちゃんたち!ごはんさんの時間だよ!!!」 2匹とも、れいむの方を振り向く。 「ゆわーい!!!」 「きょうのごはんさんはなんなのじぇ!?」 「ゆふふ、なんだろうね!」 「まりしゃはおにぎりさんがたべたいのじぇ!」 「きょうもたいりょうっだったのぜ!! いっぱいいっぱい、むーしゃむーしゃするのぜ!!!」 ビニール袋を咥え、れいむの元へ近づくまりさ。 子まりさはまりさの後に続く。 れいむは、どこかで拾ってきた紙皿を、まりさの前に置く。 ビニール袋を逆さまにして、ぐちゃぐちゃに混ざった 狩りの収穫物を紙皿にぶちまける。 無造作に置かれた食べ物の臭いが周囲へ拡散する。 欲望に忠実なゆっくりだ。 滾る食欲を抑えることはできない。 彼女達は一斉に、目の前の残飯を貪った。 「むーしゃ!むーしゃ!むーしゃ!むーしゃ!」 「くーちゃ!くーちゃ!ぺーちゃ!ぺーちゃ!」 「はーひゅ!はーひゅ!もっちゃ!もっちゃ!」 「「「しししししあわせぇぇぇぇぇ!!!!!!!」」」 三匹の饅頭は、一斉に咆哮する。 食べかすをぶちまけ、涎をまき散らし、湧き上がる感情を放出する。 「むーちゃ!むーちゃ!このべーこんさんとってもおいしいのじぇ!」 「このぽんでさんもさいっこうだよぉぉぉぉ!!!!!」 「おちびちゃん!むーしゃ!むーしゃしながらしゃべるのはおぎょうぎがわるいのぜ!」 「ゆっくちりかいしたのじぇ!」 「まりさもおしゃべりしてたよ・・・」 「ぜぜ!?」 SMT(すーぱーむーしゃむーしゃたいむ)が進んでいく。 目の前に広がる残飯に顔を突っ込みながら、 家族と笑いあい、ゆっくりと過ごしながら。 山盛りのご飯さんを食べていく。 全員のお腹がぽっこりと膨れても、残飯の山は完全に消えることは無かった。 「じゃあ、まりさはしょくりょうこにごはんさんをもっていくのぜ!」 「ゆっくりわかったよ!!! おちびちゃん!すーぱーうんうんたいむのじかんだよ!!! ゆっくりおといれさんにいこうね!!!」 「ゆっくちわかったのじぇ!!!」 残った食料は、おうちの隣にある、ジャムの空き瓶のなかに詰め込む。 この他にも食糧を詰めた容器がおうちの周りに点在している。 まりさが残飯集めのプロであることは間違いないようだ。 れいむと子まりさが、うんうんをしているおといれへ まりさも向かう。 「まりちゃのきゃわいくてゆっくちしたうんうんをみてね!!!」 肉厚の顔面を歪ませて、下半身に力を入れる子まりさ。 れいむは我が子のうんうんをそっと見守っている。 下半身の穴がミチミチと広がって、固形の餡子がゆっくりと顔を出す。 ぷるぷるっ・・・。ぷるぷるっ・・・。もりゅん!!! 「うんうんさん、しゅっきりー!!!」 ぽっこりとしたにふさわしい、特大のうんうんをひりだす子まりさ。 ほかほかとしたその餡子は、ゆっくり出来ないにおいを拡散する。 「うんうんさんくちゃいのじぇ!」 うんうんから離れる子まりさ。あにゃるにこびり付いたうんうんが、 子まりさの這った道をなぞっていく。 「おかあさんが ぺーろぺーろしてあげるよ!!!ぺーろ!ぺーろ!」 子まりさのあにゃるを丹念に舐めあげる、れいむ。 くすぐったくも、心地よい感触に、子まりさは頬を赤く染める。 「ほら、きれいきれいさんだよ!!」 「おかあしゃん!ありがちょうなのじぇ!」 ゆっくりとしたうんうんの時間を終えた2匹。 まりさも手早くうんうんを済ませ、2匹をおうちへと進ませる。 「すーぱーすーやすーやたいむなのぜ。おうちにはいるのぜ。」 おうちの中には、一枚のバスタオルがある。 家族はこれに包まって、体を寄せ合って眠る。 家族全員が体を密着させて眠る。 バスタオルを掛けるや否や、子まりさは夢の世界に旅立った。 まりさとれいむは、すーりすーりをしながら、 生まれてくるおちびちゃんたちのことを話していた。 「もうすぐあかちゃんたちにあえるね!れいむたのしみだよ!!!」 「まりさもだぜ!!! でも、おちびがふえたらごはんさんがもっとひつようになるのぜ。」 まりさは、表情を曇らせる。 「そうだね!でも、まりさはかりのてんっさいだからだいじょうぶだよ!!!」 れいむは真っ直ぐまりさの目を見て、言った。 その迷いの無いれいむの瞳に、まりさは強く勇気付けられる。 れいむはいつもまりさを信じていた。 どんなに辛いときでもまりさの味方であった。 れいむのまりさへの信頼は、まりさをいつでも突き動かした。 「そうなのぜ!!!もっともっとたくさんごはんさんを狩ってくるよ!!!」 「そのちょうしだよ!!!れいむもおうえんするよ!!!」 「ゆへへへへ・・・」 れいむも寝息をたて始めた。 番の、子供の寝顔を見ながら、まりさはしんみりと感傷に浸る。 最初から狩りが得意なわけではなかった。 食べてはいけないものを食べて吐餡した数は数えきれない。 漁りやすいゴミステーションに遅れ、飢えて彷徨ったことも、 やっと手に入れた残飯を横取りされたことも嫌って程ある。 でも、まりさは根気強かった。 何時の日だって諦めなかった。 ライバル達が日を追うごとに消える中、 まりさの技は洗練されていった。 来る日も来る日も、残飯を漁った。 いつの間にか、お帽子がパンパンになっていた。 いつの間にか、ビニール袋が必要になっていた。 そして、いつの間にか隣でれいむが笑っていた。 がむしゃらに頑張ったまりさは、 饅頭の身にいっぱいのしあわせーっ!を享受していた。 ゆっくりした日々をこれからも生きていこう。 家族の皆といっぱいいっぱいゆっくりしよう。 己の半生を振り返り、そう改めて決意するまりさ。 様々な感情がごちゃごちゃに混ざる。 よくわからないけど体が震える。 彼女は感極まって涙を流していた。 ----------------------------------------------------------------------------- さて、ここで一つ簡単な確立の質問をしよう。 一匹のまりさが、しあわせーっな日々を送り、 たくさんのおちびちゃんたちに囲まれて逝く確立と、 たまたま、人気の無い薄汚い路地裏の奥に、 理不尽で、無慈悲な、人間が現れる確立の、 一体どちらが高いだろうか? ----------------------------------------------------------------------------- 「お前、泣いてたか?」 おうちを覆っていた、ブルーシートが無くなっていた。 代わりに見知らぬ男の顔面が、目と鼻の先にある。 突然の出来事に、硬直してしまうまりさ。 が、金色の髪の毛を引っ張られ、おうちから引きずり出されたとき、 自分がいかに危機的な状況に置かれているのか把握した。 「ゆわっぁぁぁ!!!!!!!!」 まりさのお下げを掴みながら、立ち上がる男。 ミチッミチと歪な音を立てて、千切れていくまりさのおさげ。 「いっぎぃぃぃぃぃ!!!!!」 胸の位置までまりさを持ち上げた男は、お下げから手を離す。 「おそらをとんでるみたいーっ!」 自由落下するまりさ。 本能に逆らえず、お決まりのフレーズをついつい言ってしまう。 浮遊感に気をとられたまりさが、次に恐怖するのは、 白玉の目に、 男の拳がめり込んだ後だった。 生首饅頭は宙を舞い、地面をゴロゴロと転がっていく。 長い髪の毛に、砂利や雑草を巻き込んで。 柔らかな饅頭皮に、石やガラスを食い込ませて。 数メートル先に転がったまりさは、ビクッ・・・ビクッ・・・と断続的に痙攣する。 「ゆぐ・・・ゆ゛・・・ゆ゛・・・」 口から泡を吹き、目がぐるぐると回っている。 「おいおい・・・ポックリ逝くにはまだはやいぜ・・・。」 指をポキポキと鳴らしながら、一歩一歩ゆっくりとまりさに近づく男。 舌なめずりをしながら、歩み寄るその姿は、ゆっくりでなくとも戦慄してしまう。 まりさは混乱していた。 自分は今、どこにいる。 自分は今、何をされた。 自分は今、何をすべきか。 必死に思考を巡らせようとするが、痛みがそれを許してくれない。 餡子色の景色しか見せない右目が、まりさの動きを鈍らせる。 どうする?どうする?どうする? 痙攣しながらも必死にこの状況を切り抜ける手段を探そうとするまりさ。 「この街で涙を見せるゆっくりは・・・」 涙・・・? 「俺様がじきじきに、ぶん殴ってやる。」 痙攣がようやく治まった。 残された左目で、男の方を見るまりさ。 男の拳は、固く握られていた。こんな状態で殴られたら、 間違いなく永遠にゆっくりしてしまう。 痛みに耐え、あんよをうねらせる。 「ゆっくり・・・ゆっくりぃぃ・・・」 だが、体はまだ、まりさの言うことを聞かない。 いくらあんよをうねらせても、まりさは立ち上がれなかった。 パキッ・・・。パキッ・・・。 まりさの焦燥を、一切気にかけることなく、男は近づいてくる。 その右手に、返り餡子を滴らせて。 「い゛ぃぃぃ!ゆっぎぃぃぃ!!!」 必死で足掻く。 あんよをうねらせ、おしりをぷりんぷりんと振り回し、 砂糖菓子の歯を立てて、おさげを支えにして。 出来ること全てを試してみた。 だが、男は無情にもまりさに歩み寄る。 「さーて、お前は・・・泣いた。」 「だから、殺す。ただ殴り殺す。」 「覚悟はいいか。3・・・・・。」 「ゆ゛ぅぅぅ!!!!!」 何とか立ち上がれたまりさ。 だが、あんよが震え一歩も動けない。 「2・・・・」 「ぜぇぇぇぇ!!!!!」 何とか這いずり回るまりさ。 蛞蝓といい勝負のスピードでは意味は無いが。 「1・・・・」 「あ゛あ゛ぁ゛!!!!」 まりさの視線の先には、 突きの動作に入ろうとしている男の姿があった。 そして・・・ 「ゼ・・「ばりざぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」 男の後方で、聞き覚えるある声がした。 「なんなのごれぇぇぇぇ!!!!!」 拳は、飛んでこなかった。 が、危機が去ったわけではなかった。 目の前に狂人がいることには、なんら代わりが無い。 大切なものが、壊されるかもしれない。 男は、まりさの方をちらっと見やったあと、 威嚇するれいむのいるおうちの方へ向かった。 「こないでね!!!ぷくーするよ!ぷくーっ!!!」 おくちいっぱいに空気を溜めて、ぷくーをするれいむ。 しかし、男は止まらない。 「いやだよ!こっちにこないでね!!!」 ドンドン近づく男に対して、れいむは恐怖心を募らせる。 れいむだって、人間の恐さは嫌という程知っているから。 「ごっちごないでぇぇぇ!!!ぷきゅぅぅぅ!!!!」 目に涙を溜めて、ひたすらぷくーっをするれいむ。 このままでは、れいむの身に危険が及ぶ。 大好きな家族がゆっくり出来なくなってしまう。 嫌だ。嫌だ。そんなのは絶対に嫌だ。 大切な番のために、 まりさは精いっぱいの大声で、涙を流しながら叫ぶ。 「れいぶぅぅぅぅ!!!!!!にげてぇぇぇぇ!!!!」 あらん限りの力で、叫んだ。 立ち上がる気力も全て費やして。 叫び終わったまりさが見たものは、 やはり男の拳であった。 「ゆ゛ぃぃぃ!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 残された左目も潰された。まりさは光を失った。 目玉のない眼孔から、餡子の涙を噴き出す。 もちろん、男はそれを見逃さない。 「まだ、泣いているんだな。てかさっきから五月蠅いんだよ。」 ボゴォォォォォ!!! 「ぶぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!」 二度あることは三度ある。再び拳が舞い降りた。 毎日お手入れしていた、ぴっかぴかで自慢の歯は、 グッチャグッチャに砕け、辺り一面を、粉雪のように舞っていた。 吹き飛ばされたまりさは、おうちの近くの壁にぶつかって、意識を失った。 壁にぶつかった背中から体が裂けている。 恐らく長くはもたないだろう。 突然降って沸いた不幸に、れいむは硬直していた。 「・・・・」 「・・・・」 男とれいむの間に沈黙が続く。 まりさの帽子を拾い上げ、帽子のつばで、餡子塗れの両手を拭く。 まりさの命の餡子が付いた両手を、丁寧に拭く。 両手についた餡子を全て拭き取る。 帽子を地面に落とし、泥の付いた靴で、ぐしゃぐしゃに踏みにじる。 「きったねえ帽子だ。雑巾にもなりやしない。」 家族のご飯を、家族の未来を詰め込んでいた、 自慢の山高帽子は、見る影も無くなっていた。 「やべろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!ぐぞにんげぇぇぇぇぇん!!!!!!!!」 れいむの中枢餡がようやく動き出した。 歯茎を剥きだしにして、悪意に対して全力で抵抗する。 先ほどの恐怖心は、ない。 ただ、唯愛している番を傷つけられた事への憎悪が、れいむを突き動かしていた。 れいむは、精一杯ぷくーをした。 胎生にんっしんをしているれいむができる最大の抵抗がぷくーである。 体当たりの一発でもブチかましてやりたい所であるが、胎ゆの身が危ない。 頭に餡子が昇っているとはいえ、「ぼせい」が、れいむをそうさせた。 「・・・」 「ぷっっっっくぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!!」 怒りを込めたぷくーで男を精一杯威嚇しようとするれいむ。 「ぷっっっっぎゅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!!」 男は何も言わず、れいむの瞳を見つめる。 「ぶっっっっぎゅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!!」 その視線は、ゆっくり、ゆっくりと下がり、 「ぶぅっっっぎぃぃゅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!!」 その、大きなぽんぽんさんを捉えていた。 そして、 「そんなに膨れて大丈夫か?」 「ぷっっっっくぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!!」 れいむの、いやゆっくりの、 「赤ちゃん、生まれちゃうぞ。」 思い込みの力を誘発させた。 「!!!!!!」 ビクン。 「ゆ・・ぎ・・・ぎ・・・」 ビクンッ、ビクンッ、ビクビクンッ!!!! れいむの額から、砂糖水がタラリと流れ出す。 唇を噛み、わなわなと震えだす。 そう、生まれるのだ。新たな命が芽吹くのだ。 「う゛・・・う゛ばれる・・・」 まむまむが隆起する。 まるでミチミチと音が聞こえるように、まむまむが開き、 赤ゆっくりが、さんどうっを進む。ぷるっぷるの赤ゆの饅頭皮が、外気に触れる。 支えてくれる夫は動けないし、危機的な状況ではあるが、産むしかない。 れいむは、腹を括っていた。 「ゆ゛・・・ゆ゛・・・・」 白玉の目を見開き、まむまむ周辺の餡筋を総動員させる。 内圧を一気に高め、赤ゆっくりを胎内から自分達の世界へオンステージさせる。 「ゆ゛!!!!!!!!!!」スポーンッ! 放物線を描き、宙を舞う赤ゆっくり。 どうやら、れいむ種であるようだ。 ニュートン力学に従い、ゆっくりゆっくりと落下していく赤れいむ。 行き着く先は・・・ キラキラと光るガラス片の山であった。 ブスブスブスブスッ!!! あんよ、おかお、おかざり、あたま、、あにゃる、まむまむ。 至る箇所に鋭いガラス片が突き刺さっている。。 「いじゃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!」 舌足らずなおくちで、痛みをフルパワーで訴える赤れいむ。 口を大きく開け、ぼろぼろと涙をこぼす。 餡子が体中からふきだし、痛みのシグナルが混線する。 おちびちゃんの痛々しい叫びは、しゅっさんっ後で辛いはずの れいむの体を突き動かした。 ずーり・・・ずーり・・・ 「まっててね・・・。おちびちゃん・・・」 ずーり・・・ずーり・・・ さんっどうっから汁を垂らし、なめくじのように這うれいむ。 歯茎を剥き出しにして、鬼の形相で前進する。 「ぺーろ・・・ぺーろしてあげるからね!」 「ゆ゛ぇぇぇぇん!!!!!」 泣き叫ぶ赤れいむ。 散らばるガラスが体に突き刺さるも、れいむは気にせず突き進む。 口を開き、舌を伸ばす。赤れいむの痛みを和らげるために。 舌が赤れいむに届くまで、数センチ。 ほんの数センチの差で・・・ ブチュッ! 「さすがにガラス塗れのゆっくりは殴りたくないからな。」 餡子の染みが、地面に溶け込む。 赤れいむは踏み潰された。 れいむの、目の前で。 初めて見る、自分似のおちびちゃんは、 一度のスキンシップも無く、地面と同化した。 「あ゛・・・あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!! ゆ゛ぁ゛あぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁああああああああああああああ!!!」 慟哭。 その叫び声は、路地裏を飛び出し、街に響き渡る。 餡子に絶望が浸潤してくる。 止め処なく涙が溢れてくる。 痛みも怒りも、恐怖もない。 あるのはただ、悲しみだけ。 絶望に打ちひしがれるれいむに対して、 与えられたのは暴力。 それは、男が放つ全力のアッパーカット。 男の拳によって抉られたれいむの上半身。 上半身は、吹っ飛び、壁にへばりつき、 下半身はその場でビクンビクンと痙攣している。 「・・・!・・・!」 ズルリ・・・ズルリ・・・。 重力に従って、壁をずり落ちるれいむの上半身。 最期は、大好きな番に覆いかぶさって、果てた。 コントロールを失った下半身が、不規則に動き出す。 まむまむが収縮を繰り返す。 確実に死んだはずのれいむの体は、動きをやめない。 まむまむが突如開かれ、肌色の物体が飛び出した。 しゅっさんである。 れいむは死してなお、おちびちゃんを産もうとした。 れいむ種の強いぼせいのなせる業だろうか。 ころころと転がるのは、赤まりさ。 先ほどの赤れいむとは違い、まりさのお帽子に着陸する。 「ゆっきゅちしちぇいっちぇね!!!」 大きな声で、はじめてのゆっくりしていってねを叫ぶ赤まりさ。 目をキラキラと輝かせて、ゆっくりした両親のお返事を待っている。 「・・・」 だが、 「・・・」 「・・・」 母であるれいむは、たった今朽ち果て、 父であるまりさは、意識を失っている。 「ゆっきゅちしちぇいっちぇね・・・???」 満面の笑みを見せていた、赤まりさの顔から、 徐々に表情が失われていく。 「ゆっ・・きゅち・・しちぇいっちぇね・・」 無機質な表情を通り越し、次第に顔面に皴を増やす。 唇を噛み、ぷるぷると小刻みに震え始める。 「ゆっきゅち・・・しちぇいっ・・・・・・」 そして・・・ 「ゆ゛っぎゅぢぃぃぃ!!!ゆ゛っぎゅぢぃぃぃ!!!」 泣き叫ぶ。 寂しさを押さえきれない赤まりさは、泣くことで助けを求める。 赤ゆっくりの仕事は泣くことだ、といっても過言ではないから。 だが、 ブチャッッ! そんなことは男には関係の無い話である。 誰にも祝福されること無く。 誰にもあいされること無く。 赤まりさは、叩き潰された。 おうちの外で繰り広げられる惨劇を見ていた子まりさ。 彼女は、タイミングを窺っていた。 それは攻撃のタイミングではない。 逃亡のタイミングである。 密かに飼いゆっくりになるための特訓を受けていた子まりさは、 何が起きても人間に歯向かってはいけないというまりさの教えを忠実に守っていた。 このピンチを乗り切る作戦をしっかりと練っていた。 路地裏を抜け出して、自慢の可愛さで、助けを求めるのだ。 「そろーり!そろーり!」 ゆっくりと、しかし確実に路地裏から抜け出そうとしていた。 「そろーり!そろーり!」 男が子まりさを見ている素振りはない。 「そろーり!そろーり!」 子まりさを影が覆う。 「やぁ、そんなにいそいでどこにいくんだい?」 「じぇ!?」 目の前には、ゆっくりがいた。 胴付きのなずーりんだ。 子まりさは、こっそり歩いている自分に気づいた、 なずーりんに驚きはしたものの、次の瞬間、にやりとほくそ笑んだ。 目を潤ませて、おしりをぷりんぷりんとさせて、 かわいらしい、あいどるの様な振る舞いをする子まりさ。 なずーりんの瞳を見つめ、甘えた声で、言った。 「まりちゃをたしゅけるんだじぇ!!! そしてあみゃあみゃをよこしゅんだじぇ!!!」 目をキラキラとさせてなずーりんを見つめるまりさ。 目の前の気持ち悪い生物に嫌悪感を示さずに、笑顔で言葉を返すなずーりん。 「いいよ!ただし・・・」 ブスッ・・・ 「いっぎぃぃぃぃあ゛ぁぁぁぁ!!!!」 なずーりんの持つ“だうじんぐろっど”が、 子まりさのまむまむに深々と突き刺さる。 「わたしのまえでは、ぜったいになみだをみせるな。」 笑顔だったはずのなずーりんが、 般若のような顔をしていた。 先ほどの男より、よっぽど恐ろしい。 「ゆ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」 あにゃるからうんうんをひりだし、 まむまむからしーしーをふきだす。 おめめからはたきのようなみだだ。 もう一本のだうじんぐろっどを振りあげる、なずーりん。 子まりさは恐怖で、一歩も動けない。 「なみだは、きらいなんだ。 なにもかも、こわしたくなるくらい。」 だうじんぐろっどは、全力で振り下ろされた。 何度も何度も執拗に振り下ろされた。 目玉も、中枢餡もぐちゃぐちゃになって、 子まりさは、やっと泣き止んだ。 ------------------------------------------------------------------- 「待ってろって言っただろ。」 「すまない、ごしゅじん。ただ、ひめいがしたから。」 「俺は、ちょっとやそっとじゃ、やられない。」 俯くなずーりん。 彼女は腕を掻き毟る。 ガリガリ・・・ガリガリ・・・ 執拗に掻き毟る。 ガリガリ・・・ガリガリ・・・ 饅頭皮に餡子が滲んでも。 ガリガリ・・・ガリガリ・・・ ガリガリ・・・ガリガリ・・・ 掻き毟ることをやめない。やめられない。 「やめるんだ。」 男は、なずーりんの腕を掴み、その自傷行為を止める。 「すまない、ごしゅじん。」 「いいんだ、謝らなくて。」 なずーりんの体には、無数の引っかき傷がある。 もちろん、男が虐待しているわけではない。 全て、彼女自身の手で傷つけられたものだ。 男は、なずーりんとしょうを飼っていた。 今ここにいるなずーりんは、男の飼いゆっくりであった。 母なずーりんと父しょうの間にできた子である。 なずーりんの家族は皆、ゆっくりしていた。 男も非常に彼女達を愛しており、幸せな日々を送っていた。 男がなずーりんを連れて、 買い物に行っている最中、悲劇は起きたのだ。 野良ゆっくりに入られた形跡があった。 家に入られて荒らされるだけならば、まだ救いがあった。 なずーりんの家族が、死に絶えていた。 辛うじて生き残ったしょうが、犯ゆんのことを息も絶え絶えに、話した。 ゆっくりを殺すとき、何故か笑い泣く、不気味なまりさにやられた、と。 治療の甲斐も虚しく、しょうは息絶えた。 なずーりんがおかしくなったのは、それからだった。 なずーりんは泣かなくなった。 泣かなくなったが、自傷癖が現れた。 特に、泣いているゆっくりを見ると、目も当てられないくらい傷を作っていた。 ゆっくりニックに行っても、心の病だからすぐには治らないと言われた。 おくすりをのんでも、なずーりんは辛そうにしていた。 だから、男は立ち上がった。 なずーりんの家族を殺した、野良ゆっくりを必ず殺すと。 どんな手を使ってでも殺すと。 なずーりんがこれ以上傷つかないために、 ゆっくりに涙を流させないと。 たとえ、何万匹ゆっくりを殺したとしても。 両方の目的のために、男は泣くゆっくりを殴り殺す。 今日もまた、ゆっくりの泣く声がする。 歪な復讐劇はいつまで続くのだろうか。 ============================================================================ <あとがき> 涙の数だけ強く殴るよ~♪ とってもお久しぶりです。ドナルド泣きです。 上のフレーズが言いたいがためにSSを書きました。 かなり昔のことですが、にとりあき様、車田あき様、 .netで検索すると、hazmat guyと呼ばれているお方(セールス抜きあき様?)、 挿絵ありがとうございます! では、最後までお読みいただきありがとうございました。 またあえたらお会いしましょう。
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~都会のゆっくりとその顛末~「親子れいむ」 羽付きあき ・観察物 ・理不尽物ですご注意を ・幾つかの独自設定を織り込んでいます 皆さんは街にいるゆっくりにどのようなイメージを持つだろうか? おうち宣言と言う行為でガラスをぶち破り侵入する、「おうた」と称して騒音をまき散らす、ゴミ箱を荒らす・・・と言った他に人間の手伝いをする、人間に与する等が一般的なイメージであろうか? ・・・これらは「街ゆっくり」と呼ばれるゆっくりである 街ゆっくりはは山野に住む「ゆっくり」とはまた違った亜種に近いと言われているからだ。 みなさんが想像するゆっくりとは少なくともまん丸で触感はモチモチとした小奇麗なイメージがあるが、街ゆっくりはどうであろうか? 丸い形とはかけ離れた台形とも似つかない極端な下膨れに、水飴の汗が街のゴミなどの油分に混じってヌラヌラにこびり付いた上に生傷だらけの小麦粉の皮と言ったところだろう。 街ゆっくりと言うのは基本的には不規則な食事サイクルをとるため極端に餡子の変換率が高い。 そして積極的に跳ねる事はあまりなく(大まかにしか動けない跳ねるという行為は街ではかなり危険なため、またかなり乏しい食糧事情のため跳ねると言う餡子を消費する行為は控える為でもあると言われている)、基本的には「ずーりずーり」で移動する。 そのため余分な餡子がたまりやすいのだ。跳ねると言う行為をしないため底部付近の小麦粉の皮がたれ気味になるため極端な下膨れになると推測が建てられている。 私は、その「ゆっくり」を探すために街に出ている。 街の中で生きる「ゆっくり」とは一体どのような行動をし、そしてどうなっていくのか。それにとても興味がわいたからだ。 X月X日 AM 9 00 私は人の喧騒が激しい街の中心地に足を延ばしていた。 休日とあってかなり込んでいる様で、普段なら足早に横断する街ゆっくりの姿すらも見えなくなっていた。 だが私は買い物をするつもりはない。街ゆっくりが居るとされる裏路地へと歩を進めていこう。 AM9 06、現在私は街の裏通りを歩いている。 大衆飲食店の裏側、ここは街ゆっくりが集まる絶好のスポットである。 臭いにつられて街ゆっくりがやってきて、そこにあるダンボール箱やビールケースなどのガラクタにタオルや新聞紙を敷くなどの簡単な加工をして「おうち」と呼ばれる巣を形成する。 横に倒した箱の中にすっぽりと挟まっているゆっくりと言うのはよく目にする光景の一つである。 さて雑多な箱等が積まれている場所を見ると早速見つける事が出来た。 バスケットボール大の大きさのゆっくりが一体、ソフトボールほどの「子ゆっくり」が一体の系二体の様だ。 ボロボロではあるが大きな赤いリボンの飾りと黒い砂糖細工の髪、そして左右のピコピコから察するに「ゆっくりれいむ」の様である。 ビールケースが積まれて板を載せてあるその下の隙間にチラシを引いただけの簡素な造りの「おうち」の様だ。 そこに小麦粉の皮をぴったりとくっつけあって目を閉じている。 「ゆぴー・・・ゆぴー・・・」 ・・・眠っているようだ。この時間帯に眠っているゆっくりは珍しい。 私がそう思っていると子れいむの方が目を覚ました様だ。 寒天の目をゆっくりと開けながらこちらを見てこう言った。 「ゆ・・・?ゆぅ・・・?にんげんしゃん・・・ゆっくりしちぇいっちぇね」 「あ、ああ・・・"ゆっくりしていってね"」 急なあいさつに戸惑いながらも返すと子れいむの顔がパァっと明るくなった。 「ゆゆ!おにいしゃんゆっくちできりゅひちょ!?ゆっくち!ゆっくち!」 「・・・ゆっくりできる?」 「ゆゆー!あいしゃつをかえしちぇきゅれりゅにんげんしゃんはゆっくちできりゅっちぇおきゃあしゃんがいっちぇちゃよ!ゆっくち!ゆっくちしちぇいっちぇね!」 上機嫌に左右のピコピコを振りながら何度も何度も「ゆっくり」と言う言葉を繰り返す子れいむ。 私が発した一言が何か琴線に触れたのだろうか・・・? 子れいむのはしゃぎ回る声にれいむの方が目覚めたようだ。 このれいむもまた「ゆっくりしていってね」と返すのだろうか? そう思っているとそのれいむが取った行動は子れいむのそれとは大きく違うものだった。 「ゆ!ゆゆ!?ぷくぅぅーーーーーーーっ!」 何も喋らず子れいむをかばうように私の目の前に来ると、大きく体を膨らませ左右のピコピコを激しくふるわせながらこちらを見ているのだ。 「威嚇」という行動だろう。なぜかれいむ種に極端に多くみられる行動だ。 口をつむって空気をためているため何も発しないが、その寒天の両目からは怯えの色が見て取れた。 ・・・通常街ゆっくりは滅多に威嚇をしないと言われている。やった所でどうにもならないし、先に逃げる方が得策だからだと言われているからだ。 つまりこのれいむはかなり追い詰められた状況と錯覚しているようだ。こちらを見上げながらピコピコだけが左右に激しく揺れている。 その光景に子れいむの方も何か思う所でもあったのだろうか、不安そうな顔でれいむの後部を見詰めている。 「ま、待って。私は君達に危害を加えるつもりはないよ」 「ぷく・・・ぷっく・・・ぷひゅるるる・・・こ、ここはれいむとおちびちゃんのおうちだよ!ゆ、ゆっくりできないにんげんさんはゆっくりしないでど、どっかいってね!れれ、れいむおこってるんだよ!?」 「いや、だから・・・」 「ぷっくうううううううううううーーーーーーー!!」 しどろもどろに私が説明してもれいむは限界にまで空気を入れて、またそれに耐えきれなくなって空気を吐き出すと再び大きく膨れると言う行動を何度も繰り返し始めた。 ・・・平行線である。だが長く続くと思われていたその時間も子れいむによって終止符を打った。 「おきゃあしゃん!きょにょにんげんしゃんはゆっくちできりゅひちょぢゃよ!ゆっきゅりぷきゅーをやめちぇあげちぇね!」 「・・・!!ぷっくうううううーーーー!」 「やめちぇね!なんぢぇゆっきゅりできりゅにんげんしゃんにそういうこちょしゅるにょ!?れいみゅおきょりゅよ!」 「ぷ・・・ぷひゅ・・・るるる・・・ゆ・・おちびちゃん・・・ほんとうにゆっくりできるひとなの?」 「そうぢゃよ!れいみゅがゆっくりしちぇいっちぇねっちぇいっちゃらかえしちぇくれちゃよ!おきゃあしゃんがいっちぇちゃゆっきゅりできりゅにんげんしゃんぢゃよ!」 「ゆ・・・ゆぅ・・・おにいさんゆっくりできるひとなの・・・?」 警戒しながらも私を見上げてれいむが切り出した。 私はなんとなく返答にこまったが何とか糸口を見つけ出そうと懸命に身ぶり手ぶりを交えて話をする。 「そ、そうだよ。私はただゆっくりの生態に興味があって・・・」 「"せいちゃい"おいしいにょ!?」 「え?」 「ゆゆ!ちょっちぇもゆっきゅちできりゅあまあましゃんにゃにょ?」 「いや、生態っていうのはね・・・」 「あまあま!あまあまほちいよ!ゆっきゅりできゅりゅよ!」 「いや、だから・・・」 説明の腰を折り、子れいむは言う事を聞かないまま辺りを小刻みに動き回っている。 どうやら私の言葉を甘い食料と勘違いした様だ。 埒が明かないのでれいむに話を通す事にした。 ・・・・・・ ・・・ 「ゆゆ・・・つまりれいむたちがふだんなにをしているかをみたいんだね」 「そういう事なんだ。」 「・・・ゆぅ~・・・だったらあまあまさんをもってきてね!」 「"あまあま"?どんなのが・・・」 「あまあまさんはあまあまさんだよ!たくさんでいいよ!」 「たくさん?どれぐらいなんだい?」 「たくさんはたくさんだよ!」 「今は持ってないんだ。後で持っては来れるけど・・・」 「ゆぅ~しかたないね!そのかわりあまあまさんはもっとたくさんもってきてね!」 どうやら私が危害を加えるつもりはなく、何か交渉事をしている問う事がわかると「あまあま」を吹っかけようとしているらしかった。 だが不思議と憎らしいと言った感情は思い浮かばなかった。私には、話をしてくれる人間に対して精一杯我儘でも何でもいいのでかまってもらおうとしている様に思える。 強かと言うべきか?傲慢と言うべきか?言葉を選ぶのに躊躇はするがとりあえずはこのれいむの「強かさ」を見る事にしよう。 れいむは子れいむに一言二言何かを告げると巣の奥から小さなボロボロのプラスチックのケースを取り出し、どこかへと跳ねて行ってしまった。 AM 10:15 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~っくり~していって~ね~♪」 「ゆっきゅりのひ~♪まっちゃりのひ~♪」 ・・・私は今、ベンチに腰かけ頬杖をついて遠目にれいむ親子を見ていた。 れいむ親子がやってきたのは近くの公園。 私の前方15m程先で小麦粉の皮をくーねくーね、のーびのーびとさせてリズムらしきものをとりながら何かを歌っているれいむ親子は、道行く人を見かける度に何か声をかけていた。 よく目にする「おうた」と言うものだろう。 ゆっくりと言うのは父役、母役の番いになって子ゆっくりを生みだし、そして行動する。 街も山野も同じであるが、唯一の違いはこのように片親になってしまう事だろう。 番いと子ゆっくりという組み合わせはかなり少ない。大方が父役のまりさ種が様々な原因で物言わぬ饅頭となるケースがほとんどである。 ・・・基本的に「れいむ種」と言うのは狩りが不得手な種類なのだ。 山野でもれいむ種のする事はあくまで子ゆっくりを育てる事であり、「狩り」に出る事は殆どない。 多くの場合はゆっくりは危機の殆どない所に居付くため、番いの片方がいなくなると言った事はない。 だがここは街だ。環境が変われば事情も変わる。 街のまりさ種の多くは危機を掻い潜りながら餌集めをするため危険度はかなりあるのだ。 当然生存率は極端に悪く、ある統計では番いのまりさ種の70%以上が物言わぬ饅頭となってしまうと言う。 さて、残されたれいむ種はどういった行動をするのだろうか?と言われれば・・・ 一つはこの「おうた」を歌うと言う行為。そしてもう一つが無軌道な餌場荒らしの二つ程度である。 通常片方しか行わない事がほとんどである。 統計的には「街れいむ」が餌場荒らしをする事が多く、「捨てれいむ」の方が「おうた」を歌う事が多いとも言われている。 「おうた」はよく目にする。 しかしそれであまあまさんと言うのをもらったゆっくりは少なくとも見た事がない。 あのれいむ親子も当然のごとく道行く人々(それも人が少ない公園なので2~3人ほどだが)に歌を歌うがそこに何もいないかのようにスルーされている。 「ゆ~んゆゆ~♪そこのおにーさん!れいむのおうたをきいていってね!ゆ~♪ゆ~♪」 「ゆっきゅち~♪ゆっきゅち~♪」 懸命に汚い小麦粉の体をくーねくーねさせながらお歌を歌うれいむ親子。 その行為に至るまでにどういった経緯があったのかは定かではないが、一つ言える事はよく今まで無事でいられたという事だ。 私はそう思いながられいむ親子を見る。 既に初夏ともいえるほどの暑さと太陽の中で懸命に歌うれいむ親子は、どこかさびしげに見える物があった。 AM 12:45 「ゆぅぅ・・・おきゃあしゃん・・・きょうもごはんしゃんくれなかっちゃね・・・」 「しかたないよ・・・きょうはあつくてみんなゆっくりできてないからおうたをきいてくれなかったんだよ」 トボトボと帰路に就くれいむ親子の横を私はともに歩いていた。 ・・・あれから二時間半も歌い続けたがれいむ親子に何かしらの食料を渡す人は現れなかった。 「ゆぅ・・・おきゃあしゃんおなきゃすいちゃよー・・・」 「おちびちゃん・・・ごめんね・・・きょうはごはんさんがないかもしれないよ・・・」 「ゆゆ・・・れいみゅおなきゃすいちぇもううごけにゃいよ・・・」 「ゆ!ごめんね・・・きょうはいっぱいおうたさんをうたったかられいむのおくちのなかはちょっとむりだよ・・・あたまにのってね」 「ゆっきゅりわかっちゃよ」 あれだけ声を出し続けたのだ。れいむの口腔はボロボロだろう。 元気がない子れいむを頭に載せてずーりずーりと地面を這って進んでいる。 「あ、ちょっと待っててくれないかい」 「「ゆゆ?」」 私は鞄の中に入っているコンビニのオニギリを一つ取り出すと封を切ってれいむ親子にさし出す。 れいむ親子はきょとんとした表情でそれを眺めていた。 「"あまあま”じゃないかもしれないけど、よかったら食べてよ」 「ゆぅーっ!おにいさんゆっくりありがとう!」 「おいしそうぢゃよ!にんげんしゃん!ゆっきゅちありがちょうね!」 固くなっているおにぎり一個でここまで喜ぶ事はかなり意外であった。 ゴミとなる袋はこちらで処分するし、多少は問題ないだろう。この様子なら食べかすすら残らず平らげてくれそうだ。 おにぎりと子れいむを器用に頭の上に載せて、れいむ親子は嬉しそうにずーりずーりと移動する。 そう、ゆっくりだって懸命に生きているのだ。これぐらいの事しかできないが、せめてもの私からのプレゼントである。 嬉しそうな笑みをこぼすれいむ親子を見て、私は少なくともその時までは自分がとてもいい事をしたかのように思えていた。 AM 13:00 「ゆゆ!おいししょうなおにぎりしゃんぢゃね!」 「じゃあ、わけるね!」 元の「おうち」にすっぽりと入りこんでいるれいむ親子。 どうやら食事の様だ。 れいむが舌を使っておにぎりを二つに割った。 中からはマヨネーズで和えたシーチキンがこぼれ出ている。 れいむはおにぎりの三分の一ほどを自分の所に寄せると、後の大部分を子れいむの前に置いた。 「ゆ?はんぶんこしにゃいにょ?」 「れいむはおなかすいてないからこれだけでいいよ!おちびちゃんはきにしないでゆっくりたべてね!いそいでたべすぎるとつまらせちゃうからきをつけてね!」 「ゆ!ゆっくりいちゃぢゃきましゅ!」 「「む~しゃむ~しゃ!しあわせー!」」 ・・・私はれいむ親子を遠目から眺めていた。 少なくとも一日のサイクルは大体わかったし、それにあのれいむ親子の幸せそうな笑顔が見れただけでも良しとしよう。 私が帰ろうとしたその時、裏通りのドアがガチャリと開いて中から人が出てきた。 ・・・手には何か棒の様な物を持っている PM 13:08 「またゆっくりがいついたのか」 ドアから出てきた男がふうと溜息をついた。 表の店の店主であろうか?店員であろうか?定かではない。 ただあの手に持っている棒を見て私は驚いた。 「ゆ叩き棒」と言う物だ。 ゆっくり駆除用の道具の一種で多機能な棒状の道具と思ってもらえればわかりやすい。 街ゆっくりは汚い。素手で触れば何を持っているかも定かではないのだ。 トングや蠅たたきでは赤ゆっくりは潰せても子ゆっくりや成体ゆっくりは潰せない。 そこで開発されたのが「ゆ叩き棒」である。 一つにアマギり、叩き、足焼きの機能を持たせた棒で、それなりに普及を始めている。 男はビールケースの隙間を覗き込んだ。 そこには小麦粉の皮をぴったりとくっつけあって目をつぶっている。 寝ているのかどうかは定かではないが少なくとも男には全く気付いていないようだ。 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 「おちびちゃん・・・ゆっくりしていってね・・・ゆぴぃ・・・ゆぴぃ・・・」 男が手を伸ばした。 男の手はれいむの砂糖細工の髪を鷲掴みにするとそのまま一気に引きずり出して、勢いよく降りあげて地面に叩きつける。 「ゆ”!?ゆびぃっ!!」 れいむが顔面から地面に叩きつけられる。 そのまま男はれいむの小麦粉の体の背面部をゆ叩き棒で殴りつけた。 「・・・ゅぶっ!!」 「おぎゃあじゃああああああん!?」 事態を飲み込めない子れいむが大きく口をあけて声をあげている。 「オラッ!汚ねぇんだよ!」 「ゆぎゃぁっ!いだいいいいいいい!!」 男が足の甲でれいむの小麦粉の体を蹴っ飛ばす。 顔面が下に向いたまま底部の部分から蹴られたため壁に頭頂部が激突して、れいむの体が一瞬ひしゃげた。 そのまま地面にボトリと落ちてれいむの顔があらわになる。 最初の一撃で砂糖細工の歯が粉々に砕けて欠片が口腔や小麦粉の皮に突き刺さっている。 中で餡子が不規則に移動したからかどうかは定かではないが小麦粉の皮が腫れあがっていた。 「にんげんざんっ!どぼじでごんなごどずるっぎぐ!?」 れいむが声を上げた途端に斜め上からゆ叩き棒がれいむの小麦粉の顔面に叩きこまれた。 そのまま男はれいむを何度も滅多撃ちにしていく。 ドコ、ドコと鈍い音が響きわたり、打ちすえられるたびに返り餡子がビチャビチャと飛び散った。 「ゆっぐりやべっぶ!ゆぎっ!いだ!いだいいいいっぶぁ!やべでえええっぼ!ゆぐっ!にんげんざびっ!」 すでにれいむの小麦粉の皮はボコボコに膨れ上がり、どこが顔かどうかさえ分からないほどに中の餡子が大きく変化して膨れ上がっていた。 男が大きく手を振り上げてゆ叩き棒を打ち降ろす。 「ドコ」と音がした後に今まで聞いた事のない様なれいむの声が響き渡った。 「っゆぎぃぃぃぃぁぁぁああああああああああああああ!!!でいぶのおべべがあああああああああ!!」 打ち降ろされたゆ叩き棒はれいむの小麦粉の皮の上部に当たり、そのままのめり込むと勢いで寒天の左目がブチュンと飛び出したのだ。 「ゆぎぃっ!でいぶのおべべっ!おべべええええええええ!!いだいっ!いだいっ!!いだいいいいいいいいい!!いだいよおおおおおおおおお!!」 ブラブラとぶら下がって揺れるれいむの寒天の左目はれいむが動くたびにブルンブルンと右に左に動いていた。 「ん?」 男がふと振り返る。 そこには「おうち」の片隅でチラシをくしゃくしゃに固めて身をくるんで隠れている子れいむの姿があった。 頭隠して尻隠さず・・・とはまさにこの事であろうか。 底部だけがぷりんぷりんと揺れている。 「そういえば子ゆっくりもいたなぁ・・・」 男が手を伸ばすと、その袖にれいむが口で引っ張って制した。 男が面倒臭そうにグイグイと袖を左右に振っても、ズリズリと引きずられるようにれいむは食らいついている。 「ゆひゅー・・・ゆひゅー・・・お、おでがいでずっ・・・おぢびぢゃんだげは・・・おぢびぢゃんだげはだずげでぐだざい・・・ゆっぐりおでがいじばず・・・」 れいむが残った寒天の右目からポロポロと砂糖水の涙を流して懇願する。 既にどこがどうなっているのかさえ分からないほどボコボコに膨れ上がった小麦粉の皮の切れ目から砂糖水の涙がこぼれおちる。 男はすっと、袖を引いた。そして 「うるせえんだよ!!」 「ゆ”びっ!!」 れいむの小麦粉の皮上部に渾身の力を込めてゆ叩き棒を振り下ろした。 凹の形の様にひしゃげてトランポリンの様に元に戻ったれいむの体が力なく前のめりに潰れてそのまま地面に突っ伏してビクンビクンと痙攣を始める。 「ゆ”っ!ゆ”っ!ゆ”っ・・・!ゆ”っ・・・!ゆ”っ・・・!ゅ”っ・・・!ゅ”っ・・・」 どうやらさっきの一撃でれいむの中枢餡がグシャグシャになってしまったようだ。 地面に突っ伏しって痙攣したまま徐々に動きが小さくなっていく。 男は再び底部を恐怖でプルプルと震わせている子れいむをひっつかむとグイグイと引っ張り始めた。 顔だけ隠れたチラシごとズルズルと引っ張りだされて行き、チラシがポロっと剥がれた。 「ゆんやああああああ!はなちちぇええええええ!はなちちぇええええええ!!」 しーしーも砂糖水の涙も涎も全く気にせずまき散らしながらグネグネと小麦粉の体をくねらせて必死に抵抗する子れいむを逆さに立てて、ゆ叩き棒の根元にあるボタンを押した。 「もちょにもどしちぇええええええ!うごけにゃいよおおおおお!ゆんやああああああ!」 男が子れいむの底部にゆ叩き棒を押しつける。すると 「・・・ぴぎぃっ!!あぢゅいいいいいいい!あぢゅいよおおおおおお!ゆっぐぢやべぢぇえええええええ!」 ジジジ・・・と子れいむの底部から煙が立って丸で火がついたかのように子れいむが泣き叫び始めた。 ゆ叩き棒の中に内蔵されている電熱線が高音を発し、子れいむの底部を焼いているのだ。 あっという間に子れいむの小汚い底部は焦げてしまい、完全に運動能力をなくしてしまった。 「ゆ”!ゆ”!どぼじぢぇぇぇ・・・れいみゅのあんよじゃんがぁぁあびょ!」 悲しみにくれる子れいむは真横にふるわれたゆ叩き棒に小麦粉の体をひしゃげてそのまま地面にこすれるように飛んでいき、壁にぶち当たる。 ズルズルと餡子の跡が壁にこびり付いて地面に落ちると、必死に底部を動かしてどこかへモソモソと這い始めた。 「きょわいよぉぉ・・・!いぢゃいにょはいやぢゃよぉぉ・・・!」 だが底部が完全に焦げている上に子れいむほどの大きさではまさにナメクジが這うがごとくのスピードしか出ていない。 男が子れいむを鷲掴みにして持ち上げた。底部をぷりんぷりんとさせて先ほどより激しく動いている。 「やべぢぇえええええ!もういぢゃいのいやぢゃああああああああ!きょわいよおおおおお!おぎゃあじゃあああああああん!!だぢゅげぢぇええええええええ!!」 男がゆ叩き棒の根元を子れいむの目の前にさし向ける。すると二本の小さな鋭い突起が飛び出した。 そのままブスリと子れいむの寒天の目の下に差し込むとグイッと手首を返して引き揚げた。 「プリッ」っと子れいむの寒天の両目が飛び出る。そして次の瞬間 「ゆびぃぃぃいいいいいっ!!おべべがっ!おべべがいぢゃいよおおおおおおお!!いぢゃいいいいいいい!!れいみゅのおべべえええええええええ!!」 寒天の両目が二個とも小麦粉の皮の眼窩から垂れさがる。少量の餡子の混じった黒い砂糖水が子れいむの双眸から零れ落ちる。 そのまま男は地面に子れいむを捨てた。 ポトンと地面に落ちると子れいむはあたりを右往左往しながら体を縦にのーびのーびさせたりぐーねぐーねさせながら目一杯口をあけて何かを叫んでいる。 「あ”あ”あ”あ”あ”!おめめっ!れいみゅのおめめぇぇぇぇっ!いぢゃいよぉぉ!!くりゃいよぉぉ!きょわいよぉぉぉぉ!きゅりゅりいよぉぉ!!おぎゃあじゃあああん!どぎょにいりゅにょおおおお!?れいみゅをおいちぇがにゃいぢぇえええええ!ゆ”わ”あ”あ”あ”あ”あ”ん”!ゆ” え”え”え”え”ん!!」 既に前方三十センチ手前で動かなくなっているれいむに気付かずにひたすら親であるれいむの名前を叫び続ける子れいむ。 底部は既に動かず、寒天の両目がブラブラと揺れている。 男がゆ叩き棒を振り上げた。そのまま右往左往する子れいむに向かって振り下ろす。 「ゆ”え”え”え”ん”!ゆ”ぴっ!」 グシャッと言う音がした。 子れいむはドラ焼きの様に平らに広がったうえで、小麦粉の皮の上部がバックリと割れて地面に突っ伏したままピクピクと死にかけの芋虫のように動いている。 男がドアの向こうから箒とビニール袋を取り出すと、そのまま袋に詰めて、ゴミ箱に放り込む。 「ったく・・・何でこうゆっくりがいつくのかねぇ・・・」 そのまま不機嫌そうにドアをバタンと閉めると、辺りには静寂が訪れた。 私は目の前の出来事に、ただ眼を見開いて見ている事しかできなかった。 PM 17 45 私は一種の後悔を抱いていた。 食料は与えたのにあのれいむ親子を助け「なかった」と言う事に。 結局は私は偽善者だ。街ゆっくりを飼うという覚悟もなしに食料を与えたり、少しゆっくりに優しくした程度で通じ合ったと安易な自己満足に浸っていた自分に後味の悪さと怒りを混ぜたような感情を抱いている。 街ゆっくりの末路は大抵ああいった物だ。 下手に食料を与えてしまうと近隣の街ゆっくりが集まり収拾がつかなくなる。 できる限り苦しめて潰すと、ゆっくりが嫌う独特の「臭い」が出て暫くは街ゆっくりが近づかなくなるのだ。 だからあのように潰して処分する。私のした行為はかなり周りの迷惑を考えない行為であったのだ。 反省の念と自己嫌悪に苛まれながら椅子に腰かけ、溜息をつく。 「野良ゆっくりを飼う気もないのに手を出すな」 それが私の得た教訓であった。
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灰色に染まった壁と、鉄格子で区切られた窓。 冷たく、硬い地面。 無機質に区切られた小さな部屋で、1匹のゆっくり霊夢が途方に暮れていた。 「ゆっくりさせて!」 大きさはバスケットボールほどにもなる。 そして頭には、一本の茎が生えていた。 「あかちゃんもゆっくりできないよ!」 心配そうに見上げた茎には、9匹の赤ちゃんゆっくりが実っている。 れいむ種が5匹、まりさ種が4匹。 どれもプチトマトより一回り小さいが、あと数時間もすればぷっくりと実って生れ落ちるだろう。 「まりさ!どこにいるのぉお!?」 何も置かれていない、8畳ほどの部屋。 その部屋の中心でれいむは叫んだ。 茎に実った赤ちゃんに気をつけながら周囲を見渡すが、最愛のゆっくり魔理沙はどこにもいない。 「まりざあ・・・まりざぁ・・・」 赤ちゃんを身ごもっているゆっくりは、パートナーへの依存度が高い。 このれいむも例外でなく、姿の見えない伴侶を求めて身重の体を引きずり這いずり回っていた。 「まりさ・・・にんげんにいじわるされてるのかな・・・まりさ・・・あいたいよ・・・いっしょにゆっくりしたいよ・・・」 れいむはこの部屋に連れてこられた時のことを思い出していた。 それは昨日のこと。 れいむとまりさは森の入り口で日光浴をしていた。 春先とはいえ、まだ寒さの残る日が多い。 あたたかいお日様にあたって赤ちゃんにゆっくりしてほしい、まりさが提案したことだ。 最初、れいむは反対した。 自身の両親は日光浴の最中に人間に捕まったからだ。 それも、茎に命を宿しているときに。 人間達は両親に宿った、妹となるはずの赤ちゃんを皆殺しにした。 巣穴を襲撃され、茎を同じくした姉妹が次々と殺され、一家は崩壊した。 れいむが助かったのは、親のまりさが最後まで諦めずに守ってくれたからだ。 だが結局親まりさは力尽き、残ったのはれいむ1匹となってしまった。 れいむは住み慣れた土地を逃げ出した。 ただ怖かった。 川を越え、野原を越え、山を越え、皮がぼろぼろになりながらもれいむは生き延びた。 時は流れ、あのときの親ゆっくりと同じくらいの大きさにまで成長できた。 だが人間への恐怖心がなくなることはなかった。 かつての両親の姿が頭によぎり、外に出る気が起きなかったのだ。 しかし、赤ちゃんに日光浴をさせてあげたい気持ちもあった。 いつもおいしいご飯を取ってきて、自分をゆっくりさせてくれた親まりさ。 幼い自分を必死で守ってくれた親まりさ。 そんな親まりさを、れいむはずっと尊敬していた。 自分も赤ちゃんだけは何があっても守る、ゆっくりさせてあげると決めていたのだ。 パートナーのまりさは言った。 れいむとあかちゃんはまりさがぜったいにまもるよ、と。 だかられいむはその言葉に甘えることにした。 「ゆっくりしたけっかがこれだよ・・・ゆぅぅぅぅ・・・」 結局、親と同じように人間に捕まってしまった。 まりさは懸命に戦ってくれたが無駄だったのだ。 れいむの前に一人の男が現れた。 右手はまりさの底部を掴み、逆さ吊りにしている。 「ゆっ!おにいさん、まりさをかえしてね!!」 れいむは餡子脳ながらも、その男を覚えていた。 自分とまりさを誘拐した男だということを。 「ほらよ」 ふわりと宙を舞い、まりさは硬い床に落とされた。 「ゆべへっ!」 顔面から落下したまりさに、れいむは擦り寄った。 幸い、餡子は吐いていない。 死ぬことはないだろう。 「まりさ、まりさっ!ゆっくりしよう!ゆっくりしていってね!!」 なかなか顔を上げないまりさ。 れいむは不思議に思い、まりさの体を見回した。 「ゆっ・・・!?」 丸々とした、美しい曲線を描いていたまりさの輪郭は、どこにもなかった。 あちこちが歪み、ところどころ陥没や隆起を繰り返している。 何度も殴られたであろう皮は、餡子の色がうっすらと滲み、黒いアザを作っていた。 逆さ吊りにされて帽子が落下しなかったのは、ぼこぼこになった頭部がうまいこと引っかかっていたためだ。 「ど・・・どうして!?まりさ!!あのにんげんにやられたの!?」 れいむは男に振り返り、威嚇をしようと息を吸い込んだ。 だが、途中で膨れるのをやめた。 膨れて不用意に茎を動すと赤ちゃんに悪影響があるかもしれない、れいむはそう判断したのだ。 「おにいさん!れいむはゆっくりおこったよ!!まりさにひどいことをしないでね!!」 精一杯の抗議。 しかし男はれいむの言うことなど気にもせず、籠から道具を取り出し吟味していた。 ハンコほどの太さがある鉄の棒と、ハエ叩き、アルコールランプ。 れいむには、何に使う道具なのか理解できなかった。 「れ、れいぶぅ・・・・」 背後から聞こえてきたまりさの声に、れいむは振り返った。 「ま!まりざぁああ!!?」 まりさの顔面は真っ黒に腫れ上がり、不気味な色をしていた。 暴力に耐え切れなかった内部の餡子が行き場を失い、皮の下で蠢いているのが見て取れる。 皮に傷らしきものはなかった。 人間で言うと、内出血に近い状態かもしれない。 「ごべんねぇ・・・まりざあ・・・・ごべんねえ・・・」 痛みを少しでも和らげてあげたい。 そんな思いから、れいむはまりさに頬擦りをした。 「ゆべぇっ!!いぎゃぁっ!!いぢゃいいい!!」 膨れた傷に力強く押し付けられたれいむの頬は、まりさに激痛をもたらした。 「やめでぇ!いだいよぉ!!!」 予期せぬ悲鳴に、れいむは思わず体を引いた。 そしてその言葉の意味をゆっくり理解する。 「ご、ごめんねまりさ!もうすりすりはやめるよ」 まりさは触れられた頬が痛いのか、目から涙をこぼした。 「ごべんねれいぶ・・・まりざ、れいむをまもっであげられながった・・・!それに・・・ありざのがわぃいかおがぁ・・・!」 「ゆっ!?ちがうよ!まりさはわるくないよ!!ぜんぶあのおにいさんがわるいんだよ!!」 元はといえば、いきなり自分たちを誘拐したあの人間が悪いのだ。 頬をあわせることはできないが、れいむはまりさに寄り添う。 そしてまりさの分の怒りも込めて、れいむは男を睨み付けた。 男はそのやりとりを冷めた目で見ていた。 この2匹を捕まえてから、男はまりさだけを隔離し暴行を加えた。 男にとって、まりさは重要ではなかった。 れいむの茎に実る赤ちゃんが大きくなるのを待つ間の退屈しのぎに利用されただけだ。 捕獲の際、邪魔をしたことに対する制裁の意味もあったが。 暴行に使われたのはハエ叩き。 竹製のごく一般的なものである。 スナップをきかせて延々と叩いた結果が、あのボコボコ饅頭である。 ハエ叩きは当たる部分の面積が大きいため、皮を破ることなく衝撃だけを伝える。 右頬、左頬、底部に頭頂部、後頭部。 全身余すところなく叩かれたまりさは、動くことすら苦痛なはずである。 念入りに叩かれた顔面は、見るも無残なほどに黒あざだらけだ。 『やめて!もういたいのいやだよ!』 『いだいよぉ!まりざのおかおがぁ!』 『きぼちわるいよ!なかがきもちわりゅいぃ!』 そんな叫びの声を掻き消すように、男はハエ叩きを振り続けた。 最後の頃になると、その場にいないれいむにまで助けを求めていた。 れいむを守るために戦っていたというのに、そのれいむに助けを求めるとはなんとも情けない話だ。 そして今、れいむの茎に実る赤ちゃんはプチトマトよりも一回り小さいくらいに成長していた。 捕獲した時点ではビー玉ほどであったから、だいぶ大きくなったといえる。 もうまりさに用はない。 男はハエ叩きを手に取った。 「ゆっ?おにいさんなんなの!?ゆっくりこないでね!!」 男に振り返り、れいむは警戒態勢をとる。 まりさは男の手に握られたハエ叩きを見て、黒あざだらけの顔を青くした。 「やぁああ!!!いだいのいやだよぉおっ!!!もうたたがないでえええぇぇ!!!」 ひゅんひゅんと、風を切る音を立てて男は素振りをした。 まりさの様子を見て、れいむはとっさに男の前に立ちはだかったが、横を難なく素通りされてしまった。 「さあ、続きをやろうか」 「ゆぅああ!!ゆるじでね!!もうゆるじでねえ!!」 壁に追い詰められたまりさに、容赦なくハエ叩きが飛ぶ。 鼓膜を突き抜けるような、乾いた音が部屋に響いた。 「ゆべえ!!いだいよぉお!!やめでええ!!」 倒れようとするまりさ。 そうはさせまいと、まりさの顔面に向かってハエ叩きがアッパーをする。 「びっぶぅ!!ゆぅぐぅ!!」 仰向けに倒れたところで、男は右頬と左頬に往復ビンタのごとく連続して攻撃をする。 手首のスナップが重要な技である。 「おにいさんやめてね!!まりさがいたがってるよ!!ゆっくりしないでやめてね!!」 ずりずりと近寄ってくるれいむに向かって、男はハエ叩きを突きつけた。 「赤ちゃんを叩き落としてやろうか?」 その言葉に先に反応したのはまりさであった。 「やべてね!まりざとれいむのあがぢゃんをいじめないでねっ!!」 「まりさ・・・!」 「れいむぅ、れいむは離れててね・・・!まりさならだいじょうぶだよ!」 必死で体を起こすまりさ。 それを見たれいむは無言でうつむくと、男から離れた。 「まりさぁ・・・」 「ゆっくりしていってね!!あかちゃんといっしょにゆっくりしていってね!!」 れいむに笑顔を見せたまりさだが、すぐにその表情は崩された。 やむことのないハエ叩きの嵐。 皮が破れないから餡子も漏れない。 いつまでもまりさの苦痛は続いた。 「まりさ・・・!まりさ・・・!」 れいむはただ、愛するものの名前を呼ぶことしかできなかった。 10分もすると、まりさは声すら上げなくなった。 男がハエ叩きを振り上げたまま、動作を止めた。 ドラ焼きのように平べったくなったまりさは僅かに痙攣しているものの、動く様子は見られない。 「まりざぁああ・・・・!!」 近寄ろうとするれいむに、男はハエ叩きを向けて牽制した。 「そろそろいいか。じゃあな、まりさ」 そう言うと男は立ち上がり、まりさを見下ろした。 一瞬、れいむに視線を移したがすぐに戻す。 「なにをするのぉぉ!?まりざをいじめないで!!」 れいむが言い終えるのを確認し、男は右足でまりさの体を蹴り飛ばした。 「ゆ゙っ!」 それだけ言い残し、饅頭もといドラ焼きがはじけ散る。 飛び散った餡子が壁にこびり付いた。 「い゙ゆあぁあ゙ああ゙ああ゙ああぁぁ!!!!!まりざああ゙あぁああぁあ゙ああ゙あ!!!!」 形が歪んだ帽子を前に、れいむは泣き崩れた。 最後まで赤ちゃんと自分を守ってくれたまりさ。 ありし日の親まりさと姿が重なり、れいむは赤ちゃんのことも忘れて泣き叫んだ。 「静かにしろ」 れいむの頬に、強烈な衝撃が走る。 「ゆびぃっ!?」 ひりひりと頬が痛む。 男の手に握られたハエ叩きを見て、れいむはその痛みの正体を知った。 まりさはこんなに痛いことをされていたんだ、れいむは身の危険よりも先にまりさへの感謝を覚えた。 「やべでえ!!れいむにはあがぢゃんがいるんだよ!!やべでねえっ!!」 「だったら黙っていろ。それなら叩かない」 普通だったら構わず泣き叫ぶところであったが、頬の痛みが冷静な考えを生み出した。 いま泣き叫んではまりさが守ってくれた赤ちゃんが危険にさらされる、と。 「ゆっ・・・・!ゆ・・・・!」 れいむはこぼれそうになる嗚咽をどうにか喉の奥に押し込め、代わりに涙を垂れ流した。 「そうだ。そうやって黙っていれば叩かない。赤ちゃんもちゃんと産める」 ハエ叩きを無造作に床に投げ捨て、男はアルコールランプに火をともした。 「ゆっ・・・!」 燃え上がる炎に、れいむは餡子が冷える思いをする。 それは本能からくる反応でもあったし、経験からくる反応でもあった。 れいむは以前、足(底部)を人間に焼かれ、動くことができなくなったゆっくり魔理沙の話を聞いたことがあったのだ。 あのゆっくり魔理沙も、人間に捕まった伴侶や子供を殺されて開放されたのだという。 男は右手に持った鉄の棒を火にかざしていた。 長さも太さも、ハンコほどだ。 熱で火傷をしないため、手ぬぐいのようなものを間に挟んで棒を持っている。 「さっきお前を叩いた道具、それで生まれたばかりの赤ちゃんを叩いたらどうなると思う?」 れいむに目線を移すことなく、男は言った。 声を出していいものかれいむは迷ったが、これはきっと大丈夫だろうと判断した。 「ゆっ・・・」 声に出すのも恐ろしい、れいむは返答に困る。 だが黙っていては、また叩かれてしまうだろう。 れいむは意を決して答えを告げた。 「・・・つぶれちゃうよ。・・・やめてね!おねがいだよ!」 餡子脳でも簡単に導き出せる結論だ。 あの叩く部分は赤ちゃんゆっくりの体よりもはるかに大きい。 さきほどの力で叩かれれば、簡単に潰れてしまうだろう。 「よくわかってるな。じゃあ俺の言うことを守れば赤ちゃんは潰さない」 「ゆっ!はやくおしえてね!!ぜったいにまもるよ!!」 火にかざした鉄の棒を見ていた男の目が、れいむを捉える。 「目を閉じて、俺がいいというまで黙っていろ。そうしないと・・・」 「ゆっくりとじるよ!だからあかちゃんをいじめないでね!!」 言い終える前にれいむは目を閉じた。 理解の早いゆっくりに、男は関心した。 「いいって言うまでだぞ。途中で目を開けたら、赤ちゃんがまりさみたいになるぞ」 「ゆぎっ・・・!ぜったいにあけないよ!!」 まりさみたいに、という表現にれいむは苦虫を噛み潰したような顔をしたが、目は閉じたままであった。 それを確認すると、男は熱した鉄の棒を火の上かられいむの頭上に移動させた。 そこにいるのは丸々と実ったれいむの赤ちゃんだ。 どれも順調に育っているが、まだ生れ落ちるほどではない大きさ。 男は一番手前にいた赤まりさに目をつけた。 左手に持ったピンセットで、ぴっちりと閉ざされた赤まりさの口を開ける。 目を閉じたままの赤まりさが表情に疑問符をつけるが、そんなものはどうでもいい。 赤まりさの口は、成長段階だけあってあまり大きくなかった。 ハンコの太さがぴったり合うくらいだろう。 喉も小さく、綺麗に研いだ鉛筆で穴を開けたくらいの大きさだ。 声は出るのかわからない。 男は熱した鉄の棒を躊躇うことなく、赤まりさの口内に押し込んだ。 予想通り、太さはぴったりであった。 「ゅ゙っ!?」 蚊の消え入るような、小さな悲鳴が男にだけ届いた。 れいむは赤ちゃんの危機も知らずに、目を閉じたまま待っている。 高温の鉄の棒は赤まりさの口内を焼き付けていく。 何度か鉄の棒を火に当て直しながら、男は鉄の棒で赤まりさの口内をこねくりまわした。 赤まりさはどうにか苦痛から逃れようと体を揺するが、男相手では無意味であった。 男が棒を抜くと、口をあけたままの赤まりさがいた。 口内はコゲで硬くなり、閉じることもできない。 喉も完全に焼き潰れたため、声を発することも、ものを食べることもできないだろう。 口としての機能はなく、ただ窪んでいるだけ。 そのことをわかっているのかいないのか、赤まりさは今にも死にそうな顔をしていた。 閉じた瞳から今にも涙があふれそうである。 男は思わず顔がにやけた。 時間がかかったが、男は同じように全ての赤ゆっくりの口を丸コゲにした。 赤ちゃん達から「くち」がなくなってから10時間ほど経った頃。 「ゆっ!あかちゃんうまれるよっ!」 ようやく出産のときがやってきた。 口を開けたままの赤ゆっくりが揺れ始めている。 男は読んでいた本を床に置き、その光景を楽しそうに眺めた。 一段と揺れが大きくなったかと思うと、ぽとりと1匹の赤ちゃんが床に落ちた。 長女となったのは赤れいむだ。 「ゆっ・・・!」 声をかけようとして親れいむは口を閉じた。 赤ちゃんの第一声を待とうと思ったからだ。 だが、いくら待っても赤れいむは声を上げない。 口を大きく開いているが、そこから出てくるものはなかった。 「ゆっ・・・?がんばってね!!」 生れ落ちた感動に喜んでいた赤れいむの顔は、徐々に暗く落ち込んでいく。 懸命に体を揺すったり飛び跳ねている様子から、声を出そうと努力していることが見て取れる。 静かな部屋に、赤れいむの跳ねる音だけが空しく響いた。 「おちびちゃん!ゆっくりがんばってね!!がんばってね!!」 「・・・」 飛び跳ねるのを止め、親れいむを見上げる赤れいむ。 その目には、涙が溜まっていた。 「お゙ねがいだよぉおぉおおっ!! おかあざんとお゙しゃべりしよゔよぉお゙おお゙ぉぉ゙ぉぉ!!!」 涙のダムは、その言葉をきっかけに崩壊した。 何本もの涙の線が、赤れいむの顔に浮かぶ。 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってねっ!!!ゆっぐりじでいっでねええぇえっ!!!」 「・・・」 お手本を聞かせようと、親れいむは定番のセリフを壊れたカセットテープのように繰り返す。 親の期待にこたえたいのか、再び赤れいむは体をねじったり、飛び跳ねたりを繰り返した。 そのやり取りを見ていた男は笑みを浮かべていた。 ゆっくり達のアイデンティティーともいえるセリフ「ゆっくりしていってね」は、男によって赤れいむから永遠に奪われているのだ。 それも知らずに無駄な努力を続ける親子を見ていると、笑いがとまらない。 「ゆっ!?またうまれるよ!こんどはげんきなあかちゃんがほしいよっ!」 「・・・」 茎に違和感を覚えたのか、親れいむは茎を見上げた。 間接的にではあるが「元気でない赤ちゃん」の烙印を押された赤れいむは、恨めしい顔をして親れいむを見ていた。 ふらふらと揺れる赤まりさ。 それは最初に口を潰された赤ちゃんであった。 「ゆゆぅ!がんばってね!!ゆっくりうまれてね!!!」 赤まりさはゆっくりするはずもなく、すぐに茎から離れた。 赤れいむのすぐ横に落ちた赤まりさ。 まだ目も開けていなかったが、親れいむは待ちきれないとばかりに声を荒げる。 「ゆっくりしていってね!あかちゃんっ!!ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってねっ!!」 今度の赤ちゃんは、ちゃんとおしゃべりができるはず。 親れいむの願いが声のボリュームを引き上げる。 「ゆっくり!!ゆっ!!!ゆっぐりじでねっ!!!ゆっぐりいいいいい!!!!」 とても赤ちゃんを迎える表情ではなかった。 赤まりさが最初に見た親の顔は、般若のごとく歪んだ表情であった。 「・・・」 驚いたが、声は出なかった。 口内はウェルダンを通り越して丸コゲなのだ。 赤まりさは体を起こし、声を出そうと体をひねった。 「ゆっ・・・!?こっちのおちびちゃんもなのぉおお!?」 その動きに、長女の赤れいむと同じものを感じる親れいむ。 しばらくすると、赤まりさは飛び跳ね始め、そして泣き出してしまった。 やっぱりこの子もおしゃべりができない子なんだ、親れいむはその事実を認めざるを得なかった。 「で、でもつぎのあかちゃんはきっとゆっくりできるよ!!」 茎を見上げる親れいむの目は、希望と不安が入り混じった色をしていた。 焼かれた時点でこの結果は決まっていた。 結局、生まれ落ちた赤ちゃんゆっくり9匹は、1匹として第一声をあげることがなかった。 「どぼじでぇ・・・・どぼじでなのぉお・・・!?」 9匹の赤ちゃんを前に、オロオロと対処に困っている親れいむ。 それを黙って見つめる9匹の赤ゆっくりも神妙な面持ちだ。 「ゆっくちさせて」「ゆっくちちたいよ!」「おかーしゃんとすりすりしたい!」などと一部の人間が聞いたら有頂天になるようなフレーズを言うものはいない。 中には涙を流している赤ゆっくりもいるが、口が笑っている状態のため、あまり可哀想に見えない。 「ゆっ・・・!」 親れいむは思う。 喋れなくても、自分とまりさの大切な赤ちゃんなのだと。 少し生活に困るかもしれないが、自分が守ってあげればきっと元気な、ゆっくりした子に育ってくれるはずだ。 この子達にとって、ただ一人のお母さんなのは自分。 亡きまりさが守ってくれた赤ちゃん。 自分を守ってくれた親まりさのようになるんだ。 親れいむは赤ちゃん達を正面から受け止める決心をした。 「みんな、ゆっくりしていってね!!!」 力強さを感じる親れいむの「ゆっくりしていってね」。 赤ゆっくりから不安が消えた。 このお母さんならゆっくりさせてくれる、そう感じるほど頼りがいのある声であった。 「それじゃあゆっくりごはんをたべようね!」 まずは赤ちゃんの旺盛な食欲を満たそうと考えたのだろう。 親れいむは水に濡れた犬のように体を揺すり、頭に生えた茎を落とした。 「ゆっくりたべてね!」 満面の笑みで親れいむは子供達を見守る。 赤ゆっくりの目も笑っていた。 幸せな家族のワンシーン、そうなるはずだった。 「ゆ・・・?ゆっくりたべてね?」 茎の周りに9匹の赤ゆっくりが群がっているのだが、1匹として食べる気配がなかった。 顔を近づけ、口に含むような動きをするが、それから先へは続かない。 口内は硬くて動かない、そして喉もないので飲み込めない。 男だけが赤ゆっくりの不思議な行動の理由を知っていた。 「ゆっ!わかったよ!」 何を思いついたのか、親れいむは赤ゆっくり達の間に押し入り、茎にかじりついた。 むーしゃむーしゃと言いながら、茎を咀嚼する親れいむ。 横取りされるのではないかと、不安な表情で9匹が見守っている。 「まずはおちびちゃんからだよ!」 一番近くにいた赤れいむに、親れいむは口を近づける。 そして、開きっぱなしの赤れいむの口に、噛み砕いて唾液まみれになった茎を流し込んだ。 「かたくてたべられなかったんだね!!でもゆっくりりかいしたよ!!」 記憶をたどり、自分が赤ちゃんであったときのことを親れいむは思い出していたのだ。 ご飯が食べられなかった自分におかあさんが、噛み砕いたご飯を食べさせてくれたことを。 口移しを終え、親れいむは達成感にあふれる顔になった。 「ゆっくりたべてね!むーしゃむーしゃだよ!」 だが赤れいむはそれに答えず、固まっていた。 開いた口には噛み砕かれた茎がそのまま残っている。 「むーしゃむーしゃだよ!!!ゆっくりりかいしてね!!むーしゃむーしゃだよっ!!!」 自分はできたこと。 それなのに、なぜ自分の赤ちゃんはできないのだろう。 親れいむの中に不安が広がり、声が荒くなっていく。 それを敏感に察知した赤れいむは、必死で飲み込もうと努力をした。 だが、開いてない喉にご飯は通せない。 しばらくすると、動くことをやめて親れいむを見つめ始めた。 助けてくれると信じて。 「・・・」 「どうじでぇ・・・?ごはんをたべないとゆっぐり゙できないのにぃいい・・・・」 他の赤ゆっくりにご飯を食べさせようとしたが、結果は変わらなかった。 途方に暮れた親れいむは、男に頼ることにした。 「おにいざん・・・・あかちゃんにごはんをたべさせてあげて・・・」 親れいむの顔はどことなく歪んで見えた。 涙で皮がふやけたのかもしれない。 「無理だな。赤ちゃんの世話はお母さんのお前が一番上手に決まってる」 「ゆぅ・・・そうだよね・・・ごめんね・・・」 「そんなお前が赤ちゃんにご飯を食べさせられないなんて」 「ゆゆ・・・」 「お前が無能なせいで赤ちゃん達はゆっくりできないんだよ。ダメな親を持って残念だったね、そこの赤ちゃん達」 男が言い終えると、赤ゆっくり達はうつむいていた顔を上げた。 その顔に涙は無い。 あるのは怒りの表情。 口は笑っているが、その目は鋭く、眉は45度を保っていた。 「ゆっ・・・?どうしたのおちびちゃんたち・・・?」 最初に飛び掛ったのは赤まりさだ。 プチトマトほどの赤まりさが、バスケットボールほどもある親れいむの頬にタックルを仕掛ける。 「ゆ!?」 特に反撃をしたわけでもない。 体格差から、親れいむは赤まりさを弾き飛ばしていた。 「どうしたの!?ゆっくりやめてね!!」 その赤まりさを引き金に、次々と赤ゆっくり達が親れいむに体当たりを始める。 無言で飛んでくる弾丸プチトマト。 顔には怒りと憎しみだけが写し出されていた。 「やめてねっ!!おかあさんだよ!?ゆっくりやめてね!!」 親れいむはケガをするどころか、痛みすら感じなかった。 質量も速度もない赤ちゃんゆっくりの体当たりには、攻撃のコの字すら感じられない。 しかし、親れいむはその衝撃を通じて赤ゆっくり達の声を聞いた。 『おまえのせいでゆっくりできない』『やくたたず』『それでもおやか』『ゆっくりしね』 『ゆっくりさせろ』『まりさがくるしいのはおまえのせいだ』『れいむはゆっくりしたいのに』 『おねがいだからゆっくりさせてよ』『もっとゆっくりできるおかあさんがほしかった』 無論、それは親れいむの餡子内で勝手に想像した言葉にすぎない。 だが赤ゆっくり達が訴えたい内容としては、正しいものだろう。 本来であれば、そっちの人たちが天にも昇るようなセリフで親を罵っているはず。 一言も喋ることなく体当たりを繰り返す赤ゆっくり達の姿は、実に新鮮だ。 先ほど弾かれた赤まりさは、ころころと床で数回転がると、すぐに立ち直った。 そして再び眉を引き締め、親れいむの元へ跳ね寄る。 今度は顎のあたりを目掛けて体当たりを繰り出し、また弾き飛ばされた。 赤まりさは言葉を発することなく、延々と同じような動作を繰り返した。 その異常な光景に、男は声を立てて笑い始めた。 親れいむが男を一瞬だけ睨んだが、すぐに赤ゆっくり達に向き直る。 「もうやべでえええ!!!ゆっぐりじでよぉおおおっ!!!」 壁に追いやられた親れいむが叫んだ。 相手は弱っている、と勘違いした赤ゆっくり達がさらに体当たりを加え始める。 赤ゆっくり達の体には、かすり傷ができていた。 親れいむにぶつかった時や、床を転がるときにできたのだ。 体当たりをする度に増え、見ていて痛々しいのだがそれでも懸命に赤ゆっくり達は立ち上がる。 それを見て、親れいむの心が痛む。 傷だらけになってまで自分を殺そうとする赤ゆっくり達に、体は痛まないが心が痛む。 ゆっくりさせてあげると誓った赤ゆっくりが、ゆっくりすることなく自分に立ち向かう。 なぜこんなことになってしまったのだろう。 親れいむは嗚咽をこぼし、涙を流す。 それが赤ゆっくりを調子付けているとも知らずに。 「赤ちゃん達、ちょっといいかな」 猛攻を止めたのは、暢気に鑑賞していた男。 何かを期待しているのか、赤ゆっくり達の目が輝いている。 「君達、ご飯食べられないんだよね」 9匹が目線を床に移した。 親れいむだけは男の目を見たままだ。 「あんまり運動すると、おなかすいて死んじゃうよ」 「ゆっ!!」 親れいむは思わず声を漏らしてしまった。 ご飯を食べないと餓死してしまう。 そんなことにまで頭が回っていなかったのだ。 「ちびちゃんたち!うごいちゃだめだよ!!おなかがすいてしんじゃうよっ!」 その言葉に、赤ゆっくり達は顔を青くした。 もうすでに空腹感があるのだろう、迫りくる死をゆっくり理解したようだ。 「ゆぅぅううぁぁああ!!!どうじだらいいのぉおぉ!!??」 慌てふためく親れいむとは裏腹に、赤ゆっくり達は静かに瞳から雫をこぼした。 「泣いてると、喉が渇いて死んじゃうよ」 そもそも、喉が渇くどころかコゲている。 男の言うことがわかるのか、赤ゆっくり達は顔に力を入れて涙を止めようとした。 「はやくじないどあかちゃんがゆっぐりでぎなくなっぢゃうよぉおぉ!!!」 生まれたときからゆっくりしていない、男はそんな感想を持った。 8時間が経った。 男はその間、一切口を挟むことはなかった。 死のゴールが見えているゆっくり達をいじる、そんな無粋なマネはしない。 最期の時まで生暖かく、助かる道を探す親れいむを見守るのだ。 そんな道など存在はしないが。 「ああぁぁ・・・おちびちゃん・・・ごめんねぇええ・・・・」 今、1匹の赤ゆっくりが目を閉じた。 通算8匹目。れいむ種では最後の1匹となる。 あれから、赤ゆっくり達は何もしなかった。 忍び寄る餓死の足音におびえながら、目の前にいる親れいむを恨む事でなんとか正気を保っていたのだ。 憎しみに染まった8の瞳が、親れいむをずっと捉えていた。 赤ゆっくりは総じて体力が少ない。 小さな体では、体力となる餡子があまり確保できないからだ。 旺盛な食欲は、生きるための本能である。 親れいむへの攻撃と、それによって負った傷は予想以上に赤ゆっくりから体力を奪っていた。 7時間を越えた辺りで最初の1匹、赤まりさが永遠にゆっくりした。 それから先は早く、赤ゆっくりは次々と瞳を閉じた。 動かなくなった赤ゆっくりは、ほとんど皮だけの状態になっていた。 最後まで親れいむを睨み続けていた目の周囲や眉間に、深いシワが残っている。 「がわいいれいむがぁあ・・・!おめめをあげでねぇえ!!れいむ゙をにら゙んでもい゙いがらぁ・・・おね゙がいだよお・・・・」 れいむれいむと泣き叫ぶ親れいむを、最後に残った赤まりさが真っ赤になった目で睨みつける。 赤まりさの体はほとんど皮だけになっており、あちこちにシワが走っていた。 もう長くないはずだ。 そう思っていた男、そして親れいむも赤まりさの次の行動に驚く。 「・・・・ゆ゙っ!?」 たるんだ皮を引きずり、赤まりさは親れいむに近寄っていく。 その目に光はない。 幼くして死を受け入れた目。だが、その奥には黒く歪んだ感情が潜んでいた。 「まりざぁ・・・!ゆっぐりしようねっ!おがあじゃんがすりすりじであげるがらねっ!!」 隠された激情に気がつかない親れいむ。 最期の時を親である自分と過ごそうと思っている、そう勘違いした。 「ゆ゙!おがざんと・・・いっじょにゆっぐりじようねっ!!」 だから、親れいむは笑顔を作った。 赤まりさをゆっくりさせてあげたい。 切なる願いだった。 「・・・・ゆ?」 体に感じた、小さな衝撃。 それは、赤まりさの最期の体当たりだった。 「ゆ゙ぁあ゙ああ゙あぁ゙ぁあ゙っ!!!!」 弾けとんだ赤まりさは、床に落ちて絶命した。 仰向けに倒れたままだ。 「あ゙りざあぁあぁぁあ゙あ!!!どぼじでえ゙ええ゙ええ゙っ!?!?!?」 他の赤ゆっくりと違い、赤まりさの目は開いたままだった。 完全に光を失いながらも、その瞳は親れいむを睨みつけていた。 「あ゙ぁああ゙ああ゙ぁあああ゙ああ゙あ゙あ!!!!!!ごべんねええ゙ぇえ゙ええ゙っ!!!ごべんねぇええ゙え゙!!!おがあ゙ざんをみらいでえぇえ゙え!!!」 狂ったように嘆き叫ぶ親れいむを置いて、男は部屋を後にした。 「ぁあ゙あ゙・・・・あ゙ああ゙あぁ゙あ゙あ゙ぁぁ・・・」 外へ通じる扉を開け放したまま。 しばらくして男が部屋に戻ると、そこに親れいむの姿は無かった。 床には赤ちゃんゆっくりの死骸も見当たらない。 食べたのか持ち帰ったのか、男にはもう興味のないことであった。 それから数日後、農家の男性が1匹のゆっくり霊夢を発見した。 どうやら洞窟の中で赤ちゃんを育てているようだった。 男性は、そのれいむがエサを探しに行っている間に赤ちゃんを捕獲ようと、洞窟に入った。 だが中にいたのは、真っ黒になって腐っていた9匹の赤ちゃんゆっくりであった。 帽子やリボンがあったので、かろうじて赤ゆっくりだと判断できた。 不気味に思い、洞窟を離れたところで親のれいむが帰ってきた。 様子を伺っていると、洞窟の中かられいむの歌が聞こえたり、赤ちゃんにご飯を食べるよう促す声が聞こえてくる。 男性は気味が悪くなり、その場から逃げたのであった。 それからさらに数日後。 男は書斎で、一冊の本を手に取った。 「お、また来てる」 文庫本ほどの大きさ。 今もこの世界や別の世界で、ゆっくり達が虐待されている。 その様子を自動で小説に変換し、ページを増やす、魔法の本。 男はこの本に影響されて、ゆっくり霊夢を虐待することに決めたのだ。 本に登場する赤ちゃんゆっくりは、大抵我侭で口が悪く、生意気で浅ましい。 男の経験でもそれは正しかった。 親を親とも思わないものばかりだ。 そんな物語を読んでいた男は、赤ゆっくりをゆっくりさせることなくその命を散らせてやろうと思ったのだ。 まったく関係のない親れいむにとってはいい迷惑である。 「・・・これ、俺じゃん」 新しいページには、赤ちゃんゆっくりの口を焼く男の話が載っていた。 どう読んでも自分のことである。 「あー、新作まだかなー」 男は本を棚に戻すと、たまった鬱憤を晴らすため、今日も森へと足を運んだ。 作:アルコールランプ? このSSに感想を付ける
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・色々と無茶ある展開がありますが仕様です。 ・俺設定あり。 ・ゲス制裁ものですのでゲスしか死にません。 天然あき 「まりさ、ごはんだよ」 男は傾いた犬小屋に向けて話し掛ける。 すると、 「ゆぅ…」 ずーりずーりと一匹のゆっくりまりさが明らかに不調そうな感じで出て来る。 「む~しゃ…む~しゃ…」 全然幸せそうにない感じでまりさは与えられた食事(人参山盛り)を食うまりさ。 その身体にはベルトが食い込まんばかりに巻かれており、更に鎖に繋がれていた。 「さて、それじゃあ散歩に行こうか」 「ゆ!!?」 生気を感じられない状態で食事していたまりさの身体がビクッ!と震える。 「や、やなんだぜ!! まりざはここでゆっぐりしてるからおざんぼはひどりでじでるんだぜ!!!」 まるでこれから拷問でもされるかのようにまりさは恐怖している。 しかし男は屈託のない笑みで、 「何言ってるんだい、行くよ」 男はリードを付け替え、iPodで音楽を聴きながらまりさを引っ張って外へと連れていった。 「やじゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 男には届かない、まりさの悲痛な叫びが響いていた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 数日前…。 「むきゅうう…こわかったわ…」 成体のぱちゅりーが死ぬかと思ったみたいな口調で呟く…。 「あのありすたち…もうゆっくりできないでしょうね…いなかものとはいえちょっとかわいそうだわ…」 成体のありすが何かを心配するように呟く。 「そんなことよりおなかすいたね!ごはんにしようよ!!」 空気の読めない発言の成体のれいむ。 「でもにんげんはひどいんだぜ! あそこまでするひつようはないんだぜ!!」 意味のない義憤に駆られる成体まりさ。 「わかるよーあれはきっとぎゃくたいおにーさんなんだねー!!」 無駄に明るい声でいう成体のちぇん。 計五匹のゆっくりが野良にしては格段に広いおうちの中で話し合う。 この五匹は元は飼いゆっくりであったが若気の至りで家出をして帰れなくなってしまったのだ。 飼い主も少し待てば帰ってこれるだろうと犬と同じように判断して結局放っておいてしまったのだ。 ゆっくりに犬のような帰巣本能はないのだから戻れる訳はない。 こうして五匹は名実共に野良となってしまった。 捨てられたのではないから銀バッジを付けたままで野良生活を送る事になり、飼いゆっくりに手を出したらどうなるか知る小賢しいゲス飼いゆっくりから襲われる事もなく、 五匹という数も味方して野良のゆっくりから食事のおこぼれを貰ったり、奪ったりしていた。 気付けば身体も大きくなり、五匹は辺りから恐怖の対象となっていた。 去勢済みな為、無意味なすっきりをする事もなく、五匹はますます増長していった。 しかし五匹がいくら野良の中で力を持とうとそれは所詮野良の中での話。 五匹の心は未だに飼いゆっくりであり、その地位に戻る事を未だに考えていた。 まぁ簡単に言えばこいつ等は元飼いゆっくりのゲスで、飼いゆっくりになりたがっている。という事だ。 それは別に何処にでもある話だ。何の不思議でもない。 だが問題はそこではない。 問題はゆっくりではなく人間の方にある。 ただそこにいるだけでゲスを引き寄せ、結果的に死に至らしめる…そんな天命を担っているのではないかと思わせるような男がこの五匹の住む町にいるのだ。 ゲスである限り…例え飼いゆっくりであろうとも逃げられないゲスゆっくりにとっての悪魔が…この五匹のすぐ側まで迫っていた…。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 「さっさとそのあまあまをよこすんだぜええええ!!!」 「おちょうしゃんをはなぶぇ!!?」 「ゆ?なにかふんだきがするよ」 「きっとごみなんだねわかるよー」 「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛おちびじゃんがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 「ふん、みにくいこえね。 そんないなかものにこのあまあまはふさわしくないわ!」 「むっきゅっきゅっきゅ♪ぶざまね!」 次の日、五匹はまりさとれいむの家族を襲い、集めた食糧を強奪していた。 先日この公園をのさばっていたゲスなまりさが人間に連れ去られて以来五匹の天下だった。 もはやこの五匹にしても逆らうゆっくり等おらず、好き放題していた。 「ゆるじでぐだばい!!ごれがないどおぢびじゃんがじんじゃうんでずう゛う゛う゛う゛!!!」 「うるさいんだぜ!!」 必死に懇願するまりさを五匹は体当たりで吹き飛ばす。 「ゆぎぃッ!!?」 「まりざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 ボロボロになったまりさとれいむ。 潰された子まりさと恐怖に震える子れいむ二匹。 「これはまりさたちがむ~しゃむ~しゃしてやるからかんしゃするんだぜ!!」 「いなかものにはもったいないあまあまね!!」 五匹はまりさ一家を嘲笑しながら菓子パンを貪る。 銀バッジになるまでに教育された礼儀作法はもはや記憶の片隅にも残っていない。 「ゆうぅ…」 「だいじょうぶ…れいむ?」 菓子パンを食べ終わって五匹が去った後、自分がボロボロにも関わらず、つがいのれいむにすりよるまりさ。 「おちょうしゃんきょわきゃっちゃよおおおお!!!」 子れいむが親に駆け寄る。 「ごべんね…おとうざんがじっがりじてないばっがでぃに…」 「そんにゃきょちゃはにゃいよ!おちょうしゃんきゃっきょよきゃっちゃよ!!」 慰め合うまりさ一家。 「大丈夫かい?」 すると騒がしく泣き叫ぶまりさ一家に話し掛ける誰か。 「ゆゆう!?にんげんしゃんだあ゛あ゛あ゛!!?」 「ごべんなざいおちびじゃんだけでもゆるじでぐだざい゛い゛!!!」 人間を見るなり即座に謝罪するまりさ。 「いや…とって食う訳じゃないからそうビビらないでいいよ…」 ゆっくりの反応に若干引き気味となる背広姿の男性。 「ところで君達どうしたの?野良にしてもぼろぼろじゃないか」 「ゆ、ゆうそれは…」 男に向けて怯えた目を向けるまりさ一家。 「大丈夫、俺は君達に危害は加えない。 ただどうしてそんな怪我なのか知りたいだけさ」 男は屈託のない笑顔を向ける。 邪気が無い事がゆっくりにもわかった。 まあ邪気がないのがこの男の厄介な点であるのだが…。 「ゆうぅ…実は…」 親まりさが事情を説明する。 「それは災難だったね…」 男はまりさ一家の境遇に深く同情する。 これが演技でもなく本気なのが男の異常な所だ…。 「そうだ、これをあげるよ」 男が自分の鞄から取り出したのは潰れたメロンパン。 後で食おうと思っていたのだが鞄に入れっぱなしだったので潰れてしまっていたものだ。 「ゆうう!?メロンパンさんだよおおお!!?」 途端に目が爛々と輝くまりさ一家。 とんでもない喜びように男も顔を綻ばせる。 基本的に善人でお人よしなのだ。 ただ思考が常人よりぶっ飛んでるだけで…。 「おにいざんありがどうございまず!!!」 顔面を地面に擦り付ける親まりさ。 「いやいいって。さ、早く食べなよ。 持って帰ると他の奴にとられちゃうかもしれないからここで食べた方がいいよ」 確かに人がいるすぐ側で奪うなんて愚を犯せばどうなるか野良のゆっくりならばわかって当然だろう。 「む~しゃむ~しゃし、しししあわせえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 耳がつんざく激烈な歓喜の絶叫を聞きながら男は笑みを崩さない。 基本的に細かい事は気にしないのだ。 悪い方向に…。 「ん?何だ餌付けか?」 すると男の目の前に背の高い男性が話し掛けてきた。 「あれ?研兄じゃん。久し振り」 どうやら男と背の高い男性は知り合いらしい。 「そうだな…直接会うのはお前が大学卒業して以来だな…。 近所なんだからたまには顔出せよな」 「それはお互い様。で、どうしたの?散歩?」 男はメロンパンをゆっくりと味わうまりさ一家を見ながら尋ねる。 研兄と言われた男性はそれに答える。 「いや、ちょっと野良れいむを探しててな…。出来れば家族じゃなくて独り身の…」 「それでわざわざ公園に探しに来たって訳ですか…」 「そうなるな…。やはり素材は自分で調達するのが一番信用出来る」 「ゆっくりごちそうさまでした!!!」 研兄が言い終わった直後、親まりさがメロンパンを食い終わった宣言をする。 「そういえばこいつ等…お前のペットか?」 研兄がまりさ一家に興味を抱き、男に尋ねる。 「いいや、他のゆっくりにボコられてたんでちょっと慈悲の御手を…」 「何だ、まぁたお前は野良に餌やってんのか…。 捨て犬猫とか何回も拾ってその度に親にどつかれてたもんな。お前ん家周りから動物園って言われてたよな」 「う…小学生の頃の話を持ち出さないでくれよ…。 それに拾った奴はちゃんと里親見つけたし、飼ってた奴もちゃんと天寿全うさせたっての…」 「まぁそれはいい…。 で、こいつ等どうすんだ?」 「どうすんだって…」 男はまりさ一家を見る。 「おにいさんどうもありがとうございました!!」 「おにいしゃんのおきゃげじぇとっちぇもゆっきゅちできちゃよ!!ありがちょうございましゅ!!」 満面の笑みを浮かべて男に感謝するまりさ一家。 「……………」 「…このままはいさよならって出来るタイプの人間じゃなかったよなお前は…」 男の顔がちょっと罪の意識に苛まれたのを見越して研兄が意地悪っぽく言う。 「けど…俺…ゆっくりの飼い方なんて知らないし…」 「そんなん犬飼った時みたいにすりゃあいいんだよ。ちゃんと飯食わせて躾ければ何の問題もない」 「ブリーダーの台詞とはとても思えないな…」 「ブリーダーはあくまで副業だ。 本業は研究者だ。ま、虐めるのはここまでにするか…さてと」 研兄はまりさ一家を見下ろす。 「ゆ…おにいさん…どうしたの?」 新たな人間がこちらに意識を向けた事で若干恐怖するまりさ一家。 「ふむ、このままじゃこいつ等、他の野良ゆっくりの嫉妬の八つ当たりで死ぬぞ」 「えええ!!?」 「ゆゆゆううう!!?」 男とまりさ一家は同時に驚く。 「人間から食い物貰っていい目みたんだ…逆恨みされてもおかしくない…」 「やじゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛じにだぶない゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!?」 「いくら何でもそんな…」 男は研兄の言った事が信じられないようだ。 「信じるも信じないも御自由に…けどま、こっちも見付けちまった以上見過ごすのは趣味じゃない…」 そう言いながら研兄はしゃがみ、目線を親まりさの高さに合わせる。 端から見れば随分面白い体勢だが当人は大真面目だ。 「ゆ、ゆぅ…?」 研兄の行動に戸惑う親まりさ。 今まで人間に見下ろされた事はあっても同じ目線に立たれた事は無かったからちょっと不安げだ。 「まりさ…一度しか言わないからよく聞け…お前俺の飼ってるれいむと友達になってみないか?」 「ゆ?」 親まりさはその言葉をよく理解出来なかった。 「言い方が悪かったな。 お前達、飼いゆっくりになりたくないか?」 「ゆ…ゆうううううううッ!!?」 それはまりさからすれば願ってもない事だ。 生ゴミを漁り、明日をも知らぬ日々から脱せられる…。 自分はそれでも構わない…けどおちびちゃんはゆっくりさせたかった親まりさか らすれはまさしく救いの手だ。 「ただし、お前の子供はお勉強して金バッジ…少なくとも銀バッジはとれるよう になってもらうぞ」 「ゆ、ゆううううう!!?」 喜びのあまり声にならない叫びを放つ親まりさ。 「返事は?」 「ゆ!?おねばいじばずおにい゛ざんんんッ!!!」 「れいむからもおねがいじまずううううッ!!!」 つがい揃って顔面を地面に擦り付ける。 頭を下げているイメージなのだろうがそうは見えない。 「いいのか研兄?」 男が尋ねた。 「別に構わないさ。シングルれいむを探すついでだ。弟分の不始末位はしといてやるよ」 研兄はそう言って笑う。 「全く…弟分っていつまでも小学生の頃の話持ち出さないでくれよ…」 「でもお前だって研兄って呼んでくれてるじゃんか」 「それはそれ、これはこれだよ」 「ま、いいさ。 こいつ等は俺が連れてくので構わないな?」 「ああ、でも出来れば変な実験に使ったりしないでくれよ」 「それはこいつ等次第だ。飯食わせるんだ、その分の基はとらせてもらうよ。ほら行くぞお前等」 「ゆ!わかったよ!おちびちゃん、おにいさんにゆっくりついてきてね!!」 「おにいしゃんありがちょうございましゅ!!」 「おにいしゃんのおきゃげでゆっきゅちできちゃよ!!」 「どう致しまして。お前等も見限られないようにしっかり勉強しろよ」 素直に感謝されてむず痒い感覚を感じながらも男は笑顔で答える。 「プ…勉強しろよって…お前が言うなよな…ククク…」 「うっさいなもう!!いいからさっさとれいむ探しにどっかいけえええ!!!」 笑い出す研兄に対して顔を真っ赤にして叫ぶ男。 「…ああわかったわかった。 ま、以後は気を付けろよ。 “情けは人の為ならず”って言うだろ。それじゃ行くぞ」 「ゆ!わかったよおにいさん!」 「しんじゃったおねえしゃんもいっしょだよ!」 「そうだね、おちびちゃんはまりさのおぼうしにおちびちゃんをはこんであげてね」 こうして、研兄はまりさ一家を引き連れて男から去って行った。 「研兄…情けは人の為ならずって情けが人の為にならないんじゃなくて、人にした情けが周り巡って自分に返ってくるって意味だぞ…」 マジボケなのかどうかわからず、ツッコミするタイミングを逸した男は一人呟いていた…。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「むっきゅううううん!!?どうぢであんなぐずどもががいゆっぐりになるのお゛お゛お゛お゛お゛!!?」 「あんなのよりまりざのほうがゆっぐりじでるんだぜえ゛え゛え゛え゛!!!」 「わがだらないよおおおおおおッ!!?」 「あのめろんばんざんはでいぶのぼのなのに゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!?」 どうやら一部始終を五匹のゲスゆっくり共は盗み見ていたようだ。 おそらく男が見ていなければまりさ一家からメロンパンを強奪していただろう。 「あのじじいたちはみるめがないわ!! こんなとかいはなありすがいるのにあんなきたないやつらをつれていくなんて!!」 ボロボロにしたのはお前等だろうが、とツッコミを入れる者はいない。 「むきゅ…でもこれはちゃんすかもしれないわ…」 「ゆ?どういうこと?」 冷静さを取り戻したぱちゅりーが呟く。 「あのじじいはあんなゆっくりできないやつにどうじょうしておいしそうなあまあまをあげるようなばかよ。 ぱちぇたちならよゆうでかいゆっくりにするわよ!」 どういう理論の飛躍でそうなるのかわからないが、そういう考えが意外と上手くいくのがこの男と相対するゆっくりの常だ。 それが決して幸福等ではないが…。 「でもあのいなかもののじじい…どこかでみたきがするわ…」 ありすが何となく不安げに呟く。 何かしら嫌な予感がするのだろう。 それは正しい。生き残りたくばその予感に従うのが正しかった…。 しかし、 「むきゅ、だいじょうぶよ!ぱちぇのずのうとまりさのぱわーならあんなじじいになんてまけないわ!! じじいのおうちをのっとってぱちぇたちのゆっくりプレイスにするのよ!!」 「そのとおりなんだぜ!!」 男を一度でも見た時点で生き延びる事等出来る訳もなかった…。 「ゆう!じじいはまりささまをかいゆっくりにするんだぜ!!」 すると突然男の目の前に五匹とは別のゆっくりまりさとれいむのつがいが姿を現した。 「ゆゆう!?さきをこされたんだぜええ!!?」 「はやくあのまりさたちをせいっさいしないとだねわかるよー!!」 「むきゅ、ちょっとまって!?ようすがへんよ!!」 先を越され、焦るまりさとちぇんをぱちゅりーは止める。 男に何か変化があったのだ。 それはつがいのれいむがある言葉を言った直後の事だった。 「かわいくってごめんねー!!」 「!!?」 突然男の身体が強張る。 そして…、 「…謝らなくって…いいんだよ…」 男は号泣しながらそう告げた。 その後はもうテンプレだった。 髪の毛を毟られ、男の価値観で「可愛くなくなった」れいむ。 そんなれいむを助けようとして返り討ちに遭って蹴り一発でボロボロにされるまりさ。 「ひ、ひどいんだぜ…」 その一部始終を見てた五匹も絶句している…。 まさかあんな甘ちょろいジジイがあんな事をするとは思ってなかったのだろう。 「むきゅう…これはすこしさくせんをねらないとだめね…」 だがメロンパンという甘い誘惑は五匹にとっては絶対に譲れないものだった。 あの光景を見ても意志を変えない辺りは流石ゆっくりと言うべきだ。 「それじゃ、頑張ってね」 男はれいむの成れの果てとボロボロになったまりさ…すなわちボロまりさに一瞥すると去って行った。 「ゆうううう!!?いっちゃったよぱちゅりー!!?」 「はやくあとをおうんだぜ!!」 急いで後を追おうとするまりさ。 「まってまりさ!!」 それをありすが止める。 「どうしてとめるんだぜありす!!」 「おもいだしたわ!あのにんげん!このまえまりさとありすをゆっくりできなくさせたやつだわ!!」 「ゆゆう!!?」 「むきゅう!!?」 ありすの言葉に残り四匹が驚愕する。 ありすの言うまりさとありすとは最近この公園で好き放題していた二匹のつがいの事だ。 「ゆっくりしていってね!!」の言葉や口に隠した石等を利用して公園の数多くの野良ゆっくりを血祭りに上げたこの公園に住むゆっくりからは恐怖の象徴であったゆっくりだ。 五匹も二度しか出会っていなかったがその数少ない遭遇の一度目で五匹の中で最も強いまりさはその恐怖の象徴まりさに敗北していた。 そして二度目の遭遇、と言うか覗き見した時にそのまりさとありす、そしてその子供達は一人の人間に敗北した。 恐怖の象徴まりさは家族を見捨てて逃亡し、ありすとその子供は今目の前にいるつがいのれいむのように「可愛く無くなって」いた。 その結果この公園のゆっくりの勢力図は変わり、この五匹が好き放題するようになった。 それは今はどうでもいい。 問題はあの男がゆっくり出来ない人間であるという事だ。 「ゆ、あのときまりさはゆだんしてたんだぜ!!いまはあんなゆっくりしてないまりさなんかすぐにころせるよ!! だからあのまりさみたいにあんなじじいにまりさがまけるわけないよ!!」 だが、無駄にプライドの高いゆっくりが自身の恥部を認める訳がなく、今なら大丈夫という根拠のない自信が男を忌避しようとする正しい判断に辿り着けない。 そこまでゆっくりからすれば男はカモに見えるのだ。 自分達がアンコウの持つ光に近付く哀れな小魚と同じだとも気付かないで…。 「むきゅ、おかしいわ。ゆっくりできないにんげんならあのまりさたちにあまあまなんてあげないわ」 ぱちゅりーが男の行動に違和感を感じて考え込む。 元飼いゆっくりだけあって疑い深いようだ。 「そうね、もしかしたらべつじんかもしれないわ」 「たとえおなじでもこんどあったらぎったんぎったんにしてやるんだぜ!!」 だが十か一しか区別出来ないゆっくりに人間の多面性が理解出来る訳もなかった。 なので、 「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛!!?」 「いぢゃいよおおおお!!?」 「さぁかくさないでさっさとはくんだぜ!!」 「かくしてもむだなんだねわかるよー」 当事者であるゆっくり達に聞く事にした。 「むきゅ、かたほうだけいきてればいいわ」 「わかったんだぜ!ゆっくりできないくずはさっさとじねえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ゆぎゅぶう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!?」 まりさは可愛くなくなった元れいむを踏み潰す。 「でいぶう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!?」 「うるさいんだよー!!」 「げぶる!!?」 騒ぐボロボロになったボロまりさをちぇんは体当たりして黙らせる。 「むきゅ、これからまりさにはぱちぇのしつもんにこたえてもらうわ」 「もしぱちぇのしつもんにうそをつくようないなかものならさっきのれいむみたいに…」 「せいっさいするよ!!!」 「わかったー?」 「ばい゛い゛い゛い゛わがりまじだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 踏んだり蹴ったりなボロまりさは泣き喚きながら答えた。 「むきゅ、それじゃきくわよ…」 ぱちゅりーはそう宣言して質問を始めたのだった…。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「むきゅ、なるほどね…」 ぱちゅりーは大体の話を理解した。 結論からすれば「ごめんなさい」と謝ったから謝らずに済むようにしただけだという事だ。 つまり、 「むきゅ、あなたたちはばかだったことね!!」 ぱちゅりーが嘲笑しながらボロまりさに告げる。 「まりざはばがじゃないよおおおおおおお!!?」 「うるさいんだぜ!!」 「ゆべぇ!?」 反論するボロまりさをまりさは体当たりで黙らせる。 「むきゅ、ぱちぇはけんじゃなめいあんをおもいついたわ!! これであのじじいからゆっくりプレイスをとりもどせるわよ!!」 「ゆゆう!!?ほんとう!?」 「わかるよー!みんなでゆっくりできるんだねー!!」 「とってもとかいはよぱちゅりー!!」 めいあんの内容すら聞いていないのに勝手にもう男の家を奪い取れたかのように騒ぐゆっくり。 「ゆぐ…もぅ…おうぢがえぶぅ…」 一方ボロまりさは身体をず~りず~りと引きずりながら逃げようとする。 「どこへいくつもりなんだぜ?」 だがそうは問屋が卸さない。 まりさがボロまりさに立ち塞がりボロまりさの移動を邪魔する。 「ゆ、ゆぅ…まりざは…じづもんにぢゃんどごだべまじだ…だがら…ゆるじでぐだばい…」 ボロまりさは目に涙を浮かべて懇願する。 つがいのれいむは死に、自分も無事ではない怪我を負っている。 つがいのれいむの仇をとるなんて余裕もない。 生き残る事で精一杯だ。 つがいのれいむの仇に命乞いしてでも生き残りたかった。 だが、 「むきゅ、そいつはもうようなしよ。まりさ、さっさとせいっさいしてね」 だがぱちゅりーはどうでもよさそうにまりさにボロまりさを殺すように告げた。 「どぼぢでえ!!? じづもんにごだえだらだずげでぐれるんじゃながったのぉ!!?」 話が違うと叫ぶボロまりさ。 それに対して、 「むきゅ、クズのぶんざいでわめかないでね。ぱちぇのおみみがくさっちゃうわ」 お前等に耳なんかねえだろうが、とここに人間がいたらツッコミを入れていたが今は残念ながらゆっくりしかいない。 「それに、こたえたらせいっさいしないなんてだれもいってないわ。いなかものはこれだからやだわ」 確かに答えなかったら殺すと言ったが答えたら助けるとも言っていなかった。 だがそれはあまりに暴論だ。 強者が弱者に対しての力を振りかざしてのあまりの暴論だった。 「うるさいんだぜ!! くずはゆっくりしないでさっさどじねえ!!!」 「ゆびゅう゛う゛う゛う゛う゛う゛!!?」 ボロまりさはまりさに反論する間も与えずに踏み潰された。 「まったくゆっくりしてないまりさたちだったよ!れいむをみならってほしいよ!!」 「わかるよー、ちぇんたちにせいっさいされたほうがよのためだったんだねー!」 まさに目糞、鼻糞を笑うを地で行く光景だ。 それはさておきボロまりさから事情を聞いて得意気になっているぱちゅりーが皆に向けて発言する。 「むきゅ、これであのじじいからゆっくりプレイスをとりかえせるわ!!!」 「さすがぱちゅりーなんだぜ!!せかいいちのてんさいなんだぜ!!」 「むーきゅっきゅっきゅ!!それほどでもあるわあ!!」 「やったよ!これであまあまたべほうだいだよ!!」 「もうこんなとかいはじゃないところなんておさらばね!!」 「わかるよー!!もうかったもどうぜんなんだねー!!」 何もしていないのに勝ったと騒ぐ五匹。 肝心の男がまたここに来るかもわからないのにやかましい程に騒ぐ。 「むきゅ、それじゃあつぎにあのおとこがきたらさくせんけっこうよ!!」 「「「「ゆおおおおー!!!」」」」 男が来るかもわからないのに何時までもこの五匹は騒ぎ続けていた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 翌日。 五匹にとって幸運か不幸なのかわからないが男は次の日も公園に立ち寄っていた。 会社からの帰り道に公園を突っ切った方が早いからだ。 「菓子パン買い過ぎる癖は直した方がいいな…」 男はまたもやパンを鞄に入れているようだ。まあそんなのはどうでもいい。 「むきゅ、それじゃあさくせんをかいしするわ!」 男を見つけた五匹はぱちゅりーの言葉に頷く。 「わかるよー!こんなさくせんをおもいつくぱちゅりーはてんさいなんだねー!!」 「こんなとかいはなともだちがもててありすもはながたかいわ!」 「これであまあまたくさんたべれるね!!」 「ぱちゅりーはせかいいちゆっくりしたゆっくりだぜ!!」 「むきゅ、それほどでもあるわ!」 どうやらぱちゅりーの“さくせん”とやらは余程のものらしく皆ぱちゅりーを褒め讃える。 「むきゅ、それじゃいきましょう!」 「「「「ゆおおおー!!!」」」」 五匹が声をあげて男へ向けて跳ねていき、 「ん?」 五匹に気付いた男に向けて、 「「「「「おにいさん、かいゆっくりじゃなくてごめんねー!!」」」」」 一斉に宣言した。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ぱちゅりーの考えた名案であり作戦は簡潔だった。 「かわいくってごめんねー」と言ったら「かわいく」なくせられた。どうして男がそんな事をしたのかぱちゅりーにはわからなかったが、「かわいくって」と言ったら可愛くなくせられた。 なら、「かいゆっくりじゃなくてごめんねー!」と言えば飼いゆっくりにしてくれるかもしれない。 そう考えたのだ。 その結果は、 「さ、ここが俺の家だよ」 ほぼぱちゅりーの望み通りであった。 男は「謝らなくって…いいんだよ…」と言いながら号泣し、五匹を自宅へ連れて来た。 「さすがぱちゅりーのさくせんなんだぜ!!こんなうまくいくなんてすごいんだぜ!!」 「はやくあまあまもってきてね!!ぐずはきらいだよ!!」 「とってもとかいはなおうちだわ!ありすにぴったりね!」 「むっきゅっきゅっ!あとはこのじじいをせいっさいするだけね!」 まさに計算通り、といった笑みを浮かべるぱちゅりー。 この世の春といった感じで喜びを噛み締める五匹。 後はこの男を殺すだけ…ともう半ば望みが叶ったつもりでいた。 だが、 「それじゃ、今日からここが君達のお家だからね」 「「「「ゆ?」」」」 「むきゅ?」 男が案内したのは家の中ではなく、かつて四匹の赤ゆっくりが騒音によって苦しみ死んでいった犬小屋だった。 「なにいってるんだぜ!?まりさたちのおうちはあっちなんだぜ!!」 まりさは目線を男の自宅に向けながら叫んだ。 「え?室内で飼うの?ごめんね、それはちょっと準備してないから無理って事で我慢してね。野良だし大丈夫だよね」 「なにいっでるのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?あっちがでいぶのおうぢだよ!!ばがなじじいはざっざとそっちにづれでげえ゛え゛え゛え゛!!!」 「いやあっちは俺の家だから…あっそうか一つじゃ狭いもんね」 男はそう言うと、物置よりも離れと言うべき場所から別々の犬小屋を二つ取り出した。 「これで大丈夫だよ。二つ足りないけど、それはちょっと我慢してね」 計三つの、成体ゆっくりが一匹ぎりぎりで通れる横幅の入口の犬小屋を並べた男は笑顔で告げた。 五匹はここでようやく理解した。 この男は本気で自分達を犬小屋で飼う気だと…。 「ふざっけるんじゃないんだぜえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ッ!!!」 まりさがぶちギレた。 「?」 男はまりさの怒りが理解出来ない。 何故なら男は徹頭徹尾大真面目だからだ。 男は五匹を飼うつもりだった。 だが男はゆっくりを飼った事もないし、飼い方も知らない。 だから昨日旧友に会った時の言葉を思い出した。 “「そんなん犬飼った時みたいにすりゃあいいんだよ。ちゃんと飯食わせて躾ければ何の問題もない」” 兄貴分兼親友の研兄はそう言っていた。 だから男はその言葉に乗っ取って飼う事にした。 大真面目に犬を飼うようにして…。 だから五匹に対しては怒らせるような事はやっていないと思っていた。 「も゛う゛がばんでぎないんだぜ!!ふざけたごどぬがぶじじいはまりざがぜいっざいじどやるんだぜえ゛え゛え゛え゛!!!」 今まで納得のいかない事は自分の力で捩伏せてきたまりさは我慢出来なかった。 「えーと…何で怒ってんの?」 男の疑問に対してまりさは体当たりで返す。 しかし、 「おっと」 男はその体当たりを難無くでかわす。 「ぶべぇ!!?」 回避されるとは想定もしていなかったまりさは顔面から草木生い茂る地面に突っ込む。 「まりさあああ!!?」 れいむが叫ぶ。 まさか無敵のまりさの攻撃を男が回避するとは信じられず、驚きを隠せない。 実際はこの男によって痛め付けられたまりさにも敗北しているので無敵でも何でもないのだがれいむはまりさの「ゆだんしていた」をマジに受け取っていたのでそう思い込んでいた。 「よくもまりざをおぉ!!!」 れいむが男に向かい体当たりをまりさの仇だとばかりに繰り出す。 「え、俺のせい?」 男からすれば勝手に突進してすッ転んだようにしか感じなかった男はいつの間にか自分のせいにされていた事に驚くが、それでもゆっくり程度の攻撃に当たる訳もなく、難無く回避する。 「ゆぶぁああ!!?」 まりさの二の舞となるれいむ。 「何で怒ってるんだろ?ま、いいや」 男は気にしない事にして作業に移る。 一旦家に戻り、 「ゆ!?なにするの!?はなしないこのいなかものおおおお!!!」 ありすを掴み、 「流石にこれじゃ無理か…仕方ない」 口と目の間の位置に男自身が使っていたベルトを巻き付けた。 「ゆぎゅい゛い゛い゛!!?」 外れないようにきつく締める。 その痛みにありすは奇声を上げるが男は全く取り合わない。 軽く食い込んだ所でようやく男はベルトを絞めるのを止める。 「ゆぎぃ…ゆふぃ…」 顔を締め付けられて軽く瓢箪みたいになったありす。 「あとはこれをっと…」 男はそんなありすを鎖に繋げ、しっかりと固定された杭に繋げた。 「む…きゅ…?」 あまりの訳のわからなさにぱちゅりーは呆けてしまう。 強かった筈のまりさは無様に地面に突っ伏し泣き喚いている。 ありすは「ゆい゛ぃ…ぎゅひ…」とか奇声を上げながら痛みに苦しんでいる。 れいむはどうでもいい。 無事なのはもはや自分とちぇんしかいない。 「わきゃらない゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?」 いや、そう考えている内にちぇんもありすと同じにされていく。 「猫っぽいけどゆっくりだから同じでいいよね」 何だか男が言っているが、ぱちゅりーには届かない。 僅かな時間で無事なゆっくりはぱちゅりーしかいなくなった。 「む、むきゅううううう!!?」 訳がわからなかった。 さっきまで何もかも上手くいっていた筈なのに…。 後はこの男を殺してお家を奪うだけだったのに…。 いや、それよりもまずは逃げなければならない。 使えない能無しなんてどうでもいい。 そう考えてぱちゅりーは逃げようとし、 「はい、次は君の番♪」 「むぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 スタートするよりも早く捕まった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「いぢゃいよ゛ぉ…」 「むぎゅ…」 「わが…だ…ない…」 「あま…あま…」 「ぐひぃ…」 五匹全てが仲良くベルトで代用した首輪に繋がれている。 締め付けられる痛みで動く事も出来ない。 「ペット飼うのは久し振りだから上手くいくか不安だったけど…まぁ何とかなったね」 何処をどう見れば何とかなったのかわからないが男はとりあえず満足そうだ。 五匹の全てが男に対して殺意が篭った眼をしていながら男はそれに気付く様子もない。 「それじゃ、ご飯持ってくるから待っててね」 男は最後まで五匹の殺意に気付かず家へと戻っていった。 後に残るのは瓢箪みたいな形になった五匹。 特にありすが酷い。 「ぐぴ…こぺ…」 口からカスタードを漏らし始めている。 「どうじで…ごんなべに…」 まりさが呟く。 今頃はあの男を殺してゆっくりしている筈なのに…。 それが妄想でしかないと気付く事はない。 「む゛…ぎゅ…み゛ん…な゛…ごれを…どるの…よ…」 こんなベルトで締め付けられたままじゃ身動き一つする事も出来ない。 「はやぐ…どっでね…」 「むきゅ…ぱぢぇの…どりな゛ざい…」 「わがらないよ…どう…じで…ごないの…」 「ざっざど…まりざのを…どれ…」 「ぐぴ…ぃ…」 しかし痛いのを我慢して誰かの所まで動く事を自分最優先のゲス達がする訳がない。 結局誰も動かず事態も好転しないまま時間だけが過ぎていく。 「ときゃ…ぺひゃ…」 段々とありすの首輪から上がパンパンになっていく。 圧迫されている証拠だ。 ありすが危険な状態になっているのだが、他の四匹は自分の事ばかりで気付きもしない。 ありすは言い難い痛みと苦しみを味わっていた。 『いじゃいいじゃいいじゃい゛い゛い゛い゛い゛!!?ごんなのぜんぜんとがいばじゃばいわ!!? じじいはゆっぐりじないでざっざとありずをだぶげろぉ゛お゛お゛お゛お゛!!!』 「ぐひ…」 もはや喋る余裕すらないありすは心の中でのみ雄弁となっている。 しかしそれも段々と弱まっていく。 周りのゆっくりも、ありす自身も限界に近づいている事に気付いてはいない。 「ごはんもってきたよ」 すると男が五匹の食事を持って来た。 「あれ、何かさっきと違わないか?」 男が五匹の危機的状況に陥っているのに気付いた。 「ああ!ちょっときつく締めすぎちゃってたのか!!」 その原因が判明して男は慌てて、戒めを緩める。 「ゆうう…」 流石にすぐに男に襲い掛かれる程の余裕はなく、苦しげに呻くしか出来ない。 とりあえず命に別状は無いようだ。 ただ一匹を除いて…。 「ぷごべぇえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!?」 最後にありすのベルトの拘束を解いた瞬間濁流のように中身のカスタードを目、口、あにゃるから噴き出し始めた。 今まで圧迫されていた部位が緩んだ事により中身が一気に動き、その勢いと圧迫されていた事による吐き気が上手い具合に作用してしまった。 そしてそのショックにありすの身体が耐え切れず、他の部位からカスタードが漏れだしていく。 様々な偶然が悪い方向に作用した結果がありすの中身が漏れ出すという結果になった。 「グヒ!!ケパァ…!!?」 「あ…りず…?」 あまりにも奇怪な現象に他の四匹は呆然としてしまう。 ありすから中身の流出は止まらない。 穴の開いた水風船は空になるまで水を出し続けるのだ。 「おお…すげえ…」 男はありすの自分の中身を使った命懸けの水芸に対してそう呟く。 まさかベルトをきつめに締めただけでこんな事になるなんて予想出来る訳がない。 「…あ…りず…」 「…むきゅ……」 「ぴゅぎい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 ありすはもはやまともに喋る事も出来ず、糸の切れた人形のように断末魔の叫びを上げた後動かなくなった。 カスタードまみれで顔は男達からはよくわからなかったが、その表情は幸せとは程遠いものだった。 「わきゃら…ないよぉ…」 「む…きゅ…」 「あ…りず…」 「もう…やば…」 物心ついた頃から共にいた形式上は仲間のあまりにも悲惨な末路は四匹を絶句させた。 「……死んじゃってる。一体なんで…?」 男はありすの死因が自分にあるとは気付いていない。 ゆっくりの脆さを理解出来ていなかったのだ。 「とりあえず埋めてあげないと……」 このままありすの残骸を放置しておくのもよくない。 ベルトが一つ無駄になったけど一々気にする事もなかった。 「よ゛ぐも…ありずを…」 まりさが男を睨み付ける。 まだ動けるまで回復していないのだ。 ありす程では無いにしろ四匹とて無傷ではない。 睨み付けるしか出来ない。 だが、ゆっくりの殺意で人が殺せるならとっくの昔に人間なんて滅んでいる。 男は気にせず再びまりさにベルトを巻き付ける。 「ゆひいいい!!?やじゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 ベルトを見るやいなやまりさは叫び声を上げて逃げようとするが逃げ切れる訳もなく、そのままあっさりと捕まってベルトを巻き付けられる。 しかし今度はキツすぎず、さりとて緩すぎもしない絶妙な案配で…。 というかそれが出来るなら最初からしろという話だ。 「ゆぐぁ……」 ベルトを再びされたショックでまりさは泡をふいて失神してしまう。 どうやらトラウマになってしまったようだ。 「むぎゅう゛う゛う゛!!?」 「わぎゃら゛ないよおおッ!!?」 「ゆんやあ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 その間に手際よくベルトを残りの三匹に巻き付ける。 どうやらコツを掴んだらしい。 「じねぇ…じじいはじねぇ…」 れいむが恨めしげに男に呪詛を呟き続ける。 当然ながら男はそれに気付かない。 気付いても気にしないが。 でも何やら五月蝿かったのでれいむだけは少し緩めにしてあげた。 「かわいそうに…何か病気だったんだな…。 気をつけないと…」 男はありすを庭に埋めながら呟く。 何が原因かわからないが自分がゆっくり出来ない何かをしたのだとは理解していたようだ。 「やっぱり研兄に相談した方がいいかな…」 まさか初日、しかも飼い始めて一時間もしないで反乱、一匹死亡という状態になるとは思わなかったのだろう…。 一応はゆっくりの使い方のプロである兄貴分に相談しようか考え混んでいた。 「わからないよ…どうしてありすがしななくちゃいけないのかわからないよ…」 一方ちぇんはどうしてこんな事になったのか理解出来なかった。 今までぱちゅりーとまりさがいれば大丈夫だった。 今回だってぱちゅりーの言う通りに上手くいっていた。 だけどその結果ありすは死んでしまい、今はお世辞にもゆっくり出来るとは言えない状況だ。 「わがらないよー…」 ちぇんはその言葉を言うしか出来ない。 今まで散々頼ってきた分面と向かって批判も出来ない。 ただ目の前にある山積みの人参を食うしか出来ない。 「ゆゆ!!なにかってにれいむのごはんたべてるの!!?」 「ゆぎゃ!!?」 すると突然れいむがちぇんに体当たりをする。 「これはぜんぶれいむのものなんだよ!!!ばかなちぇんにあげるぶんなんてないよ!!」 あまりにも横暴な物言い。 「むきゅ…だめよれいむ。いまこそみんなで…」 「うるさいよッ!!」 「むぎゅ!!?」 れいむの横暴を諌めようとしたぱちゅりーを体当たりで黙らせる。 「これはぜんぶれいむのものなんだよ!!!やくにたたないぱちゅりーはひっこんでてね!!!」 どうやら山積みにされた人参を独り占めするつもりのようだ。 「……………」 肝心のまりさはまだ失神したままだ。 他の三匹に比べて精神が弱いのかもしれない。 まりさがこの様では今のれいむの横暴を止めれるものはいない。 「む~しゃむ~しゃじあわぜぇえ~!!!」 瞬く間に人参を消費していくれいむ。 「むきゅ…どうじでごんなごどずるの…?」 いきなりのれいむの横暴にぱちゅりーは理由を問い掛ける。 「うるざいよッ!!!ぱちゅりーのぜいでごんなべになっだんだがらざっざとじんでね!!!」 「むぎゅあ゛!!?」 「なにがにんげんをごろじべおうぢをのっどるだよ!! きずひどづづげられながっだじゃないがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「むぎゅい!!?ぺぎぃ!!?」 「ぼうおばえだぢのいうごどなんでぎぐがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 鬱憤晴らしと八つ当たりをぱちゅりーでするれいむ。 男自体は考え事していてそれに気付いていない。 実は寝てるんじゃないかと勘違いしそうな程だ。 「むぎゅ…」 「ゲラゲラゲラゲララゲラゲラゲラ!!!いいざまなんだね!!れいむをゆっくりさせないからそうなるんだよ!!!」 ボロボロになったぱちゅりーを嘲笑うれいむ。 「だいじょぶー?いたいんだねわかるよー」 ボロボロになったぱちゅりーをぺーろぺーろして慰めるちぇん。 「むぎゅう…」 どうやら死んではいないようだ。 「これはぜんぶれいむのものだよ!!ばかなちぇんとぱちゅりーはそこらへんのくさでもたべててね!!」 ゲラゲラ笑いながら五匹分の餌の人参を食っていく。 「やっぱり自分の力で頑張ってみよう!!」 れいむが一匹だけで五匹分の人参を食べ尽くした時点で男は考え事の目途がついたようで我に返る。 男はどうやらその場にいながら四匹の状態に気付いていなかったようだ。 無駄に高い集中力だ。 というかわざと無視しているとしか思えない。 だがマジなのが始末に負えない。 「ゆ!じじい!ぜんぜんたりないよ!!ゆっくりしないでさっさともってきてね!!」 体積が増えたれいむはおかわりの催促をする。 しかし、 「駄目だよ。食べ過ぎはよくないからね」 男はそれだけ言うと罵り続けるれいむを気にも留めず何故か裏口を使わないで玄関から家の中へ入っていった。 「までえ゛え゛!!!でいぶをむじずるなあ゛あ゛あ゛!!!」 男に体当たりしようとするれいむ。 しかし、鎖がれいむの進行を邪魔してベルトの部分が食い込む。 「ゆぎゅう゛う゛う゛!!?」 自分の跳ねた勢いが全て自分に返って来たれいむは地面に倒れ込む。 「ゆ゛ぅ゛…いぢゃいよ゛ぉ…」 基本痛みに弱いゆっくり種であるためれいむは簡単に痛みに喘ぐ。 「ゆ、ゆぅ…なにがあったんだぜ…」 ようやく目を覚ますまりさ。 だれもかれもゆっくり出来なくなっていた。 っして異変はその時起こった。 「うーうー♪」 「「「「ゆう゛う゛う゛う゛ッ!!!?」」」」 それは人間にとって無駄に陽気な腹立つ声。 しかし通常種にとっては何よりも恐ろしい声だった。 「れ、れ、れみりゃだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!?」 れいむが餡子の髄に刻まれた恐るべき存在の名を叫ぶ。 そこに現れたのは胴有りれみりゃ。 街中ではあまり見ないれみりゃ種。 身体が肉の為犬や鴉に襲われて数が少ないのだが、近年れみりゃブームが来て嵐のように急速に去っていった為比較的数がいるのだ。 まあそれでもこうして姿を見るの珍しい事だが。 あの男に会ったゲスゆっくりには不幸しか訪れない。 四匹を狙っていたのだが男がいたので手を出せなかったのだ。 だがもう男はいない。 れみりゃは待ち望んでいた食事に喜び勇んで襲い掛かった。 「ゆうううう!!?」 「わがらないよーー!!?」 「むっきゅうううん!!?」 「はやくあのこやににげるんだぜえ゛え゛え゛!!!」 まずはまりさがいち早く逃げ、それに足(?)の速いちぇんが続き、ぱちゅりーがその後に続いた。 男に体当たりしようと離れた距離にいたれいむが逃げ遅れる羽目となった。 「うーあまあままつんだど~♪」 羽根をパタパタさせて追いかけるれみりゃ。 「ゆ、ゆうう…とりあえずこれでひとあんしんなんだぜ…」 「わ、わかるよー…たすかったんだね…」 「むきゅ…ゲホゲホ!」 何とか犬小屋の中に逃げ込めた三匹。 三つの犬小屋に綺麗に一匹ずつ逃げ込む。 「いれでね!でいぶもゆっぐりじないでいれでね!!!」 れいむもそれに続いて犬小屋に逃げ込もうとする。 が、 「ゆうううううう!!?はいれないよおおおおおおおおお!!?」 れいむは犬小屋に入る事が出来なかった。 五匹分の食糧である山積み人参を食べた事による体積の増加で横幅が犬小屋の入 る穴のスペースをオーバーしてしまったようだ。 男が親切心で軽く緩めていたせいでベルトが窮屈にならず、れいむもその事に気付かなかった。 「どうじではいれないのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?」 切迫した表情で何度も犬小屋に体当たりするれいむ。 だが通る事は出来ない。 横暴のツケがあまりにも早く来たのだ。 「あまあまつかまえたんだど~♪」 「ゆひぃ!!?」 遂にれいむがれみりゃに捕まった。 「や、ややややややややめてね!!!れいむおいしくないよ!たべたかったらそこのぱちゅりーをたべてね!!!」 「むぎゅ!?」 れいむの命乞いで売られたぱちゅりーがビクッと反応する。 だが古今東西、ゆっくりが他のゆっくりを売った後に許してもらう事等まず無い。 れみりゃもれいむの命乞いに耳はかさず、 「いただきまずだど~♪」 「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!?」 中身を吸われていくれいむ。 だが吸うスピードはゆっくりであり、存分に甘味が出るようにしていた。 そのせいでれいむは本来ならすぐに死ねる所をゆっくりと苦しむ羽目になった。 「おぜうさまはゆっくりごはんをたべるんだど~♪」 「ゆぎ…たずげろ…」 コトンとれいむを束縛していたベルトが落ちる。 だが今更自由になった所でもう遅い。 もうれいむはれみりゃのごはんになるしかないのだから…。 「ざっざどたずげろ……」 喰われていく中れいむは犬小屋の中にいる三匹に命令する。 れいむの中で、今まで共に過ごしていた四匹は都合のいい道具だった。 “ゆっくりしたれいむのためにどれいのじじいはくれたあたらしいどれい。 だからゆっくりしたれいむをゆっくりさせるのはとうぜんだ”、という事を無意識に思い込んでいたれいむは犬小屋に隠れて助けようともしない三匹は許しがたいものだった。 「はやぐだずげろお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!おばえらばいばばででいぶのおがげでゆっぐりじでぎだんだろうがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ざっざどたずげろおお゛お゛お゛お゛!!!」 火は燃え尽きる寸前に勢いよくなるようにれいむは最後の力を振り絞るように罵声を浴びせる。 ちなみにれいむははっきり言ってまりさとぱちゅりーの金魚の糞みたいなもので、我が儘放題し、周りはそれに辟易しており、三匹、いや今はもいないありすを含めて四匹は一度もれいむでゆっくり出来た事等無かった。 つまりはれいむの勝手な思い込みである。 「ごのうらぎりぼのお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 先に裏切ったのはお前だろうが…。 だが三匹はそれについて文句を言う事もなく犬小屋の奥で次は我が身かと震えている。 「う~、うるさい!」 れいむの叫びのやかましさに少しいらついたれみりゃはれいむの顔面に拳をぶち込む。 「ぶぎゅう゛う゛!!?」 痛みで罵声を上げる余裕のなくなったれいむを見て満足そうに食事を再開する。 「やだ…おう゛ぢ…がえ…ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛…」 喋ることも出来ず痙攣しだすれいむ。 こうなってしまえばもう助からない。 あっという間に中身を失い、ぺらぺらとなってしまう。 「こんなものぽーいだどー♪」 ぞんざいに投げ捨てられるれいむの成れの果て。 ぺしゃりと地面に落下する。 「うーまだたりないんだどー♪」 それは犬小屋にいる他のゆっくりを襲う宣言も同意だった。 「う~はやくでてくるんだど~♪おぜうさまにたべられるんだど~♪」 れみりゃは犬小屋の入口手を伸ばして奥に潜むまりさを捕まえようとする。 「くくくくるんじゃないんだぜえ!!?まりさはおいしくないんだぜ!!」 「う~あまあま~!どうしてとどかないんだど~!?」 身体が入口に引っ掛かって手を伸ばしても届かない。 胴無しなら入れるだろうが犬小屋のような狭所では羽根が邪魔になってしまうので不利になるからあまり意味は無い。。 「むきゅうううううう!!? こっちこないでぇえええええ!!?」 「わがだないよお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?」 このままなられみりゃは諦めるだろうがその間のゆっくり達は生きた心地はしない。 「う~あまあま~!!!」 「ゆぴいいいいいい!!?」 人間に勝てると言っていたのが嘘のようにしーしーを漏らして恐怖するまりさ。 「う~!!あまあま~!!ざっざとおぜうざまにたべられるんだど~!!!」 まりさ達にとってはとても長い時間だった。 そしてそれの終わりはあっさり来た。 「う~そうだど~♪このへんなひもをひっぱればあまあまをとれるんだど~♪」 「ゆひぃ!!?」 まりさはそれに戦慄する。 それと同時に鎖が引っ張られる。 「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 まりさはれみりゃの引っ張りに死ぬ気で耐える。 舌を出して床にはいつくばり、摩擦を大きくしている。 「あまあまはやくでてくるんだど~!!れみりゃがおいしくたべてあげるんだからかんしゃするんだど~!!」 「やじゃあ゛あ゛あ゛…!!」 必死で引っ張りに耐えるまりさ。 だが手足のあるれみりゃに地力には勝てず、 「ゆんやあああああああ!!?」 まりさは犬小屋から引きずり出された。 「やじゃあ゛あ゛あ゛あ゛じにだぶない゛い゛!!?」 恐怖に眼を閉ざすまりさ。 しかし、何時まで経ってもれみりゃに襲われる気配はない。 不審に思い眼を開けてみる。 すると、 「う~?」 れみりゃは何かに捕まり、無理矢理犬小屋から引きはがされていた。 「う~あまあまがにげていくど~!?」 自分が犬小屋から離されたとは思いもしないれみりゃは早く犬小屋を追おうとじたばたと手足をばたつかせるが意味はない。 「ねぇ…」 れみりゃの背後から声がする。 「う~?」 その声に反応してれみりゃは後ろを振り向く。 そこにいたのはまりさ達をあそこに縛り付けた張本人である男だった。 そりゃ庭先で騒いでりゃ来るのは当然といえば当然だ。 「にんげんがれみりゃになんのようだど~!?はやくぷっでぃんもってくるんだど~!!」 折角の狩りの邪魔をされてご立腹のようだ。 だが男はそんなれみりゃの様子を一切無視し、 「これ…君がやったのかな?」 れみりゃを掴んでいる手とは逆の手に持つれいむの成れの果てを見せた。 「う~それはいらないからぽ~いしたんだど♪いいからざっざどぷっでぃんもってくるんだど~!!」 「それは食べたと判断していいんだね」 「う~いいからさっさと…」 そこから先はれみりゃは言葉を紡ぐ事は出来なかった。 男の拳がれみりゃの顔面にぶち当たったからだ。 「ぶひゃ!!?」 歯が何本も折れて地面に落下するれみりゃ。 「どうしてこんな事するのかな?」 「ぶぐぅあ゛…いぢゃい゛ぃ…ど…」 「同じゆっくりだよね…?」 男は痛みに喘ぐれみりゃしゃがみながら見下ろし、尋ねた。 男は知らなかった。 捕食種というものを。 ゆっくりの特徴は本で調べたが種族全てを知っていた訳ではない。 れみりゃと通常種であるまりさ達をマルチーズとチワワ程度の差としか思わなかった。 だから本来の狩る狩られるの関係を知らず、れいむを食べたれみりゃを許せなかった。 れみりゃの行いを自然の摂理ではなくゆっくり殺しと判断した。 ゆっくり殺しは問答無用で制裁。 それと男は似たようなものだった。 「ぶぎぃ!?ぼべぇ!?」 男は無表情なまま何度もれみりゃを殴打する。 「わ、わわわ…」 「む…きゅ…」 「うそ…なんだぜ…」 それは三匹にとって信じられないものだった。 街ではれみりゃの姿はあまり見かけないにしても餡子の中の記憶の奥底に刻まれたれみりゃに対する恐怖は三匹にも深く根付いていた。 それが今無残に男に痛め付けられている。 それは自分達の価値観、勝手な思い込みでしかないのだが自分達が人間よりも強いという考えが本能に刻まれた勝てない恐怖の対象のれみりゃを一方的に蹂躙している。 「ごべ…なざ…ゆるじ…くばざい…」 五体満足だが顔は二倍近く腫れ上がり、足は変な方向へ曲がり、羽根はボロボロで飛べそうにない。 むしろここまでしたのなら殺した方が慈悲なような気がする。 「ああ…御免、少しやり過ぎちゃった…ここまでやるつもりなかったのに…」 男はれみりゃの様子を見てやっとこさ気付く。どうやら夢中になると止まれないタイプのようだ。 「これじゃ…生きていけそうにないな…」 「ざぐやぁ…ざぐやぁ…」 とりあえずそのままにしておく訳にはいかない。 だがれみりゃは飼うのが難しいと男は同僚から聞いていた。 その同僚はれみりゃ種とふらん種を飼っており、その可愛さをよく周りに言っていた。 周りはそれに辟易しているのだが基本的にお人よしな男は嫌な顔をしないで聞いてあげる事が多かった。 しかし大半がれみりゃとふらんの可愛らしさの溺愛っぷりを言っているだけでれみりゃの生態の事等一切説明しなかったから男に捕食種に対する知識は養われなかったのだ。 「そうだ、あいつに聞いてみよう」 男はその同僚に相談することに決め、 「それじゃ、悪いけど一緒に来てね」 「う…う゛?」 男は優しくれみりゃを抱える。 そしてそのまま、裏口へ向かう。 三匹は男があのれみりゃを家に連れていくつもりだと理解する。 「ま、まつんだぜ!!」 まりさが若干ビビりながらも男を呼び止める。 「ん?どうしたの?」 男はいつもと変わらない表情で三匹を見る。 しかし、先程のれみりゃへの暴行を見た三匹はむしろそれが言いようのない恐怖を感じさせた。 だがプライドの無駄に高いまりさはそれでも男に要求した。 「そ、そのれみりゃはれいむをころしたんだぜ!! そんなやつをおうちにいれないでまりさたちをおうちにいれるんだぜ!!」 「え?君達のお家はそれだよ。どうして入れるの?」 そう言いながら男は犬小屋を指差す。 「なにいってるんだぜ!!こんなのまりさのおうちにふさわしくないんだぜ!だからさっさとそのおうちをよこすんだぜ!!」 喉元過ぎれば熱さ忘れる。 男が手を出して来ないとわかると段々と調子に乗り出してくるまりさ。 しかし、 「駄目だよ。ここは俺のお家だからね。君達はそっちの方で我慢してね」 男はそうとだけ告げると後は取り合わずそのまま裏口から家の中に入っていった。 「ま、まつんだぜ!!そこはまりさのおう…」 バタンと扉が閉じられ、三匹だけが残される。 「むきゅう…」 「どうしてなんだぜ…そこはまりさのおうちなのに…」 「わからないよー…」 一日足らずで長年共にいた仲間を二匹も失った三匹は茫然とするしかなかった。 続きます。 過去に作ったSS ふたば系ゆっくりいじめ 293 おかざりがないとゆっくりできないよ! ふたば系ゆっくりいじめ 311 きゃわいきゅっちぇぎょめんにぇ!! ふたば系ゆっくりいじめ 347 れいむはしんぐるまざーでかわいそうなんだよ!! ふたば系ゆっくりいじめ 397 大好きだよ ふたば系ゆっくりいじめ 447 おきゃあしゃんのおうちゃはゆっきゅちできりゅね! ふたば系ゆっくりいじめ 521 元銀バッジまりさの末路 上 ふたば系ゆっくりいじめ 543 元銀バッジまりさの末路 中